食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

食品と接触する物質

Materials in Contact with Foods
A/2013, 03.07.2013
Background paper for journalists
http://www.bfr.bund.de/en/presseinformation/2013/A/materials_in_contact_with_foods-187404.html
もしも食品が、我々消費者が予想も期待もしない物質を含むなら、世論はすみやかに燃え上がる―オリーブオイルやバジルペーストの中に可塑剤、セラミック釉薬から重金属、飲料から印刷インク原材料など、これらはほんの数例である。消費者はそれを不祥事だとみなし、製造業者はその原因を探し、政治家は可能な限り早くその状況を収拾するために信頼できる情報を調査する。2~3週間後、その興奮は収まり、すぐにだれも背景で何が起こったのか気にもしなくなる。これは、しかしながら、個々の物質や可能なリスク、重大性、最新のニュースかどうかにかかわりなく、さらに詳しく調べる価値がある食品と接触する物体や物質についてのたくさんの基本的な情報がある。

食品は、多くの異なる理由で、多くは機能に関連して、いくつかの物質と接触する。結果的に多くの食品は製造や加工過程で特殊な機械や調理道具と接し、あるいは特定の容器で輸送されたり保管されたりする。販売されている食品のかなり多くの割合で、小売人に配達される遅くとも直前には食品と接触する物質は重要になる。ゴミや細菌に対する保護として―そして新鮮な製品の保存可能期間を引き延ばすために―多くの食品は棚の上に並べられる前にうまく梱包される。包装は又、場合によっては光や空気から中身を守り、情報を伝えたり販売を促進したりする役割を果たす。
使用法が異なれば、食品と接する物質も異なる。プラスチックから紙、段ボール、ゴム、セロファンで作られた生分解性フィルムまである。
「プラスチックやその他の高分子重合体の健康評価についての勧告」は1958年に遡ってドイツで発表されている。連邦衛生局が始め、ドイツ連邦消費者健康保護・獣医学研究所(BgVV)が1994年に引き継いだことが、今はドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)に引き継がれている。BfRはドイツ食品および飼料法に基づく勧告(LFGB)を作成し、それは「BfRの食品と接触する物質についての勧告(先のプラスチック勧告)」というデータベースの中にある。このデータベースの中で、BfRは製造業者や一般の人に勧告をホームページで見られるようにしている。

食品と接する物質が満たさなければならない条件とは?
アルミホイル、サンドイッチの袋、飲料容器、充填ホース、調理用具の付着防止コーティング―これらはすべて食品に接する物質であり、厳格な法規制対象である。規制枠組みであるEC規制No1935/2004は、2004年10月27日に欧州議会欧州理事会によって承認されたものだが、食品と接触するすべての物質に適用される。
規制の条項3は「一般要求条項」である。それに含まれる最も重要な規定は、物質と物体は、通常の予測できる状態で、物質の構成要素が消費者の健康を危険にさらさないような量だけ食品に移行されるような方法で製造されるべきであるということである。

もし物質から食品に成分が移行したらどうなるか?
食品と接触する物質は、可能な限りどんな成分も食品に溶け出さないような方法で作られるべきである。それにもかかわらず移行したなら、食品に溶け出した量がEU規制1935/2004条項3で以下に定めているような低濃度でなければならない。
・ヒト健康に危害を与えない
・その食品の組成に容認できない変化をもたらさない
・食品の香りや味を損なわない
欧州食品安全機関(EFSA)が、食品と接触するプラスチック材料に関するEU規制10/2011のポジティブリストに新しい物質を収載するための申請を評価する場合にも同じことが求められている。一般的な規則は次のとおりである:有害物質が食品に溶け出す量が多いほど、評価のために示さなければならないデータの質が高くなければならない。つまり最大50ppbまでの極微量の移行についての健康評価には変異原性についての基礎試験だけでいい。他方、食品中により高濃度が移行する物質については長期影響などのようなより広範な毒性試験が要求される。
これに加えて、プラスチックから食品への移行については、移行限度と呼ばれる物質特有の規制値がある。あるいは移行限度が検証できないような物質については、量的制限がある。このようにして予防的に措置として食品への移行は制限、あるいは排除される。

