食品安全情報blog過去記事

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ヨーロッパでのほ乳瓶へのビスフェノールA禁止 専門家の反応

SMC
European ban on bisphenol A in baby bottles — expert reaction
November 29th, 2010.
http://www.sciencemediacentre.co.nz/2010/11/29/european-ban-on-bisphenol-a-in-baby-bottles-expert-reaction/
2008年のカナダでの同様の禁止、デンマークやフランス、米国の一部の州での規制に続く。NZFSAの最新声明では研究状況を監視し禁止する理由はないとしている。
NZFSAの毒性学アドバイザーJohn Reeve
欧州委員会での禁止は科学的根拠のあるものではなく政治的対応である。「予防原則Precautionary Principle」に言及しているが引用は不正確である。この原則は有害影響がおこるかもしれないという根拠があって、その影響が出ないというしっかりした根拠が無い場合には、規制担当者は有害影響はおこると見なすべきだということを言っている。ビスフェノールAの場合にはヒト暴露量で有害影響があるという根拠はなく、さらに高濃度であっても有害ではないという極めて強い根拠があるのだから予防原則はあてはまらない。
ヨーロッパのリスク評価機関EFSAは2010年9月にビスフェノールAが健康リスクになるという根拠はないと結論している。そしてデンマーク予防原則発動によるBPA禁止を支持しないとしている。さらに最近(今年11月)のWHO専門家委員会も現時点でBPAを規制する理由はないと結論している。ヨーロッパの対応もカナダ同様専門家の助言に反し、科学に基づくものではない。ニュージーランドは科学的根拠に基づき決定することを継続する。新しいデータが入手できれば必要な対応を行う。
結論として食品中のBPAが安全だという強い根拠があり疑いはほとんどない。

以下は英国とカナダのSMCによる
エジンバラ大学ヒト生殖科学ユニットRichard Sharpe教授
私は自分の子どもに喜んでPCほ乳瓶でミルクを与える。ほ乳瓶に含まれる量で赤ちゃんに悪影響があるという説得力のある根拠はなく、体内で速やかに分解される。禁止は過剰反応だと思う。科学ではなく政治的対応。

カナダMcMaster大学Warren Foster教授
BPAには弱いエストロゲン作用があり、多くの消費者製品から幅広い人々が極微量暴露されている。動物実験で有害影響が報告されているが他の実験室では再現できないなど矛盾がある。現状のBPA暴露がヒトに有害であるという切実な根拠はなく、規制は極めて予防的なものである。

ロンドン大学毒性学Tony Dayan名誉教授
これは毒性学とリスク評価にとって悲しいニュースだ。BPAの禁止は科学的根拠より根拠のない不安の方が大事だという政治的対応である。これは欧州委員会が資金を出してもいる毒性学研究を否定するものだ。

Exeter大学環境毒物学教授Tamara Galloway
EU予防原則が採用されたものだ。このことはBPAや代用品の安全性に関するさらなる研究が必要だということを強調する。

Carleton大学化学科J. David Miller教授
ヘルスカナダはBPAは成人にとって問題はないがほ乳瓶でミルクを与えられている乳児の安全性マージンが小さいと判断した。私はこれが適切で賢明だと思う。