食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

2011年11月23日の概要

SCFCAH - Toxicological Safety of Food Chain
Summary record of 23 November 2011
http://ec.europa.eu/food/committees/regulatory/scfcah/toxic/sum_23112011_en.pdf
1. 残留農薬年次報告書のプレゼン
2. 福島原子力発電所の事故
→事態と分析結果についての意見交換
 EU加盟国の当局が日本から輸入された飼料や食品について行った検査の結果と日本が行った検査の結果が報告された。
日本はI-131、Cs-134、Cs-137の存在について58000の検査を行っている。福島、埼玉、茨城、栃木、神奈川、千葉、宮城、東京、群馬、静岡(全てEUの制限が適用されている)で生産された食品や飼料で900件ちょっとの規制値超過が見られた。EUの制限対象地域に含まれていない岩手、秋田、山形県で生産された牛にも汚染が発見されているが、日本からEUへの牛の輸出は動物の健康と公衆衛生上の理由で禁止されているので問題ではない。
加盟国による輸入時の検査では既に1337件の日本産食品や飼料と358件の太平洋地域産水産物が採取されているが、ほとんどの分析結果は検出限界以下で、ごく僅かから極めて低レベルの放射能が検出されているだけである。静岡産の緑茶15件から相当量ではあるが2件を除き基準値未満のレベルが検出されている。この2件は静岡への制限がかかっていない時期のものである。
→太平洋地域由来の水産物放射能監視についての議論
2011年10月3日の専門家委員会の会合結果を報告された。この会合ではしばらく予防的措置をとり続けるものの、検査対象にするのはマグロやカジキのような回遊性の遠洋魚のみにすべきであると結論した。さらにこれまでのところこれらの回遊魚からは太平洋地域のどこでも汚染が見つかっていないことから、監視対象にするのはFAO漁業水域61に限定できることを確信させる。
専門家委員会の結論に従ってモニタリングに関する助言を変更することに合意した。

3. アクティブ&インテリジェント包装材について
4. アルミニウム含有食品添加物の使用条件についての指令改定について意見交換
2008年にEFSAが子どもでTDIを超過しているという意見を発表したことで改訂が検討されていた。遅れた理由は企業側から全てのアルミ化合物が生物学的に利用されるわけではないというデータが提出されて評価していたためで、最近EFSAは全てのアルミ化合物について同じであると結論した。提案されている改定案は、これまで最大使用基準が設定されていなかったもの(色素レーキ)については最大使用量を設定し、ケイ酸カルシウムアルミニウムやベントナイト、カオリンについては認可されている食品添加物リストから削除することなどである。他にスポンジケーキのリン酸ナトリウムアルミニウムを制限しスコーンへの使用は禁止するなどがある。企業が新しい基準に従うための適切な移行期間を設定する。

5.福島原子力発電所事故後の日本産食品や飼料の輸入条件に関する規制について意見交換
改定案について
・2012年3月31日まで3ヶ月延長
・制限対象地域から長野を削除し、100%の検査は必要ない
・I-131の検査はもう必要ない。半減期が短く環境中への新たな放出はないため。
・産地証明書発行促進
次回は輸入時の検査の頻度を下げることについて検討する。
5. EU指令のスロベニア語バージョンが正しく翻訳されていない件について
6. 一部の食品のカドミウム規制値改訂について
EFSAが新しい包括的食品摂取量データベースを用いてカドミウムの暴露評価を精細化した。詳細結果は2012年1月に報告される予定。この精細化評価にもとづき、各種食品の新しい/改訂最大レベルについて関係者から意見を受け取った。検討しているのはチョコレート/ココア製品、油糧種子、ジャガイモ、デュラム小麦、ミルクである。
チョコレート/ココアについてはカカオ含量によって異なる最大量の設定、ミルクについては特別に低い値を設定することが提案されている。具体的濃度については専門家委員会によより決定される。ココアパウダーやココア飲料については暴露データを検討する時間が欲しいという意見が一部の国から出された。また第三国からもさらなるデータが提出されるだろう。ピーナッツについては暴露量が多いため最大量の設定が提案され、松の実については摂取量が少ないため削除された。
ジャガイモは全年齢層での暴露量への寄与率が高いため、最大量を下げるのがふさわしい。特に地理的条件からアイルランドのジャガイモでカドミウム濃度が高いことが問題になる。アイルランドについては国内流通用に除外規定を検討する選択肢もある。アイルランドからは国民の尿中カドミウムについての研究結果をEFSAに提出しており、検討結果を待ちたいとの申し出があった。
デュラム小麦については二段階で最終的に0.15 mg/kgに引き下げる方法が検討された。コメを生産しているイタリアからは白米と玄米で違う値を使うことと提案されている濃度が受け容れ可能であることが確認された。ミルクについては再度検討する。
7.その他 グリル香料

