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食品添加物としてのナタマイシン (E 235)の使用に関する科学的意見

Scientific Opinion on the use of natamycin (E 235) as a food additive
14 December 2009
http://www.efsa.europa.eu/EFSA/efsa_locale-1178620753812_1211903098743.htm
ナタマイシンの食品添加物としての安全性と抗生物質耐性問題について意見を求められた。
ナタマイシン(ピマリシン)はポリエンマクロライドグループの抗真菌剤で、セミハード及びセミソフトチーズとドライ、塩漬けソーセージの表面処理用に表面から5mm中最大1mg/dm2(20 mg/kgに相当)まで使用できる。
SCFは1979年にADIを設定しなかったが、チーズとソーセージのナタマイシン使用に関してのデータベースは適切で安全上の懸念はないとした。
JECFAは1968年と1976年、20002年にナタマイシンの安全性をレビューし、ADI 0.3 mg/kg体重/日とした。
ナタマイシンの代謝に関する情報からは、ナタマイシンは消化管で意味のある量は吸収されず未変化体又は分解産物として糞便中に迅速に排泄されることが示唆されている。
毒性学的試験では、動物で観察される影響は摂食量の減少と体重の増加抑制、消化管刺激と下痢である。この影響が最も出やすいのはイヌである。
亜慢性毒性試験は3つあり、ラット2つイヌ1つである。最初の試験では何の影響も見られず、2つ目の試験で摂食量と平均体重の減少が観察された。NOAELは45 mg/kg体重/日である。イヌの試験は3ヶ月で一時的な下痢と若干の体重減少が見られた。NOAELは12 mg/kg体重/日である。
長期試験はイヌとラットの2つあり、ラットの試験では摂食量の減少と生長速度の低下は最高用量群でのみ見られた。腫瘍の発生数や種類には投与による差はなかった。NOAELは22.4 mg/kg体重/日と考えられた。イヌ試験では最高用量で肥満がみられた。6.25 mg kg体重/日以下では体重増加に影響しなかった。この試験でのNOAELは6.25 mg/kg体重/日と考えられた。
ナタマイシンにはエポキシド環があるため遺伝毒性の構造アラートを持つが、染色体異常誘発は細胞傷害性を伴うことやGLP準拠の変異原性試験では陰性であること、長期試験で腫瘍誘発性が見られないことからナタマイシンに遺伝毒性に関する懸念はないと考えた。
3世代生殖毒性試験でのNOAELは50 mg/kg体重/日である。
1960年にヒトでの臨床試験が行われているが、この試験の知見からはNOAELを導出できない。
1968年にJECFAはこれらのヒトデータをもとにADI 0.3 mg/kg体重/日を設定した。ヒトでの無毒性量を200 mg/日(3 mg/kg体重/日)と推定した。2002年に JECFAはこのADIを確認した。
ナタマイシンの毒性に関するデータが限られていることから、ANSパネルはこれらのデータからADIを設定することはできないと考える。
ナタマイシンへの最も高濃度暴露の場合97.5パーセンタイルは子どもで0.1 mg kg体重/日以下、成人で0.05 mg kg体重/日以下である。ナタマイシンがほとんど吸収されないことを考慮すると、この保守的推定と動物での長期試験やJECFAがADI設定に用いたヒト試験などで見られる影響量との間には適切な安全性マージンがある。ANSパネルは提案されているナタマイシンの使用量は安全上の懸念とはならないと考える。
ナタマシンは食品業界でチーズとソーセージの防かび保存料として使用されている。ナタマイシンはポリエン抗生物質で、作用機序は真菌細胞膜のステロール(主にエルゴステロール)への結合である。細菌は細胞膜にステロールをもたないためポリエン抗生物質に感受性がない。さらに酵母でナタマイシン耐性突然変異を誘発するのは困難であることが報告されている。ANSパネルは抗生物質耐性誘導についての懸念はないと結論した。