食品安全情報blog過去記事

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その他ニュース

とんでもない真実
The big fat truth
Natureニュース
Virginia Hughes  22 May 2013
http://www.nature.com/news/the-big-fat-truth-1.13039
過体重が必ずしも寿命を短くしないという研究が増えている−しかし一部の公衆衛生研究者はそれについては話したくない
(抜粋)
2月20日の午前、ボストンのハーバード大学公衆衛生学部の講堂には200人以上が集まっていた。このイベントの目的は体重と死亡に関する新しい研究がいかに間違っているかを説明することであった。1月2日にJAMAに、288万人を含む97の研究のメタ解析が国立健康統計センターの疫学者Katherine Flegalらによって発表された。国際基準によって「過体重」とされる人々のほうが「正常」体重の人より死亡率が6%少なかったというものである。この結果は、たとえわずかであっても体重を増やさないようにという何十年も言われてきた助言に反するように見え、ほとんどの主要メディアで報道され、一部の公衆衛生専門家の激しい反発を招いた。ハーバード大学の栄養と疫学の研究者Walter Willettは「この研究はがらくたの積み重ねでこんなものを読んで時間を無駄にすべきではない」とラジオインタビューで語った。Willettはその後Flegalの研究の批判者を集めたハーバードシンポジウムを開催した。WillettはFlegalの報告は間違っていて多くの人を惑わせているので深く吟味する必要があると考えた、と述べている。
しかし多くの研究者はFlegalの報告を肥満パラドックスとして知られる現象の最新事例の一つと受け止めている。過体重は糖尿病や心疾患、がん、その他の慢性疾患のリスクを上げる。しかし一部の人にとって−特に中年以降や持病のある人−少し体重が増えることはそれほど有害ではなくむしろ良いことかもしれない(太りすぎは肥満と分類されて常に健康に悪い)。
このパラドックスは公衆衛生コミュニティに議論を巻き起こした。原因の一部は疫学が複雑で交絡を排除するのが難しいことがある。しかし最も議論の種になっているのは科学そのものではなくそれをどう語るかについてである。Willettを含む公衆衛生の専門家は、何十年も体重が多いことのリスクを強調し続けてきた。Flegalのような研究は一般の人々や医師を混乱させ、肥満を減らすための政策を鈍らせる可能性があるため危険だという。この報告で肥満カウンセリングをしないという医師がでてきた。さらに悪いことは、ソフトドリンク企業や食品企業がこの知見をロビー活動に利用する可能性がある。
しかし多くの科学者は、わかりやすいメッセージを出すためにデータを隠したり無視したりするという考え方は良くないと言っている。特にこの知見は何度も再現されている。一つの研究だけでは必ずしも事実とは言えないが、大量の研究が一貫して同じ結果になっている、とワシントン大学の医師で肥満の専門家であるSamuel Kleinは言う。「我々は真実に向かってデータに従う必要がある」
曲線を描く
多すぎる体重が死亡を早めるという考え方は米国の保険研究から始まる。1960年に26の生命保険会社のデータに基づく厚い報告書で、米国人の平均体重より数kg軽い人の死亡率が最小でそれ以上だと死亡率が体重に比例して増加する。これによりMetropolitan Life Insurance Companyが「望ましい体重」表を更新して医師などが広く使うようになった基準を作成した。1980年代初め国立老化研究所の所長だったReubin Andresがこのドグマに異議を唱えた。データを再解析して、身長で補正した体重と死亡率の関係はU字型であると報告した。そしてその曲線の底は年齢による。MetLifeの推奨する体重は中年には適切であるが50代以上だと「過体重」のほうが良い。これが肥満パラドックスの最初である。
Andresの考えは医学コミュニティの主流派からは却下された。例えば1987年のJAMAの論文では喫煙と病気による交絡であると主張している。喫煙者は痩せていることが多く、非喫煙者より早く死ぬこと、慢性疾患を持っている人は体重が減っていること、により痩せていることがリスクであるように見える、と。MansonとWillettは1995年の報告でこの考えを支持した。115000人の女性看護師の健康研究で、喫煙者と最初の4年に死亡した人を除外するとBMIと死亡率が直線的に関連し最も死亡率が低いのはBMI 19以下であるとした。
同時期に世界で肥満が問題になっていた。1980年代から肥満と過体重は急激に増加し、1997年にはWHOが肥満について初めての会合を行い、肥満基準を導入した。
統計のせめぎあい
Flegalも警鐘を鳴らした一人である。NHANESのデータを用いて米国の肥満や過体重が増えていることを示してきた。しかし2005年にFlegal はNHANESのデータがAndresのU字曲線を確認していることを発見した。正常体重より過体重の人の方が死亡率が低く、そのパターンは非喫煙者でも同様だった。
Flegal の研究は広く報道された。彼女がCDCの研究者でこの報告が体重が増えてもいいように受け止められるから。Willettらはこれを批判した。こうした学術界の騒動でFlegalの研究はネガティブに報道された。その後数年間で他の研究者らが同じような傾向を発見しFlegalがメタ解析を行った。
多くの肥満の専門家はWillettによるFlegal批判の激しさに異議を唱えている。どちらの研究にも利点はあり、肥満パラドックスが存在することを支持する研究は十分ある。彼らは肥満パラドックの理由を説明しようとしている。一つの考え方として重い病気を持っている人は過体重の場合死亡率が低いのは、病気と闘うためのエネルギーの蓄えがあるためだと言われている。
(日本はWHOと違う肥満の定義を使うからさらにややこしいので。)

