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US radiation study sparks debate
6 April 2011 | Nature 472, 15 (2011)
http://www.nature.com/news/2011/110406/full/472015a.html
がんとの関係を調べるのにどういう方法がベストかについて研究者の意見が分かれる
日本の核緊急事態がこれまでも議論になっていた通常運転中の原子炉近傍に住むことによるがんリスクについての問題をさらに激化させた。
昨年米国原子力規制委員会(NRC)がNASにこの問題の吟味を依頼した。NASは現在専門家に対してどのような研究デザインがいいのかについて意見を聞いていて次回の公開会合は4月18-19日にシカゴで予定されている。しかしすでにこの研究の実現可能性と意味のある結果が出せるのかについて疑問を抱いている研究者らがいる。
NRCによれば個人の総年間放射線暴露量のうち原子力発電所近くに住むことに由来するのは1%以下である。地球や大気に由来する天然暴露や医療暴露のほうが遙かに多い。それでも「人々の間にはがんリスクが増えるのではという懸念が何度も主張される」、とNRCの原子炉近傍住民がんリスク解析プロジェクトマネージャーのTerry Brockは言う。「我々はそれに答えるために、最も新しい最も科学的にしっかりした情報が欲しい。」
最新の全米研究は1990年にNCIが発表したもので、問題があるという根拠は何もなかった。NRCはその後20年のデータや技術の進歩を活かそうと考えている。例えば1990年の研究ではがんによる死亡のみを検討したが、記録状況が改善されれば疑われるがん診断パターンについても検討できる。またGPSにより住民の原子炉からの実際の距離を測定することができる。さらに放射線暴露量の推定やがん頻度との相関調査も含まれる。
しかし米国の保健物理学会長Edward Maherは、たとえそのような全ての要素を考慮しても、統計学的検出力が低すぎると言う。「そのような研究にあまり価値はない。それで一般の人々は少し安心するかもしれないが、超低線量の影響をみているわけではない」彼は他の発がん物質などによる交絡を管理できる実験室での研究にお金を使った方がいいと主張する。
他の専門家は2008年のドイツ研究の改善を目指すべきだと言う。
NASは2011年末までに助言を出す予定である。研究をすることになれば次の年にまた別の委員会が設定されるだろう。
この研究では何の影響も見られないだろうという専門家もいる。ワシントン州立大学放射線毒性学者Antone Brooksは一定レベル以下のDNA傷害には適切に対処できるという。一方リスクは決して無くならないと信じる専門家もいる。Pacific Northwest National Laboratory の放射線生物学と生物物理部門長Bill Morganは、DNA修復機能は100%完全ではないので極微量でもリスクはあるという。コロンビア大学のDavid Brennerは「何の影響も見つからなければ問題はないという主張もあるだろうが、疫学研究でリスクが観察できないということはリスクがないということを意味しない。」という。
(観察できないけれど影響はあるのだという主張は、EBMなら採用できない。学問的興味としてはともかく現実には優先順位が低いと判断されるだろう。)

  • GM成分が明らかになったことで前大臣が懸念

Former minister worried by GM ingredient revelations
28-Mar-2011
http://www.foodmanufacture.co.uk/Food-Safety/Former-minister-worried-by-GM-ingredient-revelations
先週Telegraphが有名ブランドのマヨネーズやバター、チーズ、アイスクリームなどの会社が自社製品にはGM大豆を飼料にした動物に由来する成分は全く使われていないということは保証できない、とした調査を発表した。ブレア政権時代の環境大臣Michael MeacherはGM大豆を与えた動物由来の肉やミルクを食べることによるヒトの長期健康影響について十分な研究が行われていないと語った。
FSAはGM大豆を与えた動物由来の肉やミルクは普通の肉やミルクと同様に安全であると言っている。
(そんなこと言ってたら野生の魚や動物は何食べたかわかんないのに)

