食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

食品中のアクリルアミド

Acrylamide in Food
31.10.2011
http://www.bfr.bund.de/cm/349/acrylamide-in-food.pdf
6月のドイツ語版の要約のみ英語版
アクリルアミドはフレンチフライやポテトチップ、堅いパンなどのデンプンを含む食品を焼いたりローストしたりあげたりして焦げ色が付くまで加工することにより生じる。食品中に高濃度のアクリルアミドが検出されたのは2002年が最初である。アクリルアミドは動物実験で遺伝毒性発がん物質であることがわかっていたため、この知見は科学コミュニティーに特別な懸念を引き起こした。その後アクリルアミドとその代謝物であるグリシダミドについてはたくさんの科学研究が行われた。しかしながら今日に至るまでアクリルアミドのヒト健康影響は完全にはわかっていない。この背景のもと、BfRは現在の研究状況を要約し、多数の疫学研究を含むヒト研究や動物実験を評価した。さらに現在の食品中含量と摂取量データから暴露量を推定した。
ヒトや動物での研究は、遺伝子を変化させる作用や発がん性の他に生体内での運命について特に研究されている。ラットやマウスでの長期試験ではアクリルアミドに発がん性があることは確実である。遺伝毒性も発がん影響もみられない閾値を議論した文献もあるが、入手できる実験から閾値は導出できない。BfRの意見としては低用量での影響についての知見は不十分である。アクリルアミドの分子レベルでの影響やホルモン作用の可能性については追加の研究が必要である。
BfRは各種のがんについてアクリルアミドの摂取量との関連を調べた13の疫学研究を評価した。これらの研究結果は矛盾している。一部の研究ではアクリルアミドの摂取量が多いこととがんリスクが増加することが関連し、別の研究ではそのような関連は見られない。従ってアクリルアミドの摂取量と発がんの関連はあるともないとも言えない。がんになるリスクが現実に存在するとしても現在の摂取量では証明が困難である可能性もある。
BfRは食品中アクリルアミドと食品摂取量についてのドイツとヨーロッパのデータをもとに各種の消費者のアクリルアミド摂取量推定を比較した。さらに食品や摂取量データから推定するより血中や尿中のバイオマーカを調べる方が良いかもしれないことを示唆した。
がんリスクをより詳細に記述するためにBfRはモデル計算を行った。これらの計算はEFSAの推奨する暴露マージン概念に基づく。この概念は動物実験で有害影響が示された用量から導き出された用量とアクリルアミド摂取量の違いを示す。モデル計算の結果、アクリルアミド含量の高い食品をたくさん食べる消費者や子どものマージンは小さく、従って健康リスクとなることを明らかにした。BfRの見解としては、加工食品のアクリルアミド含量を減らす努力は継続されるべきである。アクリルアミド含量は焦げ色が多いほど多いので、消費者やレストランは「焦がさないで黄金色に焼く」という規則を守るべきである。包装にある調理方法は常に考慮すべきである。

ドイツ語版フルバージョン
http://www.bfr.bund.de/cm/343/acrylamid-in-lebensmitteln.pdf