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SACN 鉄と健康報告書

SACN(栄養に関する科学助言委員会)英国
SACN Iron and Health Report
25th February 2011
http://www.sacn.gov.uk/reports_position_statements/reports/sacn_iron_and_health_report.html
報告書374ページ
http://www.sacn.gov.uk/pdfs/sacn_iron_and_health_report_web.pdf
1998年に食品と栄養政策の医学的側面に関する委員会(COMA)が発表した「がんの発症に関する栄養学的側面」報告書において、赤身肉や加工肉と大腸がんが関連する可能性について指摘された。この報告書では赤身の加工肉を「たくさん食べている人は減らすべき」とされたが、赤身肉は英国の食事においては鉄源であるため、同時に「肉を減らした場合の健康影響、特に鉄の状態」についてレビューが必要とした。この報告書はそれに答えるものである。
食品由来の鉄はヘム鉄と非ヘム鉄の二つの形態からなり、ヘム鉄はほぼ肉にのみ存在する。英国の主な鉄摂取源は強化穀物(パンを含む)、肉/肉製品、野菜である。
鉄の吸収を左右するのは鉄の必要性で、鉄欠乏の場合より吸収が良く鉄過剰だと吸収は少ない。ヘム鉄は非ヘム鉄の2-6倍吸収されやすい。鉄の吸収を阻害したり促進したりする食品成分が知られているが、食事全体からみるとこれらの阻害因子や促進因子は鉄の状態にほとんど影響しない。
生理的要求にみあう鉄が供給されていることが重要であり、そのためには鉄を含む食品も含む健康的でバランスのとれた食生活が薦められる。特定の鉄吸収阻害因子や促進因子を強調するよりそのような(全体的)アプローチのほうがより重要である。
一部の英国人で鉄の摂取量が推奨量より少ないが、鉄欠乏頻度とは一致しない。これは推奨摂取量(DRV)の不確実性、特に生殖年齢の女性で高すぎるためであろう。DRVの見直しが必要である。
データに不確実性はあるものの、英国の約95%は鉄が足りている。幼児や生殖年齢の女性や65歳以上の一部で鉄欠乏性貧血のリスクがある。鉄欠乏性貧血の徴候がある場合には適切な診断と食事や鉄サプリメントの使用を含めた助言が必要である。
現在入手できる根拠からは妊娠女性のルーチンの鉄サプリメント使用は薦められない。ただし妊娠三ヶ月以内でヘモグロビン濃度が110g/L未満、28週で105g/L未満の場合には検討すべきである。
COMAの報告では赤身加工肉と大腸がんリスクの関連する可能性が指摘されたがどのくらいの量の赤身加工肉なのかは定量できない。赤身加工肉を比較的多く食べている成人(1日90g以上)については減らすことを助言してもいいかもしれない。理論的モデルからは、高摂取群が約70g/日に減らしても鉄の最低基準摂取量を下回る人の割合にはあまり影響しないだろう。