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ミツバチの健康:農薬とその他の要因の相互作用

News in brief
Bee health: the interaction between pesticides and other factors
14 September 2012
http://www.efsa.europa.eu/en/press/news/120914.htm?utm_source=newsletter&utm_medium=email&utm_content=hl&utm_campaign=20120918&emt=1
農薬暴露はミツバチの疾患や寄生虫からの攻撃への感受性を高くするか?EFSAは農薬やその他の要因が、あるとすればどのようにミツバチの健康に悪影響を与えるのかについての現在の知見の概要を発表した。

  • ミツバチへの影響における農薬とその他の要因の相互作用

Interaction between pesticides and other factors in effects on bees
Published: 14 September 2012
http://www.efsa.europa.eu/en/supporting/pub/340e.htm
1. ミツバチは管理された作物と野生の植物の両方にとって重要な授粉媒介者である。農地の利用状況の変化が、たとえば花粉の栄養価がミツバチの生理に影響するので、報告されている授粉媒介者の減少に重要な役割を果たしていると考えられている。しかし寄生虫や疾患が残った集団にさらなる圧力となっているようだ。このレビューは科学文献や研究報告書やその他の文書を検索して最新の知見を検討した。ミツバチに与える農薬と他の要因の相互作用に関する概要を提供するために、以下のことを検討した。
・ミツバチの農薬暴露量全体との関連における異なる暴露経路の重要性
・ミツバチへの投薬も含めた複数暴露や相加・相乗作用の可能性
・疾患とミツバチの農薬感受性との関連
2.データベースを検索し、明確に関係のないものや重複を除くと、ミツバチの妥当な暴露経路データを含む148文献、ミツバチのもの84と他の昆虫19に関連する混合物についての103文献、ミツバチのもの71件・マルハナバチ7件他の昆虫34件を含む疾患と農薬の相互作用についての112文献が同定された。
3.直接過剰噴霧されたミツバチ・花粉や蜜・貯蔵花粉と蜜に対して単位用量あたりの残留(RUD)を同定した。これは異なる年齢のミツバチの暴露経路の相対的重要性を決めるためにミツバチの摂取量と組み合わせる。その結果、散布の場合でも土壌や種子の処理でも蜜を集めるハチが最も高濃度暴露されること、次いで卵の世話をしているハチであることが示された。どちらの場合も主な暴露源は汚染された蜜で、直接のスプレーも重要な寄与となる。
4.しかしながら現在データが不十分で定量化されていない他の経路もたくさんある。
・処理された種子を蒔くときのダスト、散布されたばかりの作物との接触、吸入、蜜蝋、プロポリス、水など
5.マルハナバチの働き蜂や幼虫についても同様の評価を行った。しかし採集者の摂取量は報告されておらずミツバチよりデータが少ないため予想は信頼性が低い。
6.単独行動するハチやミツバチ族以外の種の暴露を評価するためのデータは不十分である。
7.ミツバチや他のハチは多数の経路で農薬混合物に暴露されている可能性がある。
8.ミツバチや蜂蜜、花粉、蝋から複数の農薬が検出されているが研究者の興味のある化合物に限られ個々の化合物濃度がほとんど報告されていない。現実的な濃度や組み合わせを知るにはさらなるデータが必要である。
9.相乗効果が否定できるほとんどの混合物については相加毒性アプローチが適切である。
10.農薬とミツバチの相互作用についての研究は多いが多くはEBI防カビ剤に関するものでP450の阻害に関連する。相乗作用のスケールは急性暴露では用量や季節依存性があるが現実的暴露量での暴露の間の時期や慢性暴露に関するデータはほとんどない。
11.多くの研究が組み合わせによる接触毒性に集中している。しかし暴露においては重要なのは汚染された蜜経由であることがわかっている。他の昆虫でP450を誘導する農薬はミツバチの酵素を誘導しないようであるが、蜂蜜やプロポリスに存在する天然化合物であるケルセチンなどはP450を誘導し一部の農薬の毒性を軽減する。外来異物の代謝における中腸の役割を考えると、混合物の経口暴露によるデータがないことは大きなギャップである。
12.EBI防カビ剤とネオニコチノイドピレスロイド殺虫剤との相乗作用が報告されているが、一部は暴露評価で評価されたものより貼るかに高い濃度であり、現実的な低濃度ではデータは限られる。
13.実験室ではEBI防カビ剤と殺ダニ剤(フルメトリンとフルバリネート)、およびクマホスとフルバリネートでより大きな相乗作用が観察されている。殺ダニ剤の残留期間が長いことなどからこれらと農薬の複合影響のさらなる評価が必要である。
14.用量依存性の相乗影響についてはトキシコキネティクス/トキシコダイナミクスおよびQSARアプローチが適用できるかもしれないが取り込み率に影響する製剤の違いも考慮する必要がある。
15.さらに新しいデータでは巣に使われる抗生物質が膜結合輸送タンパク質を介して有機リン、ピレスロイドネオニコチノイドへの感受性を高める可能性が示されておりさらなる研究が必要である。従って養蜂に使われるすべての処置を報告することが重要である。
16.すべての研究で相互作用は2剤のものであるが暴露データからは長期にわたって複数の成分に暴露されていることが示されている。複数農薬への長期低濃度暴露の影響を知るためのデータが必要である。
17.農薬とハチの相互作用についてはミツバチでのみ報告されている。
18.Nosemaやウイルスに感染したミツバチは農薬への感受性が高いことを示唆する研究が少数ある。報告されている毒性の増加は3倍以内であるが研究数は少なく感染率は高い。
19.ハチのN.ceranae芽胞数が事前に慢性農薬暴露のあるハチで増えるかもしれないというデータもあるが同時に農薬暴露で減るというデータもある。しかし芽胞数はハチのN.ceranae感染の信頼できる指標ではない。病原体の評価方法を改善する必要がある。
20.ハチの免疫能に影響する要因は餌となる花粉の質や他の病原体の存在や巣の処置など幅広く、さらにコロニーや個体を閉じこめることはストレスとなって免疫抑制につながる可能性がある。農薬の影響を研究する際にはこれらの要因を考慮することが重要である。
21.免疫能力と異物代謝酵素の両方にとって食事の影響は重要で農薬毒性や疾患感受性への影響は大きい。農薬の致死的ではない影響に対して病原体も影響する。従って現実的な経路で(すなわち汚染花粉や蜜の経口暴露)、試験に用いたハチの疾患状況を完全に理解した上で研究することが重要である。
22.現時点では野外試験によるコロニーへの農薬暴露が疾患への感受性を高くする、あるいはモニタリング研究による疾患によるコロニー消失と残留農薬が関連するという明確な根拠はない。