包装物質がどんな健康リスクも引き起こさないことをどうやって保証するのか?
連邦のモニタリング当局は、食品に移行する可能性のある物質について定期的に食品を検査している。健康に関連のある化学物質を標的に検査される。たとえばゴムべらやメラミン樹脂製皿の芳香族第一アミンやホルムアルデヒド、蓋のパッキンや飲料ホースのソフトポリ塩化ビニル中可塑剤、ナプキンとキッチンペーパーの湿潤強度増強剤など。
望ましくない物質が移行したときの最初の兆候は、味とにおいの変化についての官能検査でわかる。その検査をするために、味のない単純な組成の試験食品を問題の物質と接触させる。たとえば、プラスチック飲料容器なら、水が試験食品として使用される。化学および物理化学的分析が官能検査をサポートする。
これに加えて、モニタリング当局は食品と接触する物質の正確な表示と使用目的との適合性をチェックしている。梱包フィルムやバッグなど、食品と接触するものでありながら明確にわからない物は、EU規制1935/2004条項15に従って「食品接触用」と記されなければならない。規制の添付書類に示されているコップやフォークの記号のような、記号の使用は可能である。

包装物質を評価する際に、極端な使用条件は考慮されるのか?
食品と接触する物質は、その使用条件で最悪の状態で評価されるべきである。例として、調理器具のコーティングに関しては、可能な限り高温で使うことを考慮する。多様な物理化学的性質を持つ食品は食品包装にとって特に重要で、ほ乳瓶に使用される物質の評価は電子レンジでの加熱も考慮する。

BfRは食品と接触する物質の安全性を保障するために何をしているのか?
BfRは食品と接触する物質に由来する健康リスクについての科学的意見を作成している。これはたとえば、サーベイランス当局による検査結果から再評価や改定を求めたり、公開議論において中立で客観的な推定が求められたりした場合に必要になる。このような場合には、健康リスクは問題になっている物質の毒性のデータと、消費者の推定摂取量をもとに評価される。小さな子供たちのような特定集団については特別配慮することもある。必要ならば、評価は汚染物質そのものについてだけでなく、ヒト代謝または食品中での変化も考慮すべきである。
BfRは食品と接触する物質についての助言も用意している。このために、BfRのホームページに無料でアクセスでき定期的に更新されるデータベースを維持している。BfRの助言はそれぞれの事例において最新の科学的技術的知識を反映している。つまり強制的な基準ではなくとも、それらは食品と接触する物質がEU規制1935/2004条項3の法規定を満たすかどうかの指針となる。さらに、BfRの職員は食品と接触する物質を欧州レベルで評価しているEFSAの専門委員会の一員でもある。

食品と接触する物質は特別な認可を必要とするか?
食品と接触する物質の特別な認可方法があるわけではない。しかしすべての物質と成分は食品と接触するなら、EU規制1935/2004の前述の条項に従わなければならない。ここでは製造業者が責任を持つ。直接強制的な欧州法であるEU規制No10/2011は2011年から発効している。それは食品と接触する物質の製造に使われる可能性のあるモノマーと添加物の、法的拘束力のあるポジティブリストを含む。このリストに含まれる前に、物質は食品への移行の可能性と毒性について調べられなければならない。テストの結果の一つから、食品への移行限界が定められる。このようにしてリストに挙げられた物質には毒性データがあるので食品に移行した場合の健康リスクが簡単にできる。ただしこのリストはプラスチックと再生セルロースに限られる。再生セルロースは、お菓子、チーズ、スライスした冷製の調理済み肉を包むのにつかわれるセロファンという名でよく知られる透明な包装フィルムである。

