食品安全情報blog過去記事

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自然による害虫コントロールは有機農場で優れているということはない

Science NOWより
Natural Pest Control No Better on Organic Farms
By Erik Stokstad
27 January 2009
http://sciencenow.sciencemag.org/cgi/content/full/2009/129/1?etoc
合成殺虫剤は使わないことと生息地をできるだけ損なわないようにするため有機農場では通常の耕作地より害虫を殺す益虫も含めた生物多様性が大きい。しかしこの虫が多いことが有機農家にとって自然による害虫コントロールに役立っているのだろうか?英国の南西部の20の農地での研究結果では答えはノーである。オランダのHeterenにある地球生態学センターのWim van der Puttenは、この教訓はオーガニックが必ずしも良いわけではないということだ、と述べている。
新しい研究は、寄生蜂が多く多様であるために有機農場では自然による害虫管理が上手く働いているのかどうかを調べた。英国のBristol大学の生態学者Jane Memmottらはイングランドの南西部の5つの認証有機農場と5km以内にある通常農業の耕作地とを2年間にわたって調べた。どの害虫がどの植物を食べ、寄生蜂がどの害虫に寄生しているかなどを調べ、食物連鎖マップを作った。
予想通り有機農場の方が種の種類は多かった。植物で40種、植物を食べる昆虫が約30、寄生蜂が約10種通常農地より多かった。また植物を食べる害虫を襲う寄生蜂の種類も有機農地のほうが多かった。
驚きだったのは寄生蜂による攻撃率はどちらでも同じだったことである。つまり有機農場では種の種類が多いことによるメリットはなかった。
さらに研究者らは生物多様性が作物の新しい害虫への抵抗性を増やすかどうかを実験した。彼らは害虫apple blotch leaf-minerと類縁関係のある英国中どこにでもいる無害なハモグリバエ(leaf-miner)を加えた。再び不思議な結果となった。どちらの農場でも偽害虫は同じ率だけ寄生蜂に襲われたのだ。ここでも有機農場にメリットはなかった。この知見はEcology Lettersの1月8日号に発表された。
van der Puttenは、生態系は農地が有機農法であるかどうかより農地を取り巻くより大きな全体としての地形に依存していることを示していると述べている。この知見は北米などにはあてはまらないかもしれない。

(環境影響評価って本当は何を指標にすべきなんだろう)