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考古学:ヒ素と古代のミイラ

Science 29 May 2009  Vol. 324. no. 5931, p. 1130
Arsenic and Old Mummies: Poison May Have Spurred First Mummies
http://www.sciencemag.org/cgi/content/full/324/5931/1130?sa_campaign=Email/sntw/29-May-2009/10.1126/science.324_1130
チリ北部のCamarones River渓谷では約6800年前の子どものミイラが見つかっている。この地方のミイラは子どもが多いことや文化的背景が他のミイラとは違うことが謎であった。チリの考古学者Bernardo Arriazaは、ミイラのヒ素濃度が高いことを発見し、現在も天然のヒ素汚染があるこの地域が、古代にも砒素中毒による流産や子どもの死亡が極めて多かったためにミイラを作るようになったと言う説を提唱している。ミイラの平均ヒ素濃度は37.8 microg/gで、慢性砒素中毒が疑われる1-10microgをはるかに上回っている。高濃度のミイラでは219 microgを超えていた。
多くの研究者は環境汚染は工業化された社会だけの問題だと考えがちであるが、古代の社会にとっても大きなリスクであった。