食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

その他

  • 日焼けサロン業者の二枚舌

The indoor tanning industry's double game
Philippe Autier et al.
The Lancet Volume 377, Issue 9774, 16 April 2011-22 April 2011, Pages 1299-1301
日光や日焼けマシンからの紫外線への暴露増加により皮膚の色の薄い人達の間で皮膚の黒色腫が増加し続けている。2009年6月にIARCが全ての波長の紫外線と日焼け装置はヒトへの発がん性があると分類した。この分類に反応したヨーロッパの日焼け業者は不明瞭な主張に基づく防衛作戦を始めた。業界は日焼けマシンと皮膚がんにはいかなる関連もないと否定し、ビタミンD不足ががんや他の慢性疾患のリスクを増やすと主張することに相当の努力をしている。しかしながらビタミンDががんやその他の病気のリスクを減らすということを示した質の高い無作為試験はない。一方業界は日焼けサロンによりよいガイドラインを提供することに協力し規制を変更しようとする公的機関をまどわそうという戦略をとっている。日焼け業者が広めている情報は一般的に、規制に従った日焼けサロンは安全だと主張している。これに対するDG SANCOの対応は理解しがたいものである。ヨーロッパの対応が緩いのに対して米国では厳しい。FTCは業者が広げている情報は消費者を欺くものであると非難して公式に訴えた。FDAも日焼けサロンのハザードについて独自の情報を提供し、10代への日焼けサロン禁止や課税強化などの対応を強く薦めている。他の国でも日焼けサロンは取り締まられており、ブラジルは2009年に全国で日焼けサロンを禁止にした。
欧州委員会は日焼けサロンが安全だという主張を支持するのかしないのか明確にすべきである。さらに日焼けサロンの服務規程には業界に関係のない科学者の関与が必要である。
(同じ遺伝毒性陽性のradiationなのに「ホーシャノー」とは全く違う認識をされているあたりが面白いというか。)

  • エネルギー飲料をアルコールと混合するとアルコール単独よりリスクが高いかもしれない

Drinking energy beverages mixed with alcohol may be riskier than drinking alcohol alone
15-Apr-2011
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2011-04/ace-deb040911.php
実験室で、アルコールだけとアルコールにエネルギードリンクを混ぜたものを飲んだ場合の認知機能と自身の酔いが覚めたという感じなどを比較した。エネルギードリンクはアルコールによる刺激された感じを促進するがアルコールによる行動不全レベルには影響しない。結果的に衝動コントロール能力不全と刺激増強の組み合わせで混合使用はリスクが高い可能性がある。Alcoholism: Clinical & Experimental Researchの2011年7月号に発表される。

Natureニュース
Natural gas greenhouse emissions study draws fire
Published online 15 April 2011
Richard Lovett
http://www.nature.com/news/2011/110415/full/news.2011.242.html
ガス業者は頁岩に由来する天然ガスが石炭より気候に悪影響を与えるという主張を却下
天然ガス(メタン)の方が石炭よりエネルギーあたりの二酸化炭素排出量が少ないと一般的に考えられているが、コーネル大学の研究者らがClimate Changeに発表する論文ではメタン抽出の際に大気中に直接放出されるメタンの分を加えると石炭より悪いとしている。天然ガス業者はこの論文を反天然ガス活動家によるバイアスのある信頼性に欠けるものだと非難している。タイムスケールを20年としたことが最大の問題。
しかしこの論文に欠陥があるかどうかはともかく、大切なのは燃料の生産と使用における特定部分だけの比較ではなく、ライフサイクルでの評価である。
(フードマイレージだってリサイクルだって一部だけ見て良い悪い言うのはおかしいんだけど)

  • 日本は福島原子力労働者の幹細胞を保存すべきか?

ScienceInsider
Should Japan Bank Stem Cells From Fukushima Nuclear Workers?
15 April 2011
http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2011/04/should-japan-bank-stem-cells.html?ref=hp
Lancetに発表された日本のがん研究所のTetsuya Tanimotoらの主張をめぐる賛否両論。
もしも骨髄移植が必要な場合には自己血の方が良いとしても、それが有効なのは大体5-10グレイの放射線暴露を受けた場合のみで、それ以上なら死亡するしそれ以下なら他の治療法がある。しかもこれは全身照射の場合にのみ当てはまる話で、身体の一部が遮蔽されていて骨髄が生き残っているのであればそこから減った細胞は補充される。現在福島で働いている労働者の暴露量は管理されている。幹細胞保存が必要になる状況があるとすれば、高線量領域に派遣しなければならない限られた一部の労働者だろう、とDuke 大学の骨髄移植専門家Nelson Chaoは述べている。Lancetのレターについては多くのメールが飛び交っており、RITNなどが反応するだろう。