食品安全情報blog過去記事

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EurekAlert(http://www.eurekalert.org)より

  • 高齢のがん生存者が相当増加するだろう

Older cancer survivor population to increase substantially
6-Oct-2011
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2011-10/aafc-ocs100311.php
Cancer Epidemiology, Biomarkers & Preventionに発表されたNCIのJulia Rowland博士らによる報告。がん生存者統計のデータを解析した。1971年にがん対策法が署名されたとき、がん生存者はおよそ300万人だったが2008年には1200万人になった。2008年のがん生存者の60%は少なくとも65才で、NCIの予想では2020年までにはその割合は63%になるだろう。
がん生存者のうち最もよくみられるがんは女性の乳がん(22%)、前立腺がん(20%)、大腸がん(9%)である。診断数が多いのに生存者の割合が少ないのは肺がん(3%)である。

  • 食習慣の心臓部

The Guts of Dietary Habits
Uri Gophna
Science 7 October 2011: Vol. 334 no. 6052 pp. 45-46
腸内に有用微生物を導入することで健康を増進するという考え方に基づく数百万ドルの産業が存在する。大腸に存在する何兆もの共生体は我々の代謝や免疫に深く関わっている。炎症性腸疾患や大腸がん、過敏性腸症候群、非アルコール性脂肪肝などの疾患で細菌集団の異常が報告されている。個人においては腸内細菌コミュニティ組成は一般的に安定である。これまでの腸内細菌叢の研究では栄養への大きな影響が強調されていて今週号のWuらの論文ではさらにどのような要因が腸内細菌叢に影響しているのかを検討している。
個人により、たとえ一卵性双生児であっても、腸内細菌の組成は大きく異なるため、細菌叢の研究から臨床的に意味のある一般化を引き出すのは難しい。細菌の解析では全てのヒトを3つの異なる属の細菌(Bacteroides、Prevotella、Ruminococcus)の優勢により大きく三つの「腸型enterotypes」に分類できるのではないかということが示されている。驚くべきことはこの腸型が性やBMIのみならず長期食習慣が大きく異なるにも関わらず国籍にも依存しないことである。
Wuらは98人の詳細な栄養解析と細菌叢解析により、微生物の量に影響する栄養素を探した。高脂肪と低繊維摂取が特定の細菌集団と関連することを発見した。興味深いことには腸型は長期の食生活に影響されるようにみえる:Bacteroides型は動物タンパク質と飽和脂肪に、Prevotella型は炭水化物が多く肉や乳製品の摂取が少ない主に植物から栄養をとることに関連した。この知見は以前のブルキナファソとイタリアの子どもたちの比較と一致する。Ruminococcus型は最も多いと報告されていたがBacteroides型と分離が難しい。
WuらはさらにBacteroides型の10人に対して10日間の介入試験を行った。マウスの実験で見られたのと同様、最初の24時間で変化は検出できたが安定なPrevotellaへの変化は見られなかった。従って腸型を変化させるには、抗生物質投与などがない場合には長期の食習慣介入を必要とするようだ。たとえある種の疾患リスクと腸型の関連が示されたとしても、腸型を変えることが本当に望ましいのだろうか?細菌叢と疾患の因果関係を明らかにするのは困難で、さらに健康によいとされる細菌の影響は特定の腸型と関連づけられてはいない。従って腸型は研究の枠組みとしては有用であるがそれを知ることが臨床上意味があるかどうかは不明である。
Wuらはさらに赤ワインやアスパルテームなどが腸内細菌に影響するが腸型には関連がないことを示した。人工甘味料が細菌コミュニティに影響するというのは驚きである。さらなる研究が必要であるが、過敏性腸症候群などの腸疾患患者にとって重要かもしれない。そのようなヒトは下痢などの症状を減らすための自分の食事基準を実践していることがあり、甘味料も考慮対象にすることができるかもしれない。
Wuらの研究にはさらなる追試が必要で、我々はまだ研究の入り口に立ったばかりである。
Gary D. Wu et al.,
Science 7 October 2011: Vol. 334 no. 6052 pp. 105-108
Linking Long-Term Dietary Patterns with Gut Microbial Enterotypes