  • 文中の10月3日専門家委員会の会合

海事フォーラム:福島の海洋環境リスク評価のためのEU-日本会合の結果
Outcome of EU-Japan meeting to assess risk to marine environment from Fukushima
https://webgate.ec.europa.eu/maritimeforum/content/2348
EU市場に到達する汚染シーフードのリスク評価と、EUの海洋科学者が壊滅的事態に見舞われた日本の同僚に対してどう援助できるかを決めるために会合をもった。
日本のAEAはCs-137が8.5ペタベクレル(PBq)、Cs-134が10 PBq直接海洋に放出されたと推定し、フランスの放射線防護安全機関はCs-137だけで26PBqと推定している。しかし海流により希釈されて急激に放射活性が低下するためこの程度の不確実性は沿岸水のリスク分析にしか影響しない。
いくつかの機関が多数の測定を行っておりその結果が報告された。
Pavel Povinecが歴史的視点から測定値を見て、福島に由来するのは太平洋の水の放射能のうち約10%と述べた。バックグラウンドのほとんどは1960年代の核実験による。チェルノブイリのフォールアウトも観察されるが同程度ではない。バックグラウンドの分布は一様ではなく、水柱の上部に多く南半球より北半球でやや多い。
海洋生物の汚染
日本の基準(Cs137で500 Bq/kg、I131で2000 Bq/kg)は国際標準の範囲内である。2011年9月26日までの測定では、規制値えお超過したのは海水魚で1370件中61、無脊椎動物で336件中12、海草55件中8、加工シーフードは22件中ゼロ、淡水魚は411件中41、海獣は27件中ゼロである。検査は強化されていて規制値超過件体の割合は減少している。
EUの輸入規制で検査された日本産水産物には10 Bq/kg以上のものはなかった。EUの規制値は日本と同じである。また太平洋の水産物の無作為抽出でこれまで216件を検査しているが10 Bq/kg以上の放射性セシウムを含むものはなかった。
リスク
太平洋の魚を食べるヒトのリスクはゼロである。規制値を僅かに超えるマグロの缶詰を1つ食べることによる健康リスクはタバコ1本を吸うのと同じ程度である。
ただし消費者の信頼を維持する必要がある。
福島沿岸地域で餌を食べていて日本の経済水域外で捕獲された魚に汚染の可能性はあるもののそれでもリスクは小さい。海の魚は放射性核種を蓄積せず、浸透圧で平衡状態になるまで排出する。従って汚染地域を出れば汚染は減少する。文献による半減期58日を用いて、最も泳ぐ速度の早い魚が日本から米国に到達すると汚染濃度は半分である。その真ん中(ハワイ)で捕獲されると最初の汚染濃度の70%である。これまで規制値の4倍を超える魚は発見されておらず、4ヶ月以上前に汚染地域を離れた魚にリスクはない。
従って注意深い対応を続けるとしてもEUのモニタリングは緩和されるべきであろう。