食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

保湿剤を塗ったマウス

Behind the headlines
Moisturised mice
Friday August 15 2008
http://www.nhs.uk/news/2008/08August/Pages/Moisturisedmice.aspx
保湿剤と皮膚がんに関する研究の矛盾した大々的報道が行われた。新聞の報道は、照射したヘアレスマウスに保湿剤を塗ったこの研究の重要性について様々 であった。The Independentは何百万人もの人々が使っている保湿剤が皮膚がんのリスクを高めるかもしれないと報道し、The Guardianは保湿剤を使っている女性は心配しなくてよいと報道している。Daily Mailは研究者らはこの実験はマウスでのものであると注意しているが、ほとんどの保湿剤は皮膚がんに関する安全性チェックは行われていないと付け加えている。
この研究ではいくつかの市販の保湿クリームが実験用マウスでの腫瘍の発生速度と数を増やしたことを報告しているが、研究者らが指摘しているようにヒトの皮膚とマウスの皮膚は違う。この実験結果がどうヒトにあてはまるにせよ、現時点ではこの結果を深読みしないでいつも通りに保湿クリームを使い続け、 信頼できるヒトでの研究結果を待つのが賢明であろう。
論文はJournal of Investigative Dermatologyに発表されたもので、SKH-1と呼ばれる特別なアルビノヘアレスマウスの雌を使っている。6-7週齢のマウスに、 皮膚がんを発生しやすくするため20週間週に2回紫外線を照射した。次に実験1では30匹のマウスに保湿剤‘Dermabase’を毎日週に5回17週間塗布し、残り30匹はそのまま何もしなかった。さらに実験2では同様に照射したマウスにDermabase、Dermovan、Eucerin オリジナル保湿クリーム、Vanicream又は外注ブレンドクリームと水又は何もしない処置を行った。できた腫瘍の数と大きさを調べた。Dermabase、 Dermovan、Eucerinオリジナル保湿クリーム及びVanicreamの4種が対照群に比べて腫瘍数と腫瘍の大きさが増加した。
研究者らはこの動物での皮膚がんはヒトの日光により誘発される皮膚がんのモデルであると信じている。この知見をヒトに当てはめるには、この研究で使われたマウスが健康なヒトに正常量の保湿剤を塗った場合と十分似ていると考える必要がある。しかしヒトと実験動物では違いが大きすぎる。比較対照には外注ブレンドクリームが最適のように見える。このクリームは精製水、プロピレングリコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ポリソルベート20、ミリスチン酸イソプロピル、C12-15アルキル安息香酸、安息香酸、グリセリン水酸化ナトリウムを含む。これとその他の保湿剤のヒトでのさらなる研究が必要であろう。



ヘアレスマウスの写真
http://animal.nibio.go.jp/j_hr.html
この実験系は発がんプロモーターのスクリーニングになっているような。皮膚の増殖を促進するようなものは陽性になるだろう、それがヒトの場合はかさつく皮膚に有用であったとしても。