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動物飼料中の望ましくない物質としてのテオブロミン CONTAMパネルの意見

Theobromine as undesirable substances in animal feed [1] - Scientific opinion of the Panel on Contaminants in the Food Chain
09/09/2008
http://www.efsa.europa.eu/EFSA/efsa_locale-1178620753812_1211902079993.htm
テオブロミン (3,7-ジヒドロ-3,7-ジメチル-H-プリン-2,6-ジオン)はカカオ(Theobroma cacao L.)に天然に含まれる僅かに苦い無色無臭の物質である。カカオを育てている地域ではカカオ豆の鞘の殻を飼料に用いることがある。ヨーロッパではカカオ豆の殻やカカオ豆ミール、カカオ胚芽、廃棄されたお菓子などが飼料に使われることがある。
テオブロミンの急性毒性は中程度で齧歯類よりイヌの方が感受性が高い。他のメチルキサンチンに類に比べて中枢神経への影響は弱く、弱いアデノシン受容体拮抗剤である。テオブロミンは齧歯類とイヌの精巣に対して生殖毒性がある。子宮内暴露されたマウスの骨化遅延やウサギの子どもの骨格異常などを誘発する。乳牛や仔ウシにテオブロミンを与えると乳量が減ったり興奮しやすい・発汗・呼吸や心拍の増加などの悪影響がある。ウマは特にテオブロミン感受性が高く、肝臓や甲状腺に影響があり、ブタは発育不良や下痢、嗜眠などの症状を示す。産卵鶏にテオブロミンを与えると肝と腎に毒性を示し体重増加抑制や産卵抑制がおこる。
飼料中のテオブロミン濃度に関するデータは不足している。カカオハスクミール、カカオ豆の殻、カカオ豆ミールのテオブロミン含量は1.5-4.0、8.0-16.9、 20-33 g/kgと報告されている。現在のEUの飼料中テオブロミン最大濃度は300mg/kg(成牛向けのみ700 mg/kg)で、一部の動物に対しては安全ではない。テオブロミンへの感受性が高いことを知っているため飼料製造者はイヌとウマ用の飼料にはココア副産物やお菓子の副産物を使わない。
テオブロミンは速やかに吸収されて全身に分布する。代謝は早く、代謝物も未代謝物も主に尿中に排泄される。テオブロミンが蓄積するというデータはない。汚染飼料を食べた動物に由来する製品の残留テオブロミンについてのデータはない。ヒトのテオブロミン暴露は主にチョコレート菓子やココア由来である。またテオブロミンはカフェインの代謝物の一つである。CONTAMパネルは肉や卵やミルクなどの動物製品由来のテオブロミン暴露は、カカオ製品の摂取に比べて無視できると結論した。