食品安全情報blog過去記事

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論文等

  • コーヒーや紅茶からの母親のカフェイン摂取と胎児の成長と悪い出産結果のリスク:ジェネレーションR研究

Maternal caffeine intake from coffee and tea, fetal growth, and the risks of adverse birth outcomes: the Generation R Study
Am J Clin Nutr (April 28, 2010). doi:10.3945/ajcn.2009.28792
http://www.ajcn.org/cgi/content/abstract/ajcn.2009.28792v1
オランダの妊娠初期女性7346人の参加した前向きコホート研究。
胎児の頭囲と体重についてはカフェイン摂取量と一定の関連はみられなかった。カフェインの摂取量の多さは最初の三ヶ月の頭殿長と4-6ヶ月及び7-9ヶ月の大腿骨長と誕生時身長の短いことに関連した。1日に6カフェインユニット以上を摂っていた母親の子どもは生まれたときに妊娠週数の割には小さくなるリスクが高い傾向にあった。

Artificial sweetener as a historical window to culturally situated health.
Ann N Y Acad Sci. 2010 Mar;1190(1):159-65.
de la Peña C.
人工甘味料の歴史から米国人女性が健康をどう考えてきたのかを検討する。1950年代のサッカリンとサイクラミン酸の受け入れ、そして1977年のFDAの規制とその後のサッカリン擁護の事例から、「健康的な食品」という概念や価値がどう形成されているのかを考察した。

  • 乳児に新鮮なヤギの乳:神話と事実−レビュー

Fresh goat's milk for infants: myths and realities--a review.
Pediatrics. 2010 Apr;125(4):e973-7. Epub 2010 Mar 15.
Basnet S et al.
文化的信仰やネット上の虚偽の情報を信じて赤ちゃんを無調整のヤギの乳だけで育てている人達がたくさんいる。そのために重症電解質異常や代謝性アシドーシス、巨赤芽球性貧血、アナフィラキシーを含むアレルギー、溶血性尿毒症症候群、感染症などでお死亡したという逸話的事例が報告されている。生のヤギ乳を与えられて重症高窒素血症と高ナトリウム血症により持続する脳梗塞になった乳児の症例を説明し、そのような事例のレビューを行った。
(ヤギミルクが母乳に近いのでいいとかいう嘘情報がネットにはたくさんあるようだ)

Study shows vitamin A supplementation does not reduce maternal mortality
4-May-2010
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2010-05/lsoh-ssv043010.php
Lancetにオンライン発表されたガーナでのクラスター無作為化二重盲検プラセボ対照試験ObaapaVitAの結果によれば、週に一回ビタミンAサプリメントを与えることは母親や子どもの生存率に影響しなかった。ネパールでの同様の試験では死亡率の減少が報告されていた。

High doses of antioxidant supplements induce stem cell genetic abnormalities
4-May-2010
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2010-05/cmc-hdo050410.php
Stem Cellsに発表された論文によれば抗酸化サプリメントは遺伝子異常を誘発する。Cedars-Sinai Heart InstituteのEduardo Marbán博士らは幹細胞の培養が20%酸素下で行われているため(生体内では3-5%)遺伝子の異常で9%が欠落するのにイライラしていた。そこで高用量の抗酸化ビタミンで酸化の問題を解決しようとしたら逆に遺伝子の異常が増えた。抗酸化物質は低用量では遺伝子異常を抑制するが高用量では増加させる。
(理論的には当然なのだけれど)

Drinking alcohol during pregnancy could lead to acute myeloid leukemia in children
6-May-2010
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2010-05/aafc-dad042910.php
Cancer Epidemiology, Biomarkers & Preventionに発表された論文によれば、妊娠中の飲酒は、子どもには比較的希な急性骨髄性白血病のリスクを増加させる可能性がある。21の症例対照研究の解析結果。
現在妊娠中には飲酒しないよう助言されているにもかかわらず、妊娠中の飲酒率は米国で12%、スウェーデンで30%、フランスで52%、オーストラリアで59%、ロシアで60%となっている。

  • 有機農法は野生生物には限られた利益しかない

Organic farming shows limited benefit to wildlife
5-May-2010
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2010-05/uol-ofs050510.php
有機農法は野生生物に優しいとみなされているが鳥やミツバチや蝶への好影響は収量の少なさを補うことができない。有機農法で増える生物多様性はこれまで考えられていたより少なく、12%超程度で、55%の収量の低下と比較するとメリットはない。Ecology Lettersにオンライン発表されたLeeds大学の研究。