食品安全情報blog過去記事

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一部の害虫はオーガニックが好き

Science NOW
Some Pests Prefer Organic
By Phil Berardelli
13 November 2009
http://sciencenow.sciencemag.org/cgi/content/full/2009/1113/4?etoc
一部の有機農法推進者の主張とは違って、自然の肥料は作物が昆虫に抵抗するのに化学肥料より優れているということはなく、時に劣っている。これが英国の研究者が2年間の試験で発見したことである。この結果は、農家は個々の作物毎に適切な肥料を選択すべきであることを示唆する。
ここ数十年、有機農法が天然物を使うという理由で人気を得ている。推進者は、例えばウシの糞尿由来の堆肥は石油化学製品より環境への有害影響が少ない等と言う。さらに一部の推進者は有機肥料は合成肥料より植物が害虫に抵抗するのに役立つと主張する。その理由は植物が窒素などの栄養素を吸収する速度が有機肥料のほうが遅いので、そのような栄養素を必要とする害虫の幼生が発育しにくいというのだ。
これまでこの問題についての研究は矛盾したものだったため、英国のImperial College Londonやその他2つの研究所が、3種の害虫(アブラムシ2種と蛾1種)がキャベツに天然及び合成肥料を与えたときにどのように反応するかを調べた。鶏糞や、豆やアルファルファ由来のグリーン肥料、市販の硝酸アンモニウムなどを低濃度及び高濃度の両方使用した。実験は2期、各地で行われた。
その結果は多様なものだった。蛾Plutella xylostellaは通常肥料を与えた作物が好きで有機肥料を与えたキャベツより4倍多く卵を産んだ。アブラムシMyzus persicaeも硝酸アンモニウムを与えたキャベツに2倍高頻度に卵を産んだがもう一種のアブラムシBrevicoryne brassicaeは有機肥料の方を3:1で好んだ。この結果はProceedings of the Royal Society Bに今週発表された。
この教訓は、肥料と植物の複雑な化学的相互作用は予想不可能で、一つの作物と害虫の組み合わせに適した方法が他の組み合わせにも適するとは限らないということである。
Joanna T. Staley et al.,
Varying responses of insect herbivores to altered plant chemistry under organic and conventional treatments
http://rspb.royalsocietypublishing.org/content/early/2009/11/10/rspb.2009.1631.abstract