Telegraph
French vegans charged with child neglect after baby's death
29 Mar 2011
http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/europe/france/8414195/French-vegans-charged-with-child-neglect-after-babys-death.html
フランス北部で、母乳のみを与えていて11ヶ月の赤ちゃんをビタミン欠乏で死亡させた完全菜食主義者の夫婦が児童虐待で告発された。Sergipe と Joel Le Moaligou の娘Louise が2008年に死亡したとき、体重はわずか12ポンド(5.4kgくらい)だった(この月齢の平均体重は17.5ポンド(8kgくらい))。解剖の結果LouiseはビタミンAと12の欠乏で、これにより感染症が重症化した。母親が全く動物由来食品を食べないことと、赤ちゃんが気管支炎になって病院から指示された助言に従わなかったことが死因であると検察は主張している。夫婦が完全菜食主義者になったのはテレビでウシが屠蓄場に連れて行かれる様子を見てからである。治療には本で読んだ粘土やキャベツ湿布をしていた。
(菜食主義以外のものも混じっているような?母乳へのこだわりとかキャベツ湿布ってどこかで聞いたことが)

  • ビーフードに含まれる毒素がホルモンに影響する:研究

Reuter
Toxins in baby food might affect hormones: study
Fri Apr 1, 2011
http://www.reuters.com/article/2011/04/01/us-toxins-baby-food-idUSTRE7306UP20110401
乳児用ミルクやベビーフードに真菌由来のホルモンがしばしば検出される
Pisa大学の研究者らが185の乳児用ミルクと44のベビーフードを調べたところゼアラレノンとその誘導体が28%から検出された。
ただし濃度は一般にWHOの暫定TDI 0.5 microg/kg/dayより低いが、乳児用ミルクのベータゼラノールは4倍だった。
The Journal of Pediatrics
Mycoestrogen Pollution of Italian Infant Food
http://www.jpeds.com/article/S0022-3476(11)00076-X/fulltext
(微量のホルモン活性がダメだと主張する人はこういうのも許せないのだろうけれど。)

  • Institute of Food Science and Technology (IFST)によるクローン家畜に関する情報

http://www.ifst.org/document.aspx?id=1030

  • 放射能は日本の魚を荒廃させるか?

Science Insider
Primer: Will Radiation Lay Waste to Japan's Fish?
Sara Reardon  6 April 2011
http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2011/04/primer-will-radiation-lay-waste.html?ref=hp
福島原子力発電所からの放射能漏れは栓をされたが、日本の沿岸水は汚染された。原子炉が破壊されてすぐに日本の食品の汚染に関する懸念はあったが、一部の食品から実際に高濃度放射能汚染が検出され、日本の当局は安全基準値を設定した。汚染された魚がどこで取れたのかは不明である。福島の避難区域では海水の放射能が規制値を超えている。
しかし分析者は魚がヒト健康に有害影響があるほど汚染されるとは思っていない。例えば、半減期の短いI-131ならただ待てばいい。ただセシウム137については注意深く観察することが必要であろう。
一方海洋生物学者は海洋生物への影響について心配しているがほとんどはそれほど恐れていない。海の大きさが放射能を速やかに薄めるだろう。さらに海に生きる甲殻類や昆虫は放射能に極めて強い。フランスIRSNの放射線生態学者Bruno Fievetによると海の生き物を殺すため−あるいは傷つけるために必要な放射線の量は、ヒトに影響する量より何段階も大きい。彼が実験室で海洋生物に突然変異を誘発するのに使った放射能の量は福島付近の海水の放射能より何倍も高い。
しかしより直接的に放射能暴露された沿岸付近の植物や動物は、単にガンマ線を照射されたのではなく吸収したり粒子を取り込んだりした場合にはもう少し低い線量で影響が出るかもしれない。しかし科学者は、実験室ではそのような実験はできないので、どんな影響が出るかはわからないという。
IRSNの放射線生態学者や世界の研究者らは事態が落ち着いたら放射能がどのようにフードチェンを動いたかについての長期研究を始めるだろう。海洋生物が、崩壊速度より早く放射性物質を取り込めば生物濃縮がおこる。特に効率がよいのは褐藻類で、海藻はI-137を周囲の海水中濃度の10万倍にして組織に蓄積する。