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貝類のマリンバイオトキシンに関する科学的意見–環状イミン(スピロリド、ジムノジミン、ピナトキシン、プテリアトキシン)

Scientific Opinion on marine biotoxins in shellfish – Cyclic imines (spirolides, gymnodimines, pinnatoxins and pteriatoxins
7 June 2010
http://www.efsa.europa.eu/en/scdocs/scdoc/1628.htm
スピロリド(SPX)、ジムノジミン(GYM)、ピナトキシン(PnTX)、プテリアトキシン(PtTX)は貝類に存在するマリンバイオトキシンで環状イミン(CI)である。SPXは渦鞭毛藻Alexandrium ostenfeldiiが、GYMは渦鞭毛藻Karenia selliformisが産生する。PnTXを産生する生物は同定されてないがペリディノイド渦鞭毛藻であるとされる。PtTXは貝類がPnTXを代謝したものであることが示唆されている。
SPXはヨーロッパ各国で検出されているがGYMはヨーロッパ産の貝からはこれまで発見されていないが輸入品からは検出されている。ヨーロッパでPnTXが初めて貝に見つかったはごく最近である。
世界でこれらの毒素が藻類や貝類に検出されてはいるがヒトでの中毒事例は報告されていない。
SPX、GYM、PnTX、PtTXは化学構造とマウスでの毒性が似ているため同じグループに分類されている。SPXは現在まで12の類似体が知られており、そのうち最も良く貝にみられるのが13-デスメチルSPX Cである。GYM類似体も構造が知られている。PnTX類似体はこれまで7つが同定されている。PnTXとPtTXは構造的にはほぼ同じで最近の知見からはPnTX FとGが全てのPnTXとPtTXの前駆体であることが示唆されている。
現在EUにはCIに関する規制値は存在しない。CIの毒性情報は限られており主に腹腔内や経口投与による急性毒性である。入手できる情報から、CIは神経筋接合部を含む中枢及び抹消神経系のアセチルコリン受容体に結合して阻害する能力がある。
データが無いためTDIやARfDは設定できない。
経口投与によるSPXのLD50と市販品摂取による暴露量との暴露マージンを計算したところ1000-10000の範囲であった。マウスでの用量反応の傾きが大きいことと速やかに回復することなどから、現在の推定暴露量で消費者に健康上の懸念はないと結論した。しかしながらデータが限られることを注記する。マウスバイオアッセイは毒素検出法としては適切ではない。公式に評価された測定方法は存在しない。