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食品添加物としてのクルクミンの再評価に関する科学的意見

Scientific Opinion on the re-evaluation of curcumin (E 100) as a food additive
6 September 2010
http://www.efsa.europa.eu/en/scdocs/scdoc/1679.htm
食用色素として使用されているクルクミンの安全性を評価した。
クルクミン(E100)はジシンナモイルメタン色素でEUでは食品添加物として認可されておりJECFAでは1974、1978、1980、1982、1987、1990、1992、1995、2000、2002、2004年に、EUのSCFでは1975年に評価されている。SCFは1975年にADIは設定できないと結論したがそれでも食品への使用は許容できるとした。JECFAでは2004年のADIを0-3 mg/kg体重/日に設定している。
クルクミンには主に3つの着色成分が含まれている。(1E, 6E)-1, 7-ビス-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-ヘプタ-1, 6-ジエン-3, 5-ジオン及びそのデスメトキシ- 及び ビス-デスメトキシ誘導体である。
動態については、動物実験ではクルクミンは速やかに代謝され主に糞便中に排出されるようだ。ヒトでの実験でも最大12000mg(60kgのヒトの場合200 mg/kgに相当)投与しても人体中に高濃度になることはありそうにない。
遺伝毒性についてはクルクミン及び市販のターメリックオレオレジン(クルクミン17.5%)でサルモネラの試験等では陰性である。Recアッセイとハムスター肺繊維芽細胞での染色体異常試験で陽性で、ヒトリンパ球や胃粘膜細胞のin vitro試験で10-50 microMの濃度でDNA傷害活性を示す。また6価クロムやドキソルビシンなどの変異原性発がん性物質の作用を増強する。マウスに0.5%ターメリック(クルクミン濃度不明)やクルクミン0.015%(純度不明)を混餌投与した場合には小核試や細胞遺伝学的異常を誘発する影響は見られなかった。
JECFAは1996年にクルクミンに遺伝毒性があるという根拠は無いと結論し、2004年の最新の評価以来新しい研究は評価されていない。
先の評価以来いくつかのin vitro遺伝毒性試験の結果が出ている。クルクミンはコメットアッセイでDNA傷害を誘発しHepG2細胞でミトコンドリアと核のDNAを傷害し、HepG2細胞の小核を僅かではあるが有意に増加させる。
ラットでのin vivo試験ではクルクミンスパイスは0.5、5、10、25、 50 mg/kg bwを経口で4週間投与した場合統計学的に有意に用量依存的に小核を有する多染性赤血球(MNPCE)数を増加させ総染色体異常頻度を増加させる。
ヒトWilson病のモデル動物であるLECラットに95%純度のクルクミンを0.5%餌で投与すると核DNAのエタノDNA付加体が9-25倍、ミトコンドリアNNAでは3-4倍増加する。
ANSパネルはこれらのいくつかの試験における遺伝毒性陽性を示唆する結果は無視すべきではなく、この遺伝毒性の懸念を払拭するには現在入手できるin vivo遺伝毒性試験は不十分だと考えた。
1993年にNTPはラットとマウスでの79-85%クルクミンを含むターメリックオレオレジンを0、2000、10000 または 50000 mg/kg含む餌を103週与えた長期試験の結果を報告した。ラット試験についてはNTPはオスのF344/Nラットでは発がん性の根拠はないがメスのF344/Nラットでは陰核腺腺腫頻度の増加に基づき発がん性について曖昧な(equivocal)根拠があると結論した。マウスについてはB6C3F1オスマウスでは10000mg/kg群での肝細胞腺腫頻度のわずかな増加と2000と10000 mg/kg群での統計学的には有意ではないものの小腸に上皮性悪性腫瘍ができたことを根拠に発がん性について曖昧な(equivocal)根拠があると、メスについては10000mg/kg群での肝細胞腺腫頻度の増加を根拠に発がん性について曖昧な(equivocal)根拠があると結論した。
NTPが報告した統計学的有意差は良性新生物についてのみで悪性新生物については統計学的有意差はなく、用量依存性もなく、歴史的な対照群での値の範囲内で性や種で一貫していない。従ってANSパネルはJECFAの結論、クルクミンに発がん性はないに合意し遺伝毒性についての懸念も排除されると結論した。
JECFAと同様、生殖毒性試験におけるF2世代で観察された最高用量群での体重の増加抑制を有害影響と見なし、NOAELを250-320 mg/kg bw/dayとし、不確実係数100を用いてADIは3 mg/kg体重/日とする。
クルクミンの食事からの暴露量は最大許容量で計算すると理論的には成人で6.9 mg/kg bw/day、3才の子どもで11.9 mg/kg bw/dayとなる(第一段階)。そこでさらに第二段階及び第三段階の詳細推定を行った。第三段階推定では英国成人の平均暴露量は0.8 mg/kg bw/dayで高摂取群は2.0 mg/kg bw/dayとなる。ヨーロッパの子ども(1-10才)ではそれぞれ0.5-3.4 mg/kg bw/day、1.1-7.1 mg/kg bw/dayの範囲となる。
しかしこの暴露量推定はスパイスとしてのターメリックの使用を考慮していない。天然由来と食用色素由来とを組み合わせた推定暴露量は平均で子ども0.7-3.6 mg/kg bw/day成人1.0 mg/kg bw/dayで、95パーセンタイルは子ども1.6-7.6 mg/kg bw/day、成人2.6mg/kg bw/dayである。
通常の食事からのクルクミン摂取量はADIの7%以下である。
鉛やその他重金属の規格とアルミニウムレーキによるアルミのTWI超過について注記した。