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「オーガニック」食品はより健康的か?−専門家の反応

SMC
Is ‘organic’ food healthier? – experts respond
September 4th, 2012.
http://www.sciencemediacentre.co.nz/2012/09/04/is-organic-food-healthier-experts-respond/
数百の試験の解析による新しい研究は、有機栽培した食品のほうが慣行栽培より栄養価が高いという主張に疑問を投げかける
Annals of Internal Medicineに発表された研究は、オーガニック食品と普通の食品を比較した既存の研究データの最も包括的なメタ解析である。研究者らはオーガニック食品と普通の食品を比較した237の別々の研究を解析した。その結果オーガニック食品の方が栄養価が高い、あるいはオーガニック食品を食べることは農薬暴露リスクを減らすことはできるものの健康リスクが低いというしっかりした根拠は見つけられなかった。
この知見の消費者にとっての意味は、研究者が言うにはその目的は人々を教育することで、オーガニック食品の購入をやめるように勧めることではない。「健康影響以外の点ではオーガニックを購入する他の理由がある」と筆頭著者のスタンフォード大学Dena Bravataは言う。オーガニックを選ぶ理由は嗜好や慣行栽培の環境影響への懸念や動物の福祉などがあるだろう。
英国SMCが以下の専門家のコメントを集めた。
ロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院栄養公衆衛生介入研究ユニット上級講師Alan Dangour教授
Smith-Spangler論文は、1966年以降に発表されたオーガニック食品と普通の食品の栄養や健康に関連する質を比較した報告の、注意深く詳細なレビューである。我々が2009年に行ったレビュー(添付)と同様、有機栽培と慣行栽培に栄養上の重要な違いはないことを再確認した。さらにSmith-Spangler論文では我々が2010年に行ったレビュー(添付)同様、健康上のメリットについても慣行栽培より良いという根拠は見つからなかった。Smith-Spangler論文では残留農薬と細菌含量についてもレビューすることで我々の論文を拡大し、いくつかの興味深い知見を得ている。
しかしながら論文全体にわたって著者らは根拠が弱ばらつきが大きいことを明確にしている。つまりオーガニック食品の方が優れていることを支持するデータから一貫したシグナルがない。一般的にこの分野の研究の質を高める必要がある。
消費者はいろいろな理由でオーガニック食品を選ぶが、最新のレビューでは現時点では栄養や健康上の差があるというしっかりした根拠はない。願わくば、この根拠が消費者にとって有用であるといいんだが。

オーストラリアSMCから
オーガニック食品の健康影響について博士研究をしているLiza Oates
オーガニック食品の健康上のメリットと見なされているのは多くの場合栄養価が高いということよりリスクを避けたいということである。オーガニック食品を購入している消費者は、農薬や抗生物質など、食品に入っているものより入っていないもののほうに興味がある。ほとんどは環境や社会的利益もオーガニックを買う理由だという。このレビューはオーガニック食品の方が残留農薬抗生物質耐性細菌が少ないことを確認した。栄養価が高いという根拠がなかったのは比較的予想通りである。食品の栄養量に影響する要因はたくさんあり、栽培方法などのような一つだけの影響を示すのは無理がある。オーガニック食品を食べると残留農薬は減る。これが多くの消費者がオーガニック食品を買う理由である。


Are Organic Foods Safer or Healthier Than Conventional Alternatives?: A Systematic Review
Crystal Smith-Spangler et al.,
Ann Intern Med. 4 September 2012;157(5):348-366
http://annals.org/article.aspx?articleid=1355685