食品安全情報blog過去記事

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食品中3-MCPDエステル

ILSIヨーロッパ
3-MCPD Esters in Food Products
http://www.ilsi.org/Europe/Pages/ViewItemDetails.aspx?ID=191&ListName=Publications
2009年2月のワークショップの報告書
本文は以下
PDF  51ページ
http://www.ilsi.org/Europe/Publications/ILSIEuropeReportMCPDEsters7Se09-1.pdf
要約
最近精製食用油や乳児用ミルクや母乳を含む脂肪含有食品から3-MCPDエステルが高濃度検出されている。他に2-MCPDエステルやグリシドールエステルも生じると考えられる。
3-MCPDエステルの毒性データはない。消化管でエステルが完全に加水分解すると遊離の3-MCPDに相当量暴露されることになる。油脂中に検出された最高濃度の3-MCPDが100%加水分解すると仮定すると、ミルクを与えられている乳児の3-MCPD暴露量がTDIの10-20倍になり、脂肪の多い食事をしている男性で5倍になる。
しかしながら構造的情報と予備的消化に関するデータからは、3-MCPDエステルは消化管でトリアシル-sn-グリセロール(TAG)と同じような挙動を示し、消化管のリパーゼはsn1とsn3の部位により親和性が高いため、食事由来のTAGからは2-モノアシルグリセロール(sn2-MAG)が生じる。sn2-MAGは腸細胞が速やかに取り込み、アシルトランスフェラーゼにより再エステル化されてリポ蛋白質粒子成分になる。3-MCPDエステルも同様であると仮定すると、sn1モノエステルからは遊離の3-MCPDが放出されるがsn2モノエステルは吸収されるだろう。 2-MCPDエステルもまたリパーゼの良い基質となると考えられる。
従って、3-MCPDのsn1モノエステルのみが完全に加水分解され、3-MCPDエステルの約15%しかsn1モノエステルが含まれないと仮定すると、上述のTDI超過は1/6となり、ほとんどの成人消費者については3-MCPDエステルの暴露量はTDI未満と推定される。
従ってこのワークショップでは3-MCPDエステルの毒性学的性質は消化管でのリパーゼによる加水分解速度に強く依存するであろうことに合意した。従ってリスク評価には、そのエステルを、3-MCPDグリシドールの単純なプロドラッグ(代謝されて活性になるもの)とみなすか個別に評価するか明確にすることが必要である。
3-MCPDエステルは全ての精製植物油に検出される。最も低いのが精製菜種油(0.3−1.5 mg/kg)で最も高いのが精製パーム油(4.5−13 mg/kg).である。また3-MCPDはフライドポテトやトーストしたパン、パンの耳、ドーナッツ、ソルトクラッカー、ローストコーヒー、コーヒー代用品のローストチコリ、ローストオオムギ、ロースト麦芽などの熱加工した食品、コーヒークリーム、ニシンの酢漬けやソーセージなどの発酵食品などに広く検出されている。報告されている量は0.2-6.6 mg/kgで、遊離の3-MCPDよりエステル化3-MCPDのほうが濃度が高い。
EUでは加水分解植物蛋白質や醤油の遊離の3-MCPD最大量は2001年に0.02mg/kgと設定された。この規制値は3-MCPDエステルを含むようには設定されていない。
3-MCPDエステルは食用油脂の高温での精製、主に脱臭により生じる。生成メカニズムとして提案されているのはトリアシルグリセロールから環状アシルオキソニウムイオンが生じ、次いで塩化物イオンと反応して3-MCPDエステルができるというものである。3-MCPDエステル生成の主要因子は、塩化物イオン、グリセロール、トリ−、ジ−、又はモノアシルグリセリド、高温及び時間である。 特に油にモノアシルグリセロールとジアシルグリセロールが多いと3-MCPDエステルの生成が直線的に相関して増加する。クロロプロパノールの最も多い異性体は3-MCPDであるが、食品中にはより低温で2-MCPDも存在することがある。
植物油の精製時にはグリシドールエステルも生成する。グリシドールエステルについては毒性データはないがグリシドールは遺伝毒性がある発がん物質である。グリシドールエステルは3-MCPDエステルの生成経路における前駆体と考えられる。脱臭工程に塩化物イオンが存在しない又は少ない時にはグリシドールエステルで反応が停止すると考えられる。グリシドールエステルが存在するとエステルとしての3-MCPDの過剰推定の原因になる可能性があるが、測定方法による。従って標準的な合意された分析方法が必要である。
3-MCPDエステルへの暴露量を削減する可能性について考えると、消費者にできることはあまりない。従って生産者が工程を最適化したり製品から3-MCPDエステルを除去したり反応に関わるものを避けたりすることで量を減らすための対策をとる義務がある。
製品の質を落とさず3-MCPDエステル対策で精製工程を最適化するためには情報が不十分である。この問題については簡単な解決法はない。精製工程の最適化は、油に必要な純度とその他の加工汚染物質生成とのバランスをとりながら行う必要のある難しい課題である。3-MCPDエステル生成メカニズムをより理解することが必要である。
以下今後の研究課題

(遊離の3-MCPDのTDIは2 μg/kg体重
3-MCPDについては動物実験で発がん性がみられているが遺伝毒性はないとされている。遺伝毒性があるとなるとTDIが設定されない。
エコナは1,3DAGが売りだから、生成条件でも消化管での分解でも条件が悪い。)