食品安全情報blog過去記事

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EPAのリスク評価プロセスは拡大すべきである

EPA's Risk Assessment Process Should Be Expanded
December 3
http://www.nationalacademies.org/morenews/20081203.html
EPAのリスク評価プロセスはこれまでになく行き詰まっており合理化が必要である。リスク評価を意思決定のためのツールとして使えるように改善するためには、リスク評価が適切な利用可能な科学を用いて技術的に正確で問題に特有のニーズにあった評価を行うようにすべきである。
プレスリリース
EPA's Risk Assessment Process Bogged Down by Unprecedented Challenges;Expansion of Current Model Could Help Meet Needs
Dec. 3, 2008
http://www8.nationalacademies.org/onpinews/newsitem.aspx?RecordID=12209
NRCの新しい報告書によれば、環境中有害物質から公衆衛生を守るために有害影響を推定するEPAのリスク評価プロセスは行き詰まっている。
リスク評価は4つのステップからなる。ハザード同定、暴露評価、用量反応評価、そしてリスクキャラクタリゼーションである。リスク評価が完了したら公的機関はそれを用いて公衆衛生保護のための方法を決める。しかしながらリスク評価はますます複雑化している。環境中の汚染物質やその有害影響に関する知識が増えるにつれ、EPAは複数の暴露、複数のリスク及び異なる集団の感受性について考慮しなければならない。そのためEPAはNRCにリスク評価改善のための課題について諮問した。そしてNRCはいくつかの助言とリスクに基づいた意思決定をするための枠組みを提案した。
NRCの委員会はEPAがハザードや用量相関情報の需要についていけずリソース不足に陥っている。例えば発がん性が疑われるトリクロロエチレンのリスク評価には1980年代から取り組んでいるが2010年になっても終わらない。しかしながら州や連邦当局はリスク評価が終わらなくても管理のための意思決定を行い続けなければならない。このような事態が続けばリスク評価の信頼性や価値は損なわれるであろう。科学的知見が完璧になることはあり得ない。従ってリスク評価はその時点での最良の科学と適切な不確実性を組み入れてなおかつ利用できるようなものにしなければならない。
中略
さらに委員会はEPAに、物質がどのような量で有害健康影響をもたらすかを推定するリスク評価の用量反応評価ステップにおいて、統一したアプローチを行うよう助言する。現状では用量反応評価は発がん物質とその他に関して異なる方法で行われている。EPAは発がん物質についてはどんなに低い濃度であっても発がん性があるとみなし、特定の暴露量の特定集団における発がん可能性を推定している。一方喘息や出生時欠損のような非発がん影響においては、それ以下では何の影響もない閾値を決定しようとしている。
しかしながら現在の非発がん影響推定においては、一部の問題については役に立つが、意思決定者に対して異なる暴露量でのリスクについての情報がなく、バックグラウンドレベルへやリスクが増える可能性のある疾患がある場合はどうなるかなどの情報が提供できない。EPAは全集団にとっての安全レベルと有害レベルの明確な線引きをしようとしている。委員会は発がん影響についても非発がん影響についても、背景情報などを含めて同一の用量反応評価アプローチを行うことを提案する。新しい科学的知見を取り入れて集団のリスクを明確に推定した、意思決定者がリスクのトレードオフやコストベネフィット解析の情報を含めて利用できる情報を提供すべきである。

要約
http://dels.nas.edu/dels/rpt_briefs/IRA_brief_final.pdf
報告書全文
Science and Decisions:Advancing Risk Assessment
http://www.nap.edu/catalog.php?record_id=12209
事実上人生の全てにリスクはある、という書き出しから始まる


さらにこんなニュース
ES & Tニュース
EPAの過塩素酸に関する決定は欠点がある、と助言委員会が言う
EPA perchlorate decision flawed, say advisers
December 3, 2008
http://pubs.acs.org/doi/full/10.1021/es803191h
EPAが飲料水中の過塩素酸を規制しないと決定したことについて、EPAの科学助言委員会や子ども健康保護助言委員会から批判を浴びている。

(ゼロリスクを要求するのが当然だと考えている人たちをたくさん育ててきたのはEPAそのものだし、なかなか大変。)