申請のどの分野がさらに改善されるべきか?
1000以上の物質が食品包装の印刷に使用されている。それらのほとんどについて健康影響についての知識はあっても非常に少ない。この種の物質が包装から食品に移行した場合、意味のあるリスク評価ができないので、健康上の問題を引き起こしかねない。飲料内の印刷インク化合物ITXについての議論は、しかしながら、今まで規制されていなかった物質の基本的な問題とはみなされなかった。毒性がより不明な他の物質で代用することはリスク評価の観点からは解決策にならない。

なぜ可塑剤は包装材の成分としてまだ認められているのか?
可塑剤はプラスチックに柔軟性を持たせるものである。これはプラスチックを包装材として面白いものにもしており、使用目的によっては不可欠である。同じような機能をもつさまざまな化合物が「可塑剤」とよばれている。単に物質として、可塑剤に違いはあり、毒性も異なる。可塑剤として使用される数多くの物質のリスク評価が懸念される場合、個別物質を調べる必要がある。ある物質が広く使用されている場合には、評価はできる限りの広範囲の全ての暴露源を考慮しなければならない。
なぜ可塑剤が包装物質に使用されるのかという質問に関しては、二つの基本的な面を考慮しなければならない。包装物質は埃、細菌、ほかの損害から効果的に食品を守る。蓋のパッキンのように、可塑剤の使用だけが保護特性を保証することができるので、使用する価値がある。他方、健康に有害な物質が食品に移行しうるのなら、それはより危険の少ない可塑剤に置き換えられるべきである。それ故に、生殖毒性のあるフタル酸塩DEHPとDBPは、EU規制10/2011により食品包装可塑剤としての使用が許可されていない。
可塑剤が消費者に有害影響があるなら、使用は問題とされるべきで、そのためEUはいくつかを禁止にしている。フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)(DEHP)を含むいくつかのフタル酸エステルEUでは化粧品には使用できない。玩具についても、0〜3歳の子供用には、健康に被害を及ぼす可能性のある可塑剤の使用は欧州レベルで禁止されている。2007年1月16日から、DEHPとフタル酸ジ-n-ブチルとフタル酸ブチルベンジルは、玩具と乳児用品に0.1%以上の濃度では使用が許可できない。この日から、ほかの可塑剤も、子供が口に入れる可能性のあるおもちゃと乳児用品では0.1%以上の濃度での使用が許可されていない。
これらの禁止により、どのような食品かに関係なく相当な流入経路がなくなったため摂取量評価に影響する。もう一つの望ましい効果は、問題が少ない可塑剤の開発である。

今後の展望
抗菌性のある表面コーティングされた消費者製品の増加とともに今や相当数のリスク評価が行われている。この種のコーティングは十分吟味されて医療用品として既に販売されているものの、冷蔵庫や食洗機のような大半の消費者製品については、効果や実際の使用条件での溶出について信頼できる情報はない。多くの場合、消費者にとっての追加の衛生効果も、期待できない。それどころか偽りの安心感で、家庭衛生の基本を無視しがちである。
将来重要性が増すと思われるもうひとつの分野は、アクティブインテリジェント包装材と呼ばれるものである。活性素材では物質は意図的に食品に移行する。適切に処理されたフィルムで覆うことで加熱殺菌食品の表面を保護する保存剤の様な物質を能動的に放出するような包装には、認可された食品添加物だけが使用されるべきである。食品を燻製されたものであるかのように見せかけるために色素を移行させる場合のような、食品の実際の状態をごまかすためのアクティブ包装によって消費者が迷わされることはあってはならない。
インテリジェント包装は、コールドチェーンが中断されたり販売期限を超えたりするかどうかなどの食品の安全性に関わることを消費者や販売業者に示すような物質と理解されている。

追加情報
www.bfr.bund.deのホームページで、BfRは「食品と接触する物質」という見出しの「製品の安全性」という欄で、他のたくさんの情報とともに包装材にかかわる話題やFAQを提供している。