食品安全情報blog過去記事

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飲料水中の鉛基準

SCHER
Lead Standard in Drinking Water
http://ec.europa.eu/health/scientific_committees/environmental_risks/docs/scher_o_128.pdf
飲料水中の鉛濃度基準について、1980年の指令で50 microg/Lとされていたが1993年にWHOが10 microg/Lへの改訂を提案したことを受け、1998年に欧州委員会がCSTEE(毒性と環境毒性と環境に関する科学委員会)に助言を求めた。CSTEEは1994年に最終的には飲料水基準を10 microg/Lまで引き下げるべきだということに合意しており、1998年に欧州委員会で採択された指令では2013年12月25日発効で飲料水基準を10 microg/Lとした。2008年にはWHOが10 microg/Lを再確認している。
2010年3月18日にIEGREがこの値の設定根拠に疑問があるとして15または20 microg/Lを提案した。理由として飲料水以外からの鉛摂取量が相当減っているため、飲料水中鉛基準を緩和しても総摂取量は増えないというものである。SCHERは、有鉛ガソリンや食品加工業での鉛の使用削減によって、飲料水基準を10 microg/Lから15または20 microg/Lに緩和することによりヒト健康リスクとならないかどうかについて意見を求められた。
SCHERは現在入手できるデータから、10 microg/L以下であっても子どもの知能の発達に有害影響が出る可能性があると結論した。EFSAは2.1 microg/Lという濃度であっても感受性の高い集団(乳児や胎児)への鉛暴露量は暴露マージンが1以下であると結論している。従って現在提案されている新しい飲料水基準であっても影響がある可能性がある。リスク削減のためにはむしろさらなる削減が必要である。
(EFSAのScientific Opinion on Lead in Food
http://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/1570.htm
http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20100421#p1参照)