食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

取り下げられた論文が韓国の科学を騒がせる

Retracted paper rattles Korean science
David Cyranoski
Published online 1 April 2009 | Nature 458, 561 (2009) |
http://www.nature.com/news/2009/090401/full/458561b.html
Natureは今週2000年の遺伝子治療による糖尿病治療の進歩についての論文を取り下げた。データが不正なものだという主張を含め、この論文を取り巻く状況の混乱が韓国科学界を悩ませ続けている。
ソウルの延世大学のHyun Chul Leeらはインスリン類似体遺伝子を導入した組換えウイルスを使って、糖尿病のラットとマウスの症状が消えたと主張していた。その後実験が再現できずLeeらはNatureに論文の取り下げを要請した。Leeは再現できない理由がわからないと言っている。
この取り下げの背景には異論が多い。彼の使ったウイルスベクターpLPK-SIAについて、あとからラボに参加して再現しようとした匿名の研究者が存在を確認していない。このベクターを作ったとされるSu-Jin Kimはカナダのラボに異動しているがサンプルを送ることを拒否した。もう一人のNature論文の共著者は2006年に死亡している。Leeは2005年に匿名の研究者を解雇した。Leeによると2008年にこの研究者はお金と研究費と新しい仕事を与えなければ論文の欠陥をばらすと脅迫してきた。研究者は4年半の再現できない実験に費やしたロスの補償とポストを要求したことは認めている。彼は論文を取り下げるべきだとLeeに主張したらクビにされたと言い、Leeはそれを否定している。
2008年4月に延世大学は調査を開始し12月30日に論文取り下げを薦めている。