食品安全情報blog過去記事

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栄養目的で特定栄養食品または一般食品に加えられるクロム源としてのピコリン酸クロムの安全性に関する科学的意見

Scientific Opinion on the safety of chromium picolinate as a source of chromium added for nutritional purposes to foodstuff for particular nutritional uses and to foods intended for the general population
1 December 2010
http://www.efsa.europa.eu/en/scdocs/scdoc/1883.htm
合成ピコリン酸クロムは遺伝毒性発がん性のある6価クロムを含まないことを確認すべきである。食品からの無機クロム(III)の生物学的利用度は低く(0.1-2%)、ピコリン酸クロム由来のクロムも同様または若干生物学的利用度が高いだろう。
先の評価でクロム(III)の遺伝毒性データで矛盾した結果が出ているため再評価が必要とした。今回の意見ではピコリン酸クロムの遺伝毒性試験結果について概要を提供する。細菌の変異原性試験では一般的に陰性であるがCHO細胞を使った染色体異常誘発性試験では矛盾した結果が出ている。そのためFSAはCOMにレビューを依頼した。COMはデータ全体から見てクロムはほ乳類のin vivo試験で陰性のためin vitroでは変異原性はないと見なすべきで、さらにin vivo試験を要求する必要はないと結論した。2004年のCOMの結論はNTPにより行われた試験で支持された。
ANSパネルはCOMが評価した際に含まれなかったさらなる試験について評価した。OECDガイドライン475に従って行われたSDラットの骨髄での染色体異常誘発性試験では陰性だった。高濃度では細胞傷害性がありその結果としてDNA傷害がおこることが示唆されている。NTPによる長期がん原性試験等の結果から、ANSパネルはピコリン酸クロムのNOAEL 2400 mg/kg体重/日と結論した。
申請者はピコリン酸クロムを推奨摂取量の最大30%までの量(1食あたりクロムとして12 microg、ピコリン酸クロムでは約97 microg)で使用するとしている。
食品サプリメントとしてのクロムは最大600 microg/日使われていて、ピコリン酸クロムとしては5mg程度になる。これは体重60kgなら83 microg/kg体重/日で、NTPの試験から導出したNOAELの29000分の1である。ただしWHOのサプリメントとしてのクロムの上限摂取量250 microg/日を超えている。
クロムの上限摂取量は設定されていない。SCFが設定した1mg/日もWHOの250 microg/日も安全性を調べる研究に基づくものではない。また250 microg/日という値は普通の食事から摂取するレベルであり特定の栄養目的使用のクロム摂取量上限値としては適切ではない。強化食品とサプリメントからの推定摂取量はNTPの試験から導出したNOAELと比べると大きな安全性マージンがあり安全上の懸念とはならない。