食品安全情報blog過去記事

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ワクチンと自閉症:多くの仮説があるが何の相関もない

Vaccines and Autism: Many Hypotheses, But No Correlation
2009年1月30日
http://www.idsociety.org/Content.aspx?id=13336
Clinical Infectious Diseasesの2009年2月15日号に発表されたレビュー。
多くの研究がワクチンと自閉症の関連を否定している。
著者のフィラデルフィア子ども病院のPaul Offit医師は「ワクチンが自閉症を引き起こす原因についての一つの仮説が否定されると別の説が持ち上げられる。」と言う。ワクチンへの恐怖が予防接種の接種率を下げ、実際に公衆衛生に影響している。ワクチン拒否が最近のミネソタでの子ども一人の死亡を含むHaemophilus influenzaeの増加に寄与し、昨年のカリフォルニアでのはしかのアウトブレークの一つの要因である。
The Lancetに1998年に発表されたMMR自閉症の関連を示唆する論文やエチル水銀含有保存料チメロサール説、そして複数のワクチンを同時に打つと免疫系が弱くなるという仮説まで、いずれも否定されている。
心配している保護者が予防接種を受けさせないことによるワクチンで予防できる病気のアウトブレーク増加傾向を受け、保護者は予防接種を受けさせないという選択がリスクがないわけではないことを認識すべきだ。予防接種拒否はさらに重大なリスクを負うという選択でしかない。
この論文はオープンアクセス
Jeffrey S. Gerber and Paul A. Offit
Vaccines and Autism: A Tale of Shifting Hypotheses
Clinical Infectious Diseases 2009;48:456 461
http://www.journals.uchicago.edu/doi/full/10.1086/596476


さらにGuardianでこんな報道があった
Charity chief quits over autism row
Sunday 25 January 2009
http://www.guardian.co.uk/lifeandstyle/2009/jan/25/autism-mmr-vaccine#
世界最大の自閉症チャリティ団体(Autism Speaks)の取締役Alison Singerが自閉症の原因がワクチンかどうかを巡る見解の相違により辞任。
Alison Singerは2005年にAutism Speaksが設立された時の最初の最高責任者で、先週辞任するまでコミュニケーションと戦略担当の副責任者だった。彼女は先週米国政府の自閉症対策戦略を検討する機関間自閉症調整委員会Interagency Autism Coordinating Committee (IACC)において新たに自閉症とワクチンの関係を調査する研究にはもう出資しないという投票を行った。このことがAutism Speaksの立場と対立し辞任することになった。Alison Singerは言う「お金には限りがある。自閉症とワクチンの関連は何度も何度も否定されてきた。同じ結果を得るのにお金を使い続ける意味はない。事実はワクチンは自閉症の原因ではなく、ワクチンは命を救っているということだ。」さらに彼女は自分の息子がワクチンのせいで自閉症になってしかも治ったと主張する女優Jenny McCarthyを批判している。私たちは女優の言うことではなく専門家の話を聞くべきだ。
Alison Singerも自閉症の娘をもつ)

(製薬会社でも最大の困難は開発中の新薬の開発中止の判断だという。政治でも始めてしまったことを撤回するのは始めるより困難。なんらかのアンチテーゼで始まった市民運動は当初の目的が達成されたり消失したりしたあとに撤退ができないまま疑似科学の塊となりやがて呪いへと変わっていくんだ・・・。)