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貝類のマリンバイオトキシンに関する科学的意見–新興毒素:シガトキシングループ

Scientific Opinion on marine biotoxins in shellfish – Emerging toxins: Ciguatoxin group
7 June 2010
http://www.efsa.europa.eu/en/scdocs/scdoc/1627.htm
シガトキシン(CTX)グループの毒素は底生性の渦鞭毛藻Gambierdiscus toxicusが作るガンビエルトキシンの代謝により魚中に存在する。それらは主に太平洋、カリブ海、インド洋地域に見つかっていてそれぞれパシフィック(P)、カリビアン(C)、インド洋(I)CTX毒素と呼ばれる。最近ヨーロッパで捕まえた魚に初めてCTX毒素が発見された。
CTXグループ毒素はシガテラ(CFP)という魚中毒を引き起こす。シガテラは嘔吐・下痢・吐き気などの消化器系症状とちくちくしたり痒いという神経症状、高血圧や徐脈のような心血管系症状の多様な症状からなる複雑な症候群で、重症の場合食べてから30分で発症するが軽症だと24-48時間かかる。心−呼吸器系不全により死亡することもある。現時点ではCFPは世界で最も多いマリンバイオトキシンによる中毒で、毎年1-5万人がこの病気に罹る。CFPは主に小型の珊瑚礁に住む汚染された魚を食べて毒素を蓄積した大型の捕食魚を食べることで発症する。
Gambierdiscus toxicusはガンビエルトキシンやマイトトキシンも産生し、それらの毒素がCFPに関連していることも報告されているがこの意見ではCTXグループ毒素についてのみ扱う。
CTXグループ毒素は脂溶性のポリエーテル化合物で、これまで20以上の類似体の化学構造が同定されている。C-CTXについてはC-CTX-1とC-CTX-2の2種類が構造決定されていてほかにいくつかの類似体が道営されている。I-CTXグループ毒素には4つが同定されている。
現在EUにはCTXに関する規制値は存在しないが魚のチェックは行われる。CTXグループ毒素の毒性情報は限られており主に腹腔内投与による急性毒性である。入手可能な情報からは、CTX-グループ毒素は神経や筋繊維の電位依存性ナトリウムチャンネルに結合してチャンネル機能を阻害するのが主な分子機構である。
CONTAMパネルは、より良いデータが得られるまでマウスの腹腔内投与による急性毒性を指標に暫定等価係数を採用する。
TDIを設定できるような実験動物での長期試験は無く、急性毒性の指標であるARfDの設定を検討した。しかしヒト中毒事例でも実験動物でも定量的データが極めて乏しく経口ARfDの設定は不可能であった。またARfDは何回かCTXに暴露された場合(例え数ヶ月の間隔があっても)のヒトを適切に保護しないであろう。
多くの出版データからは太平洋での中毒事例は主に魚の身1kgあたり0.1-5 μg P-CTX-1を含む魚を食べた場合に起こっている。FAOのアプローチに沿って最小濃度の0.1μg P-CTX-1当量に不確実係数10を採用し0.01 μg 当量 P-CTX-1/kgを得た。
現在マウスバイオアッセイが広く検出に用いられているが、動物の福祉と感度の低さからCTX毒素検出法としては適切ではない。細胞傷害性や受容体結合などのin vitro試験法やLC-MS/MSなどが使えるかもしれないが公式に評価された測定方法は存在しない。