  • 理想の「スーパー小麦」はどんなもの?

Sense about science
What would your ideal ‘super wheat’ be?
Wednesday 22nd May
http://www.senseaboutscience.org/pages/what-would-your-super-wheat-look-like.html
ライブオンラインQ & Aの記録
強い、収量が多い、早く育つ、栄養価が高い、グルテンを含まない、麦わらが動物の餌として質がよい、GIが低い、他の作物も一緒に育てられる、などあったらいいなという意見にどうすればできそうかを答えている

  • Jamie Oliverのイタリアンレストランチェーンがセリアック病患者に小麦のパスタを提供して17000ポンドの支払いを求められる

Jamie Oliver's Italian restaurant chain is hit with a £17,000 legal bill after serving wheat pasta to a coeliac in a 'terrible mix-up'
16 May 2013
http://www.dailymail.co.uk/news/article-2325603/Jamie-Olivers-Italian-restaurant-chain-hit-17-000-legal-serving-wheat-pasta-coeliac-terrible-mix-up.html
結婚記念日に夫と食事をして激しい症状を発症したKristy Richardson 38才の裁判。2011年11月17日に、グルテンフリーでないと食べられないことを三回も確認して、店側もグルテンフリーの料理を提供できると請け合ったにもかかわらず小麦を含む料理を提供したことが食品安全法違反であると判断された。
(添加物が悪いとか食品の安全にとって重要でないことを宣伝して人気者になっている料理人と、ファッションとしてグルテンフリーを要求する人たちのおかげで本当に必要なことがわかりにくくなっている状況。)

  • 西オーストラリアの店が塩と苛性ソーダを間違えた

WA chicken shop mistook caustic soda for salt
May 23 2013
http://www.theaustralian.com.au/news/nation/wa-chicken-shop-mistook-caustic-soda-for-salt/story-e6frg6nf-1226649277063
治療が必要な11人中5人が10才未満の子ども
ファストフード店Chicken Treatで。苛性ソーダは洗剤または排水管の洗浄に使われている。警察が調査中。

  • Cellが画期的幹細胞論文を調査する

ScienceInsider
Cell Investigating Breakthrough Stem Cell Paper
by Jennifer Couzin-Frankel on 22 May 2013,
http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2013/05/cell-investigating-breakthrough-.html?ref=hp
韓国の科学者による詐欺疑惑から8年、Cellに先週発表されたShoukhrat Mitalipovらによるヒト胚性幹細胞の論文(筆頭著者Masahito Tachibana)に「画像再利用」の指摘がありCellの編集チームが評価している。