食品安全情報blog過去記事

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劣化ウランによる環境と健康リスクに関するSCHERの意見

SCHER Opinion on: the environmental and health risks posed by depleted uranium
http://ec.europa.eu/health/scientific_committees/environmental_risks/docs/scher_o_123.pdf
パブリックコメント募集を経て2010年5月18日の本会議で採択されたもの
PDF 41ページ
天然の食品や水に含まれる放射性ウランはがんやその他の健康影響はないとNRCは述べている。さらにウランの採掘労働者の累積内部線量200mSv以下でのウランの暴露と肺がんの関連は見られていない。ウラン採掘労働者の場合肺がんの主なリスク要因はラドンで、大きな交絡要因は喫煙である。放射線学的には劣化ウランや天然ウランによる放射線由来の健康ハザードはない。また軍事的に劣化ウランが使用された地域の暴露量はウランの化学毒性閾値より低く、劣化ウランの化学的および放射線学的毒性による一般人の健康リスクはない。この結論は全ての専門家委員会が支持している。
劣化ウランが使用された地域で従軍していた軍人の子どもに奇形が多いという主張がしばしばなされるが実証されていない。イラク南部やクウェートでの奇形が増加しているという報告は科学文献には存在しない。
(健康リスク評価の項目にわざわざハザードとリスクは意味が全く異なるという解説がある。放射性物質であるウランについては特にその誤解が著しいのだろう。日本語で「劣化ウラン」を検索しても状況は同じで、延々と放射線のハザードのみを記したサイトばかりが出てくる。放射線による発がん影響には閾値がないという主張も仮定と現実的評価を、意図的かどうかはわからないが誤解している。放射線を含む遺伝毒性発がん物質にも実質的閾値はある。閾値を推定するためのコンセンサスが得られている方法がないだけ。)