食品安全情報blog過去記事

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肉のカルニチン:心臓のハザード?

Carnitine in Meat: A Heart Hazard?
by Berkeley Wellness | September 06, 2013
http://www.berkeleywellness.com/healthy-eating/food/article/carnitine-meat-heart-hazard
赤身肉の過剰摂取が冠動脈疾患リスクを上げることはよく知られていたが飽和脂肪が原因とみなされてきた。しかし最近クリーブランドクリニックなどの研究者らの研究が新聞の見出しになり、「これまで知られていなかった」赤身肉に含まれる原因物質として、L-カルニチンという栄養素が名指しされた。さらに眉を上げることにはL-カルニチンはエネルギードリンクや、健康的な加齢や減量、心臓にさえ良いと宣伝されている多くのダイエタリーサプリメントに含まれることである。
カルニチンと腸内細菌
問題はカルニチンそのものではなく、それが腸内の細菌と相互作用したときにおこることである。Nature Medeicineに発表されたこの研究は、マウスにL-カルニチンを与えた実験やヒトにステーキプラスカルニチンサプリメントを与えた一連の実験からなる。その結果腸内細菌がカルニチンをトリメチルアミン(TMA)と呼ばれる化合物に分解し、それが血流に入って肝臓でトリメチルアミンN-オキシド(TMAO)に変換される。TMAOは血管のプラーク形成増加と関連することが知られていたがこの新しい研究ではそれをマウスで確認した。抗生物質で腸内細菌を殺すとTMAOは検出されない。ベジタリアンカルニチンを摂ってもらうと雑食のヒトよりTMAOの生成量は少なく、腸内細菌が違うためと考えられた。
肉やシーフードや卵のカルニチン
この研究は基礎研究としては魅力的だが、まだ予備的なもので現実的な意味は明確ではない。従ってこれほどメディアが注目したのは驚きである。
我々は既に赤身肉は食べ過ぎない方がよいことを知っている。しかしカルニチンの量がどのくらいだと問題になるのだろうか?この実験で使われたカルニチンは特にマウスでは大量である。他の食品由来のカルニチンも問題なのだろうか?魚は?魚や甲殻類にはTMAOが含まれるがそれもいけないのか?しかし魚は冠動脈疾患リスクを下げることと明確に関連する。
卵はどうだろう?卵の黄身にはカルニチンと類似するコリンが多く含まれる。
カルニチン:心臓に良いのか悪いのか?
クリーブランドクリニックの研究が発表されて一週間後、Mayo Clinic Proceedingsの解析でサプリメントL-カルニチン狭心症や重症不整脈リスクを減らしたと結論した。筋肉にはカルニチンが多く含まれ、心臓発作の才にはカルニチンが枯渇しカルニチン不足は心肥大や不整脈を誘発しうる。
カルニチンは心臓にとって良いのか悪いのか?提案されているメカニズムは異なり、研究対象も違う。サプリメントと肉も幾分違うかもしれない。
基本は:冠動脈疾患には多くの要因が関与する。新しい研究は腸内細菌の複雑な役割を照らし出すものであるが、健康的な食生活の基本を変えるものではない。卵を恐れる必要はないし、赤身肉を減らすならそれはよいことだ。カルニチンサプリメントについては安全性と有効性が確立されない限り薦めない。

What is L-carnitine?
by Berkeley Wellness | September 06, 2013
http://www.berkeleywellness.com/supplements/other-supplements/article/what-l-carnitine
カルニチンラテン語で肉を意味する。赤身肉に多く、チキン、魚、乳製品には少ない。生物学的に活性があるのはL-カルニチンである。人体はアミノ酸(リジンとメチオニン)からカルニチンを作る。
カルニチンミトコンドリアで重要な役割を果たし、抗酸化物質としても働く。年をとるとカルニチンレベルがが低下しミトコンドリア機能は下がる。そのためカルニチンサプリメントが役立つのではと希望を託されている。カルニチンサプリメントは「健康的な加齢」のための製品や運動機能増強、筋肉増強、心疾患や糖尿病、認知症などの治療用に宣伝されているがほとんどはマーケティングのための誇大広告あるいは願望である。