食品安全情報blog過去記事

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ORAC: 誇大評価された抗酸化宣伝

Wellness Letter
ORAC: Over-Rated Antioxidant Claims
October 2012
http://www.wellnessletter.com/ucberkeley/feature/orac-over-rated-antioxidant-claims/
25年前、「抗酸化物質」という単語は一般の人々には目新しかった。今日それはビッグビジネスになり、抗酸化に関連する宣伝をしている製品の販売は2011年米国で650億ドルにも上る。ダイエタリーサプリメントの宣伝だけではなく、ジュースやシリアルやお茶やチョコレート、さらにはボトル入りの水にまで抗酸化の宣伝文句を見つけることができるだろう。「抗酸化物質」−細胞に傷害を与えるフリーラジカルを取り除くのに役立つ物質−は健康増進や病気予防と同義語になった。
企業にとってより最近の流行は特定の抗酸化物質の量や「スコア」を宣伝したり、他の製品と比較したりすることである。たとえばSilver Palateの新しいシリアルは100gあたり7,300 ORACユニットであると自慢し、Mystic Harvestのパープルコーントルティーヤチップスは6000 ORACユニットと表示している。ORACは酸素ラジカル吸収能oxygen radical absorbance capacityの意味で、科学者が開発した抗酸化状態を測定するためのいくつかの指標のうちの一つである。オートミールやヨーグルトにバオバブの実の粉末を加えるとORACは1gあたり1400となる。Green Cell Technologiesの茶抽出物は100gあたり170万のORACスコアを持つ。
これらの数字の意味を説明するのは難しい。しかし多分数が大きいことが健康に良いという意味ではない。抗酸化物質の意味についての科学は包装が伝える単純な数よりはるかに複雑である。FDAはリプトンやその他の企業に対して抗酸化物質について誤解を招く違法な宣伝をしないよう警告文書を送付した。しかし他に同類のものが網を逃れている。
表示で主張されているのとは違って、抗酸化状態を測定する標準法は存在しないし抗酸化能力についての公式な定義もない。科学者が開発したいろいろな試験法にはORACの他にTEAC、TOSC、FRAP、TRAPなどがある。これらは必ずしも同じものを測定していないし一致した結果も出さない。同じ検査を行っていても実験室が違うと違う結果になる。一部の企業はORACを表示しているがどうやって測定したかについては記していない。
さらにORACやその他の検査値は試験管内のみでの結果である。人体での作用は異なるだろう。
CFIAはウェブサイトで「ORACとヒト健康影響の関連についてはわかっていないので、食品にORACについて宣伝したりすることは認められない」と注記している。同様の懸念からUSDAは最近ORACデータベースをウェブから除去し、「ORACは食品やサプリメント企業によって製品の宣伝のために常に誤用されてきた」と言っている。専門家の中には食品や飲料表示へのこのような用語の使用はすべて禁止すべきだと考えている人もいる。
抗酸化宣伝を無視すべきさらなる理由
・抗酸化の数値の意味がわからない。たとえばORAC 3700は多いのか少ないのか2900は2400よりいいのか誰が知っているのか?
・抗酸化宣伝をしていない製品でも同じくらいであろう
・しばしば宣伝は添加した抗酸化ビタミンなどのせいである
・他の食品との比較は誤解を招くものが多い
・特定の一つの抗酸化物質だけ比べるのは誤解を招く。
基本は抗酸化を謳う宣伝は購入の才の参考にしないこと。抗酸化サプリメントは必要ない場合が多いし、摂りすぎは有害であるかもしれない。色とりどりの野菜や果物を摂るのがよい。米国食事ガイドラインに従えばたくさんの抗酸化物質を摂れるだろう。