食品安全情報blog過去記事

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Carmanらによるブタ混餌投与試験について

Response to a feeding study in pigs by Carman et al
July 2013
http://www.foodstandards.gov.au/consumer/gmfood/Pages/Response-to-Dr-Carman's-study.aspx
2013年6月にJudy Carman博士らがJournal of Organic Systemsにブタの混餌投与研究を発表した。ブタにGMトウモロコシとGM大豆の混合物あるいは同等の非GM餌を約23週間与えた。GM食はオーストラリアとニュージーランド(及び他の国々)で食品としての使用が認められているもの由来だった。
FSANZの反応−重要な点
・著者らは胃炎が存在するというしっかりした根拠を提供していない。提示された胃のデータは著者らの解釈と結論を以下の理由で支持しない
−「炎症」の存在を見た目が赤いというだけで決定していて顕微鏡での組織学的確認を行っていない。組織の色はいろいろな理由で変わりうるのでそれだけに頼った診断は信頼できない。
−もしGM食で炎症が誘発されるなら、GMを与えたブタで炎症がある動物の総数が増えるはずである。しかしながらデータでは炎症のある動物は非GM群の方が多い。
−著者らの炎症データの統計解析は間違っていて、別のより適切な方法を用いると有意差が無い
・著者らは子宮重量がGM食で有意に増加したということを証明していない
子宮重量データと子宮内液体の存在の妥当性は、そのブタの卵巣活動と子宮内膜の組織学的検査による根拠無しには判断できない。子宮の重量や水分は若い雌ブタでは性的発育段階や生殖サイクルにより大きく変動する。
・実験デザインや報告の仕方にたくさんの欠陥がある。詳細コメントは別添。これだけでもこの研究の結論の価値を無くす。
・全体として、提示されたデータはGM食の有害影響を確認するものではなく、FSANZがこれまで認可したGMトウモロコシや大豆の安全性に関する結論を変える根拠とはならない。

  • 詳細コメント

Detailed comment on Carman et al (2013): study design and conduct
http://www.foodstandards.gov.au/consumer/gmfood/Pages/Detailed-commentary-.aspx
餌のトリコテセンマイコトキシンを調べていない、非GM餌の組成が不明、動物の死亡率があまりにも高く飼育条件の悪さを示唆する、炎症を主張しながらリンパ節を見ていない白血球を含む血液検査もしていない、など14項目