Natureエディトリアル
An absurd law
Nature 463, 1000 (25 February 2010)
http://www.nature.com/nature/journal/v463/n7284/full/4631000a.html
トルコ政府はこの国の生物学研究をダメにする可能性のある法律を成立させようとしている
政治家が一般の人々のGMOへの不信に対応するとき、しばしば彼らは科学のいろいろな分野に遺伝子組換え技術がどれだけ浸透しているかについて理解していない。トルコで、農業分野におけるGMOを規制しようとしてこの国の生物医学研究を消滅させてしまう法案に形を変えた。
トルコの科学者の多くがこの事態に気がついたのはわずか数週間前である。一部の科学者は会合を開いたり陳述書を提出したり政治家に働きかけたりとすぐさま反応した。しかしこの法律は今週変更無しに議会で投票されるだろう。
トルコの法律案は2000年のカルタヘナプロトコールへの署名に始まった。さらにEUの規制に従った法律案をトルコの研究評議会と共同で作った。この法案が成立する前にトルコで政権交代がおこり、2002年にイスラム穏健派のAK党が政権を取った。この法律の担当大臣が環境省から農業省に替わり、農業省は分子生物学者に相談しなかった。それから法律の中身は変わり、同時に一般の人々のGM食品への反対が高まった。
今回投票される案では意図的放出と封じ込め条件とを区別していない。たとえ安全性が確認されて承認されていても全てのGM作物の完全な栽培禁止や遺伝子操作した動物や微生物の作成も禁止している。
この法律では遺伝子組換えにより作り出したGMOを使用しての研究禁止していないが、実質的には不可能になる。全ての個々の方法を、90日間の検討期間のある農業大臣が開催する閣僚評議会で承認されなければならない。たとえば細胞へのプラスミド導入のような普通の実験ですら承認が必要になる。大学でのモデル動物を使った研究も不可能になるだろう。あるトルコの科学者の計算によれば彼の実験室だけで年に50の認可申請が必要になる。
このような重要な法律が関係者への十分な相談無しに成立してしまうのは極めて残念なことである。