食品安全情報blog過去記事

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GMトウモロコシがラットで腫瘍を作ったという報告への専門家の反応

Expert reaction to GM maize causing tumours in rats
19 September 2012
http://www.sciencemediacentre.org/pages/press_releases/12-09-19_gm_maize_rats_tumours.htm
Rothamsted Research研究所長Maurice Moloney教授
この論文はIF約3のピアレビューのある雑誌に発表されてはいるが、通常ピアレビューで修正されるべき異常なことが論文全体にわたって存在する。Fig.1には対照群のデータが無く分散も表示されていない。表2では処置群と対照群の比較に使った数が違う。さらに表2の数値は有意差の根拠となる信頼区間が示されていない。写真は極めて印象的だが対照群がない。SDラットはしばしば対照群で乳腺腫瘍を発症する。レフェリーが指摘すべきであった。

Cambridge大学一般のリスク理解に関するWinton Professor David Spiegelhalter教授
私の見解では、方法、統計、報告が期待される研究の基準より遙かに低い。正直に言ってこれが受理されたことが驚きである。
すべての比較は「無処置」対照群に対してなされているが、それはたった10匹でそのほとんどが腫瘍を発生している。表面的に投与群より良さそうに見えても適切な統計解析が行われていない。このような結果は再現されなければ受け入れられない。

John Innes Centre上席科学者Wendy Harwood博士
フルデータが提供されていないが、この知見は遺伝子組換え技術そのものが健康や環境には影響ないという知見とは矛盾しない。この量のトウモロコシがネズミの餌として普通なのかどうかを考えなければならない。
1群10匹というのは数が少ない。全データがないのでこの結果は解釈できない。
他の科学者からのさらなる指摘
・論文に「すべてのデータは示さない、最も関連があると思ったものだけ示した」と書いてある
・サンプルサイズが小さい
・トウモロコシは最低でも11%入っていてバランスはとっていない
・トウモロコシなしの対照群がない
GMでないトウモロコシの結果がない
・これまで20年近くGM大豆を含む餌を家畜に与えているが問題は報告されていない
・同じ雑誌にGMトウモロコシを食べたラットに有害影響はなかったという論文が発表されている(ただし90日試験)
・統計的有意対相対頻度
・何故これほど長く飼育したのか−英国では人道的に認められない
・表から有意差は認められない

Edinburgh大学細胞生物学教授Anthony Trewavas教授
対照群の設定が不適切で何もいえない。正直に言ってこの系統の腫瘍を発生しやすいネズミにとってただの自然の変動の範囲内。

Cambridge大学Ottoline Leyser教授
ほとんどのGM議論同様、この仕事もGMにはほとんど関係ない。彼らが除草剤ラウンドアップの影響だと言っている。

King’s College LondonのTom Sanders教授
大抵の動物実験は2年で終わらせる。餌の摂取量や成長データがない。この系統のラットは乳腺腫瘍を生じやすい。餌の組成データがない。たとえばトウモロコシミールには貯蔵中にカビ毒が生じやすい。統計方法が普通でない。多重比較が補正されていない。

Adelaide大学Mark Tester教授
最初に私の頭をよぎったのは何故これほど長くたくさん食品として食べてきたのに疫学研究では何も見つからないのだろうということである。さらにもしこれほど大きな影響があるのなら、なぜこれまでの100以上の著名な科学者による研究で何も見つかっていないのだろう?

Imperial College London生化学薬学Alan Boobis教授
いくつかの影響は意味を評価するのが難しいやり方で報告されている。たとえば乳腺腫瘍は未処置群にもよく見られる。