食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

EFSAはメラミンの耐容摂取量を引き下げ

EFSA reduces tolerable intake level for melamine
13 April 2010
http://www.efsa.europa.eu/en/press/news/contam100413.htm
EFSAは新しい解析の結果これまで考えられていたより低い用量で腎臓への悪影響が誘発される可能性があるためメラミンのTDIを引き下げた。新しいTDIは0.2 mg/kg体重で、2008年にWHOが設定した値と一致する。
メラミン食器から微量のメラミンが食品に移行することがあるがCEFパネルの評価では食品からのメラミン暴露量は一般的にTDI以下である。
食品だけが暴露源ではないため、メラミンの食品への移行量制限については再検討を薦めている。

  • 食品や飼料中のメラミンに関する科学的意見

Scientific Opinion on Melamine in Food and Feed
13 April 2010
http://www.efsa.europa.eu/en/scdocs/scdoc/1573.htm
メラミン(2,4,6-triamino-1,3,5-triazine, CAS No. 108-78-1)は高生産量化学物質で、メラミンを使用した食器や容器などから移行して食品に含まれることがある。現在EUでの特定移行量制限(SML)は30mg/kg食品となっている。また農薬や動物用薬、あるいは難燃剤として使用されたシロマジンの代謝産物として食品に含まれることがある。精製過程により構造的類似体であるシアヌル酸、アンメリン、アンメリドをいろいろな量含む可能性がある。殺菌用の活性塩素源としてジクロロイソシアヌル酸を使ったために食品中にシアヌル酸が含まれることがある。また反芻動物の尿素ベースの飼料中の不純物としてメラミンやシアヌル酸が存在することがある。
食品や飼料に違法にメラミンを添加したことで、主に尿路に結晶や石ができたための腎障害で乳児やペットが死亡したり病気になったりした。ペットは類似体を含む粗(くず)メラミン入りの飼料を与えられ、メラミンとシアヌル酸の複合体からなる結晶ができた。ヒトの乳児の場合は比較的純粋なメラミンを混入された乳児用ミルクを飲んでメラミンと天然の尿成分である尿素からなる結晶ができた。メラミン単独またはシアヌル酸と一緒に与えられた家畜や実験動物でも結晶ができたことが報告されている。
食品や飼料の汚染事件を受けて各種マトリクス中のメラミン測定法が開発された。その結果多くの食品で信頼できる抽出やクリーンアップ法がある。メラミンとその類似体の最も高感度な分析法としてはLC-MS/MSがある。
EFSAはヨーロッパ各国から食品中のメラミン濃度に関する2239のデータを受け取った。これは汚染の可能性の高い食品を検査した結果で、バックグラウンドレベルを代表するものではなく評価には使えない。ヨーロッパから食品中のシアヌル酸濃度についての報告はない。
企業から提出された食品中のメラミンとシアヌル酸濃度を、事故による一部の高濃度検体を除いて暴露評価に用いた。成人の高暴露群でのメラミンの推定暴露量は11microg/kg体重/日以下である。乳児用ミルクのみを与えられている乳児では2 microg/kg体重/日以下である。上限値を使ったシアヌル酸暴露量は成人高暴露群で16 microg/kg体重/日以下、乳児 6 microg/kg体重/日である。これらの値は保守的なものである。
食品と接触する物質からの溶出によるメラミン暴露量は典型的シナリオで平均30-80 microg/kg体重/日、95パーセンタイル50-120 microg/kg体重/日、高溶出シナリオで平均40-110 microg/kg体重/日、95パーセンタイルで70-230 microg/kg体重/日である。
ヨーロッパの飼料中メラミンアクションレベルは2.5 mg/kgで、0.5-10 mg/kgの場合の動物の暴露量を推定した。
メラミンは消化管から速やかに吸収されて半減期4-5時間で排出され、ほとんどあるいは全く代謝されない。尿中のメラミン濃度が結晶化に十分なほど高ければ腎尿細管に傷害を与える。結晶化はpH依存性でpH5.5で最もおこりやすい。ヒトは尿酸オキシダーゼを欠くため尿中尿酸濃度が高く、齧歯類より尿のpHが高いためメラミン供沈殿物を作りやすい可能性がある。メラミンの毒性は全身作用によるものではなく物理化学的性質による。
ラットの13週間試験から膀胱中結晶の率が10%増加するベンチマーク用量(BMD10)41 mg/kg体重、信頼下限(BMDL10)19 mg/kg体重/日を導出した。不確実係数100を採用して丸めた値として0.2 mg/kg体重/日をTDIとする。
現在入手できるバックグラウンドデータからの推定暴露量はTDIを十分下回っている。