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Caen大学の研究は遺伝子組換えNK603トウモロコシの再評価の理由にならず、グリホサートの認可更新にも影響しない

A study of the University of Caen neither constitutes a reason for a re-evaluation of genetically modified NK603 maize nor does it affect the renewal of the glyphosate approval
01.10.2012
http://www.bfr.bund.de/en/press_information/2012/29/a_study_of_the_university_of_caen_neither_constitutes_a_reason_for_a_re_evaluation_of_genetically_modified_nk603_maize_nor_does_it_affect_the_renewal_of_the_glyphosate_approval-131739.html
BfRはSéralini ら(2012)の発表を科学的に評価した。
遺伝子組換えNK603を生涯にわたって食べさせたラットは通常のトウモロコシを食べさせた動物より寿命が短いという著者らの結論は実験によって十分裏付けられていない。これがBfRの行ったSéralini らの"Food and Chemical Toxicology"に発表された研究の評価の結論である。
この研究は研究デザインと集めたデータの提示の両方に欠陥がある。これは著者らが下した結論が提示されたデータからは導き出せないことを意味する。NK603トウモロコシに加えて著者らはグリホサート含有農薬ラウンドアップが重大な健康問題と早期死亡の原因であると結論しているが、それはこの報告からは十分立証されていない。著者らの結論とは異なり、グリホサートの多数の長期試験では発がん性や死亡率の増加やホルモン系への影響は示されていない。しかしBfRはある種の製剤に同時に使われている物質がグリホサート含有農薬の毒性に影響する可能性については承知している。
2012年9月半ばにフランスCaen大学のGilles-Eric SéraliniらのチームがラットにNK603トウモロコシを食べさせた長期試験の結果を発表した。トウモロコシの一部はラウンドアップ処理されていたが、別のものは処理されていない。どちらも用量は3種類で、さらに通常のトウモロコシを与えた動物に飲料水でラウンドアップを3用量与えている。対照群は遺伝子組換えでないトウモロコシを与えられた。
BfRはこの研究の、遺伝子組換えトウモロコシとグリホサートの健康リスク評価における妥当性を評価した。発表された論文からは著者の主な結論は実験結果からは裏付けられていない。さらに実験デザインとデータの提示と結果の解釈に欠陥があり、著者らの主な結論はデータにより支持されてない。
さらにグリホサート含有農薬ラウンドアップを使った実験では投与されたグリホサートの用量が測定されていない、なども。

評価書

  • Séraliniら (2012)が発表した、ラットでの遺伝子組換えNK603トウモロコシとグリホサート含有製剤(ラウンドアップ)の混餌投与試験

Feeding study in rats with genetically modified NK603 maize and with a glyphosate containing formulation (Roundup) published by Séralini et al. (2012)
BfR-Opinion 037/2012 of 1 October 2012
http://www.bfr.bund.de/cm/349/feeding-study-in-rats-with-genetically-modified-nk603-maize-and-with-a-glyphosate-containing-formulation-roundup-published-bei-seralini-et-al-2012.pdf
(実験方法から実験データ、著者の仮説まで(引用文献が不適切というのもある)たくさんの指摘。用量相関がないのは内分泌攪乱物質による低用量影響である、なんて言う主張は、低用量影響をまじめに証明しようとしている人でも驚くのでは。)