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更新:GMトウモロコシ系統MON810とNK603の安全性に関するオーストリアの生殖試験の影響

Update: Impact of Austrian reproduction study on the safety of GM corn lines MON810 and NK603
9 January 2009
http://www.foodstandards.gov.au/newsroom/factsheets/factsheets2009/updateimpactofaustri4157.cfm
要約
オーストリア政府はGMトウモロコシを含む餌を継続的に与えたマウスへの長期影響についての詳細な試験を行うよう科学者に依頼した。最近発表されたその研究の報告書は継続してGM餌を与えた第三世代と第四世代の子どもにのみ僅かな生殖影響が見られたと主張している。
・ FSANZの科学者はオーストリアの報告書を精査し多数の実験方法や結果の解釈における欠陥をみつけた。いくつかの計算ミスにより著者らが間違って通常餌とGM餌を与えたマウスの生殖能に有意差があると結論したものもある。
オーストリア研究にはいくつかの大きな不備があるため、FSANZはこの報告書の結論は支持されないとみなす。実際餌による生殖や寿命への生物学的に意味のある差は見られなかった。
・ EFSAもまたこのオーストリア研究の結果を精査しており、その方法と著者による結果の評価を強く批判している。EFSAもまたFSANZ同様の結論に達し、この研究の知見の科学的価値はほとんどないと否定している。

FSANZの評価の詳細は以下
http://www.foodstandards.gov.au/_srcfiles/FSANZ%20Review%20of%20Austrian%20Report%20AB%20cleared%20Jan09.pdf

EFSAの結論は以下
http://www.efsa.europa.eu/cs/BlobServer/Event_Meeting/gmo_statement_austrianstudy_en.pdf?ssbinary=true

オーストリアの報告書のレベルは以下のような当然のことをわざわざ指摘しなければならないレベルのものであることに注目。

「毒性評価は単なる統計解析だけによるものではない。たくさんの測定値を統計学的に処理した場合、処置とは関係のない有意差が認められることがある。そのような有意差は通常の生物学的変動によるものである。」


昨日の記事関連
http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20090108#p4