食品安全情報blog過去記事

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その他

  • 報告書は低塩食についての議論に再び火を付ける

Report Reignites Battle Over Low-Salt Diets
Science 24 May 2013: Vol. 340 no. 6135 p. 908
Kai Kupferschmidt
劇的に塩の摂取量を減らすのは健康によいのか?IOMが先週発表した報告書で激しい議論がおこっている。
米国の食事ガイドラインでは一般人に対してはナトリウムの摂取量を1日2300 mg以下(塩で約6g)にすること、心血管系疾患リスクのある人には1500mg以下を勧めている。心血管系疾患リスクのある人のなかにはアフリカ系アメリカ人、高血圧や腎疾患のあるヒト、そして50才以上の全てが含まれ、米国人の約半分が相当する。米国心臓協会はさらに厳しく、全てのヒトが低い方の値(1500mg以下)にすべきだと言っている。
しかしIOMの専門家委員会は2300 mgより少なくすることが心血管系疾患リスクを下げるという根拠がほとんど無いという。そして実際には有害である可能性もあるという。これに対してAHAは直ちに批判し、この報告書が公衆衛生にとって有害であると警告した。
塩に関する議論の両サイドの科学者は何百もの論文を引用することができる。多くの研究はナトリウムと血圧の関係を検討しているが、CDCはIOMに塩を減らすことが脳卒中や心臓発作のような「心血管系イベント」のリスクを減らすかどうかを検討するよう要請した。
報告ではアメリカ人の平均ナトリウム摂取量は1日3400mgで、これが多すぎることは確認した。これを2300mgまで減らすことが良いことについての根拠は明確である。問題はさらに低い摂取量について、である。
(日本人にとっては2300mgでも「厳しい減塩」だけどね)

Shark Mislabeling Threatens Biodiversity
Science 24 May 2013: Vol. 340 no. 6135 p. 923
Hugo Bornatowski et al.,
南アフリカでは鮫を「海の切り身ocean fillets」や「skomoro」と表示して販売するなど、サメ肉がそうと表示されずに多くの国で販売されている
(このレターは生物多様性を問題にしているが、水銀に関する助言に従うためにも正しく表示されていることが前提)

  • 幹細胞クローンを作った人が画期的論文の間違いを認める

Natureニュース
Stem-cell cloner acknowledges errors in groundbreaking paper
23 May 2013
David Cyranoski & Erika Check Hayden
http://www.nature.com/news/stem-cell-cloner-acknowledges-errors-in-groundbreaking-paper-1.13060
5月15日にCellにオンライン発表されたヒト幹細胞の論文について、チームを率いたShoukhrat Mitalipovが単純なミスがあったとNatureに語った。Mitalipovが筆頭著者のMasahito Tachibanaに尋ねたところ間違いを認めた。論文の投稿から受理までたった3日、発表までさらに12日しかなかった。
Cellも間違いについて声明を発表した

ScienceInsiderでも
Mislabeled Images Bedevil Landmark Cloning Paper
http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2013/05/mislabeled-images-bedevil-landma.html?ref=hp
ScienceからCellがどうしてそれほど発表を急ぐ必要があったのかについての質問をしたが答えはなかった。Mitalipov によるとTachibanaは落ち込んでいる。

  • 再現性:疑わしい仕事についての6つの赤信号

Reproducibility: Six red flags for suspect work
Nature Volume: 497, Pages: 433–434 Date published: (23 May 2013)
http://www.nature.com/nature/journal/v497/n7450/full/497433a.html
C. Glenn Begleyが見分け方を教える
数ヶ月前私はポスドク科学者から絶望的なメールを受け取った。私たちはトップジャーナルに発表された前臨床のがん研究のほとんどが、著者自身ですら再現できないことを報告したばかりだ。ポスドクは、時間の無駄だからどれがそうなのか教えてくれと言う。それは事実だが私には守秘義務があって特定の論文を示すことができない。
再現できる論文と再現できない論文を見分けるための6つのチェックポイントを示す。
(ライフサイエンス分野の論文の信頼性の低さはかなりのものなので、素人が見分けるのは難しい。)

Acai: The Ponzi Berry?
by Berkeley Wellness | May 23, 2013
http://www.berkeleywellness.com/supplements/herbal-supplements/article/acai-ponzi-berry
栄養やサプリメント市場の流行の種は尽きない。そのうち最も大規模なものの一つがアサイーベリーである。
アサイーはブラジル原産の椰子から収穫され、ブラジルでよく食べられていてアマゾンの部族で民間薬として使われていた。米国には2001年にアサイージュースが紹介されブラジルからの輸出が劇的に増加した。たくさんのアサイーを含む食品や飲料が販売されている。
ジュースや果肉、粉末、カプセルなどの様々な形態で、痩せる、シワをとる、体内から「毒素を排出する」、魔法の方法と宣伝されている。しばしばグルコサミンなどの他の成分と組み合わせることでその宣伝内容は指数関数的に増える。アサイーの宣伝をするメールは国中に溢れ、インターネットではOprahやDr. Ozのようなテレビタレント、テレビ「皮膚科医」Nicholas Perricone、テレビシェフRachael Ray、その他のセレブによる宣伝がたくさんある。さらにアサイーの製造業者が自分たちの製品の有効性と安全性を他の製品とは違うと主張している。
アサイーが販売されて以降、メリットがあるかもしれないという研究がわずかにあるがほとんどは試験管や動物での実験でヒトにはあてはまらない可能性がある。さらにわずかのヒト試験ではアサイープラセボを比べていない。アサイーに関するしっかりした根拠はない。
CSPIやBBBのような消費者団体はアサイーの販売業者を批判している。オンラインでの宣伝では普通「無料のお試し」を約束しているが、手数料と送料を要求し、そこで提供したクレジットカード番号が自動的に毎月引き落とされる契約になりキャンセルが難しい。
我々はアサイー製品を売っているどのような業者にもクレジット番号を教えないことを強く勧める。数百の苦情が寄せられているが返金されることはないだろう。
痩せたり健康のための魔法のベリーは存在しない。アサイーベリーは他のベリー同様食べ物としては良いが、サプリメントに支払う理由はない。

  • 根拠のないワクチン怖がらせの後遺症

NYT
Aftermath of an Unfounded Vaccine Scare
By THE EDITORIAL BOARD Published: May 22, 2013
http://www.nytimes.com/2013/05/23/opinion/the-aftermath-of-measles-vaccine-scare-in-britain.html?_r=1&
英国で深刻なはしかの流行がおこっているが、これは10年ほど前に子ども達がワクチンを接種しなかった結果であるように見える。ワクチンを接種しなかった主要因はMMR自閉症の原因であるという根拠のない、Andrew Wakefieldが引き起こした恐怖である。