食品安全情報blog過去記事

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遺伝毒性発がん物質のリスク評価方法とアプローチに関するSCCP/SCHER/SCENIHRの意見

SCCP/SCHER/SCENIHR opinion on Risk assessment methodologies and approaches for genotoxic and carcinogenic substances
Adopted by the SCHER during the 27th plenary of 13 January 2009
http://ec.europa.eu/health/ph_risk/committees/04_scher/docs/scher_o_113.pdf
SCCP:健康と環境リスクに関する科学委員会
SCHER:消費者製品に関する科学委員会
SCENIHR:新興新規健康リスクに関する科学委員会
2009年1月、各本会議で採択
課題は発がん性物質と遺伝毒性かつ発がん性物質について、リスク評価のアプローチや手法について批判的レビューを行うことと可能であればリスク評価のための統一的手法をみつけること。
2008年10月15日から11月26日までパブリックコメントを募集し、その結果を反映した。
要旨
科学委員会は遺伝毒性かつ発がん性の化合物のリスク評価は原則としてケースバイケースで行うべきであると結論した。十分な情報が入手できる場合には、 直線外挿やMOEアプローチの開始ポイントとしての適切な用量が同定される。いずれの方法にも利点と欠点がある。科学的見地からはMOEアプローチは外挿モデルに内因する不確実性を避けることができ不確実性の高い発がんリスクの実質的な提示となる。
MOEと直線外挿アプローチは発がん性の強さとヒト暴露量についての情報を組み合わせたものである。どちらかがよりふさわしい条件がいくつかある。
・ リスクコミュニケーションにはMOEが良さそうさ
・ リスク削減手段の優先順位決定にはMOEも直線外挿も使える
・ 直線外挿はコスト-ベネフィット解析と同一に使える定量的指標を提供する。ある特定の暴露条件での損失や利益の大きさを提示できる。
また適切であればTTCも推奨できる。
ALARA原則は遺伝毒性発がん物質への暴露を最小化するための方法である。これは定性的方法でリスク評価には使えない。
遺伝毒性、すなわち細胞の遺伝子への有害影響は、遺伝性変異(突然変異)と遺伝はしないがさらなる経過で突然変異を誘発し得る遺伝子への傷害からなる。遺伝毒性はin vitroとin vivoで評価できる。基礎的in vitro試験では遺伝子突然変異と染色体異常の両方が同定できる試験系を採用すべきである。ほとんどのin vitro試験は、特にDNAの切断やそれに関連する染色体への影響を検出するものは、特異性が低く、結果的にその物質の発がん性についての予測能力は低い。従ってin vitroで遺伝毒性を示す物質はin vivoでのさらなる研究が必要となる。
In vivoでのフォローアップ試験方法は、その物質のトキシコキネティクス代謝経路や特定の影響されるエンドポイントに関する情報に基づきケースバイケースで選択されるべきである。一般的に最初のin vivo試験としては、齧歯類での発がん性予測性能が良く染色体異常とゲノム突然変異の両方が検出できる小核試験が勧められる。しかしながら骨髄ではない特定の標的臓器があるような場合など特定の条件では、局地での遺伝毒性を検出できるような他の検査方法が用いられるべきである。そのような検査にはDNA修復合成誘導(UDS)やDNA開裂検査などがある。
要約として、個々の化合物にはトキシコキネティクスやトキシコダイナミクスや作用機序などの入手できる全ての情報を重み付けとともに考慮したケースバイケースのアプローチが必要である。それにより長期毒性試験なしに分類ができるであろう。In vivo遺伝毒性物質への暴露による発がんリスクの定量化は、in vitroやin vivoの遺伝毒性試験のデータのみからでは不可能で、適切な反復投与量での動物実験が必要である。