食品安全情報blog過去記事

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パンの葉酸:長い物語

Science Media Center
Folic acid in bread: the saga
July 21st, 2009.
http://www.sciencemediacentre.co.nz/2009/07/21/folic-acid-in-bread-the-saga/
全てのニュージーランドのパン(オーガニックパンを除く)に葉酸添加を義務づけることに関する議論はここ数週間に渡って長く荒れ狂っている。
葉酸添加に反対する人々は、製パン業者の経済的懸念の他にある種のがんリスクがあるという健康上の懸念を強調している。一方賛成陣営は世界中の国で使われていることや二分脊椎として最もよく見られる神経管欠損症(NTD)予防効 果を挙げる。
Science Media Centerはニュースで取り上げられた葉酸問題について時系列で並べた。
5月17日
ニュージーランド政府がパンの葉酸添加義務化とりやめについて検討すると発表した−これはオーストラリアとの食品基準合意の観点からは微妙な問題である。
7月8日
労働党葉酸添加計画歓迎のプレスリリースを発表した。
ニュージーランドの食品安全大臣Kate Wilkinsonと製パン業協会がパンの葉酸添加に不信という点で一致した。大臣は葉酸の摂りすぎががんと関連するという研究を引用し、製パン業協会はNTD予防効果は小さいと言う。
7月9日
製パン業者がお金の無駄であるとして葉酸添加反対意見を表明した。
緑の党は政府が葉酸添加についての立場を見直すべきだというプレスリリースを発表した。
7月10日
製パン業協会は、オーストラリアとの食品条約によりニュージーランド葉酸添加する法的義務があるというWilkinson大臣は間違っていると主張。
7月13日
John Key総理大臣は、ニュージーランドには葉酸添加する以外の選択肢はないと言い、労働党のAnnette Kingを非難した。食品安全評議会の会長Katherine Richはこの議論はAnnette Kingが決定を行った当時はまだ知られていなかった根拠によるものであると述べた。
二分脊椎症患者親子連合は葉酸添加が義務化されるべき理由を述べたプレスリリースを発表し、反葉酸キャンペーンの言い分に反論した。
Otago大学の栄養学教授Murray Skeaffは葉酸にはがんリスクはないという未発表データからの新しい根拠を引用した。John Keyは9月から葉酸添加は行われるだろうがすぐに中止されるだろうとコメントした。
7月14日
Kate Wilkinsonは葉酸とがんには関連がないという新しい研究にも関わらず、葉酸添加反対の立場を変えていないため、10月にオーストラリアの大臣とこの問題について話し合うつもりだと述べた。
ニュージーランド製パン業協会は9月に葉酸添加が義務化され、10月にしか見直しされないなら業者には経済的負担が生じるというプレスリリースを発表した。
ニュージーランド自由党は全てのパンに葉酸を添加するのは過保護国家のすることで個人の自由意思を尊重していないというプレスリリースを発表した。消費者団体ヘルスフリーダムニュージーランドもまた葉酸添加反対の声明を出した。
製パン業協会はKate Wilkinsonが最初健康上の懸念から葉酸添加に反対していたのに新しい根拠により安全性には問題ないと言っていることに混乱すると述べた。
John Key総理大臣はオーストラリアとの葉酸添加合意から離脱するために法的助言を求めたと報道されている。
7月15日
オーストラリアがニュージーランドが望まないなら葉酸添加を遵守する必要は
ないといった。
Organics Aotearoa New Zealand葉酸添加より教育がよいという立場から葉酸添加に反対の声明を発表した。
7月16日
ニューランド小児科学会が多くの健康影響と科学的根拠により葉酸添加を強く薦めると発表した。
7月19日
John Key総理大臣は政府はこの問題については2012年まで延期しニュージーランドのパンには9月からの葉酸添加を求めないと確約した。しかし義務化ではなくともパン業者には任意で葉酸の添加を要請した。
障害者団体や長く葉酸添加を望んで活動してきた人たちはこの決定に怒りを表明した。総理大臣の主任科学助言者であるPeter Gluckmanもまたメディアでのこの問題の扱い方に非科学的報道が多かったと異議を申し立てた。二分脊椎症患者親子連合のスポークスマンであるLyall Thurstonは、葉酸添加反対キャンペーンは恥ずべきものだったと非難した。
製パン業協会は最大50%のパンに葉酸が添加されるだろうと言っている。
労働党は食品安全大臣Kate Wilkinsonが葉酸の議論に関しては任務を果たさなかったと批判した。
7月20日
Lyall Thurstonは葉酸添加を2012年まで延期するという決定が発表された日は、公衆衛生よりお金とデマの方が強いという悲しい日であると言っている。
葉酸添加は57ヶ国で行われており、いずれの国でもそれによる健康上の問題は報告されていない。
製パン業協会は決定を歓迎し任意の添加について協議すると言っている。
Kate Wilkinsonはパンへの葉酸添加を2012年5月まで延期するという提案へのパブリックコメント募集を発表した。
7月21日
怒れる小児科医たちは2012年まで延期することにより約一クラス分の子どもたちの命と、健康上のコストが1000万ドル余分にかかるだろうといっている。

(科学はメディアに、そして政治に負ける。公衆衛生の恩恵は多くの人には実感としてはわからないから簡単に扇動される。日本は葉酸に関してはそれ以前のレベルだけど。)