食品安全情報blog過去記事

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プラスチック食器からのメラミンの溶出−専門家の反応

Melamine leaching from plastic tableware – experts respond
January 22nd, 2013.
http://www.sciencemediacentre.co.nz/2013/01/22/melamine-leaching-from-plastic-tableware-experts-respond/
新しい研究によると、メラミン含有プラスチック食器は熱い食品を入れるとメラミンが少し溶出する可能性がある。しかしながら独立した専門家はそのような少量で健康への影響があるかどうか疑わしいとしている。
JAMA Internal Medicineに発表された新しい研究では、台湾の研究者らがメラミンまたは陶器の丼で熱い麺を食べた人の尿中メラミン濃度を測定した。その結果、メラミン容器で食べると陶器の場合より尿中メラミン排出量が多かった。メラミンの健康リスクは2008年の汚染ミルクスキャンダルで注目され、高用量で腎障害と関連する。著者らは高温の食品をいれるとメラミンが多く溶出する可能性があるとしながらもそれが人体にどう影響するかは述べていない。またブランドによりメラミンの放出量は異なるため一つのブランドの結果は他のブランドには当てはまらないかもしれないとしている。
この研究と一緒に発表された毒性学者Pertti J. Hakkinenのコメントでは読者にこの研究の解釈についての概要を説明している。
オーストラリアSMCが以下のコメントを集めた。
アデレード大学医学部上級講師Ian Musgrave博士
メラミンはペットフードとミルクの汚染で有名になったが健康被害を引き起こした濃度は極めて高い。Wuらの論文はメラミン暴露源の可能性を示した。90℃以上の熱いスープはメラミン食器からメラミンを溶出させ、人体はそれを吸収して排出する。彼らはメラミンの排出が極めて早いことを示唆し、さらに総排出量からはメラミンの暴露量が最も厳しい暴露規制値の600分の1であることも示した。これは最もメラミン溶出量の多い食器の場合であっても、である。この研究はメラミン溶出量の高い場合でも暴露量は健康への影響は極めて少ないだろうことを示唆する。しかしながらメラミン食器の溶出は検査して溶出が少ないもののみ販売を認めるべきである。さらに極めて熱いっしょくひんを長時間メラミン食器に入れておくのは避けるのが賢明であろう。
英国SMC
ロンドンQueen Mary大学病理名誉教授Sir Colin Berry
この研究は良くデザインされていて、予想通りメラミンの排出量は極めてわずかであることを示している。著者が指摘しているように健康影響についてはわからないが濃度は低いため毒性影響はないだろう。私の意見ではこの研究の臨床上の意味はない。
Imperial College London生化学薬理学Alan Boobis教授
メラミンはよく調べられている化合物である。主な毒性は腎臓で、影響は用量に依存する。尿中で結晶を作るのに十分な濃度以下では有害影響はない。従って微量のメラミンには有害影響はない。EFSAやWHOは食事から毎日0.2 mg/kg体重の暴露では有害影響はないだろうとしている。EFSAは多数のメラミン食器の使用シナリオを評価し、TDIを超えることはないだろうとしている。それがWuらの研究で確認された。
ロンドン大学毒性学名誉教授Tony Dayan
台湾の研究は台湾では結石が多いのでそれが食事からのメラミン摂取と関連するかどうかの懸念から行われた。500mLの熱いスープをメラミンボウルから食べた場合の尿中排出は最大8.35 microg/dayで陶器の場合は1.31 microg/dayであった。

A Crossover Study of Noodle Soup Consumption in Melamine Bowls and Total Melamine Excretion in Urine
Chia-Fang Wu et al.,
http://archinte.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=1558449#qundefined