食品安全情報blog過去記事

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その他

  • ホルモン撹乱物質が生き返る

Natureニュース
Hormone disruptors rise from the dead
Mark Peplow 26 September 2013
http://www.nature.com/news/hormone-disruptors-rise-from-the-dead-1.13831
分解された汚染物質が暗闇で再生し、環境リスク評価に疑問を投げかける
川や湖のホルモン撹乱物質はこれまで考えられていたより遙かに多いかもしれない。環境科学者が、これら化合物が日光で分解されても暗闇でゾンビのように復活することを発見した。アイオワ大学のDavid Cwiertnyらが酢酸トレンボロンについて研究し、17αトレンボロンが水溶液の中で明暗サイクルにより増減することを見いだした。

  • 更新:米国上院がヘリウムの物語を終わらせる

ScienceInsider
Updated: U.S. Senate Ends Helium Saga
26 September 2013
http://news.sciencemag.org/policy/2013/09/updated-u.s.-senate-ends-helium-saga
米国上院が米国政府にヘリウムの販売継続を認める規制を可決する予定。10月1日から販売が再開される見込み。この規制は上院と下院で何度もやりとりされてきた。多くの科学者はこれで一安心だが、問題はまだ残る:値段は高止まりするだろう。
残留農薬の検査を増やせという人たちは検査に必要なものの「自給率」知ってるかな)

  • エディトリアル:水銀と健康

Mercury and Health
Marcia McNutt
Science 27 September 2013: Vol. 341 no. 6153 p. 1430
10月に、水俣条約調印のために各国が日本に集まる。この条約はヒトや環境の水銀暴露を増やす活動をコントロールするものである。水銀はメチル水銀として生体に蓄積し、様々な有害影響をもつ。この条約の名前は水俣病にちなんでつけられた。水俣条約の批判者は、制限が十分でないと言う。例えば2010年の主な水銀排出源は金の採掘と石炭火力発電である。この条約ではそれらえお中止させたりはしない。強力な規制の阻害要因の一つは水銀の環境や健康への影響が、急性中毒以外よくわかっていないことである。極微量を長期食べ続けた場合の影響や安全な量はあるのかなどは今後の研究課題である。しかし世界的に石炭火力発電所の数が増える予定であり、水銀汚染の健康影響研究は優先順位が高い。
他ニュースフォーカスとパースペクティブ有り

金の暗黒面
Gold's Dark Side
Lizzie Wade
Science 27 September 2013: Vol. 341 no. 6153 pp. 1448-1449
小規模な金の採鉱が世界の水銀汚染の主要原因である

世界の変化と水銀
Global Change and Mercury
David P. Krabbenhoft, Elsie M. Sunderland
Science 27 September 2013: Vol. 341 no. 6153 pp. 1457-1458
水銀の地球規模でのサイクルに気候変動やヒトの活動などが影響する

水俣では、水銀はいまだに地域を分断している
In Minamata, Mercury Still Divides
Dennis Normile
Science 27 September 2013: Vol. 341 no. 6153 pp. 1446-1447
(一部抜粋)
世界最悪の水銀中毒事故の一つがおこって60年近くが経ったが、水銀の脅威のシンボルとなった日本の町はいまだ余波に苦闘している
水俣には公的及び「非公式」水俣病博物館があることに象徴されるように、コミュニティと科学者は今でもこの災難について分裂している。水俣病を研究する研究所も国によるものと大学のものと2つある。これら二つは表面上は対立していない。市民団体が運営している非公式水俣病博物館のKunio Endo館長は「我々は見解を異にするがそれは敵であることを意味しない」というが、スタイルや強調点の違いは明確である。
歴史的分断
水俣のコミュニティの分断は病気が発生する前から存在した。チッソがこの町に肥料工場を造ったのは1908年でその後いろいろな化合物を作るようになった。1932年にはアセトアルデヒドを合成し始めこの時に副生成物としてメチル水銀が生じた。チッソの繁栄はこの町の経済分岐でもあった。1950年代には住人の約半分が直接間接に生活をチッソに依存するようになっていた。残り半分は漁師や農民だった。最初に症状が出たのは水俣湾の漁村である。1956年に水俣病が確認されてから数年間チッソは情報開示を拒否し、他の原因説を推進した。住民はチッソを批判するものと擁護するものとに別れた。犠牲者やその家族は、最初病気の伝染を恐れて仲間はずれにされた。1959年にチッソは漁業業界と政府の圧力で排水処理システムを変更し(2011年の報告書によるとこれは意味がなかった)被害者に補償することに合意したが病気の原因については別の理論を推し続けた。その後9年間、国および地方政府とチッソ水俣病が終焉したとみなし工場はそのまま営業を続け、メチル水銀は蓄積し続けた。1968年にチッソアセトアルデヒドの生産を中止し水銀を使用しなくなった。その年遅く、政府は公式に水俣病が工場排水により汚染された魚を食べることによると認めた。しかしアウトブレイクは1960年に終わっていると主張し、1970年代初めまで魚に残存するメチル水銀については対策をせず1975年にようやく漁を禁止した(これは1997年に解除)。一方活動家たちは犠牲者の劇的写真を世界中に広め始めた。
誰が患者か?
医学的法的論争になったのは誰が患者なのか、である。45年の交渉、仲裁、判決、官僚の命令、閣議決定、法律などにより犠牲者の分類や補償額、医学的サポートなどが非常にばらばらである。
水俣で「沈黙の」犠牲者を同定するチームを率いているShigeru Takaoka医師は、高齢化により患者の数が増える可能性があるとしている。年をとってから症状が出たり悪化したりする可能性があるが大規模で系統的な研究はない。
日本政府は強力なロビー活動により水俣条約の命名に成功したが、この町の住人の90%は喜んでいない、とEndoは言う。

  • 多剤耐性Salmonella Typhimurium DT104の異なる宿主での区別可能な流行

Distinguishable Epidemics of Multidrug-Resistant Salmonella Typhimurium DT104 in Different Hosts
A. E. Mather et al.,
Science 27 September 2013: Vol. 341 no. 6153 pp. 1514-1517
http://www.sciencemag.org/content/341/6153/1514.abstract
多剤耐性菌のホールゲノム配列決定により、ヒトと動物で流行している耐性はそれぞれ異なることを示唆した
以下関連論文や記事の紹介

  • ハーバードの研究が食品の期限表示は誤解を招くものであることを発見

Harvard study finds food expiration labels are misleading
Sep 18, 2013
http://www.reuters.com/article/2013/09/18/us-usa-foodsafety-dates-idUSBRE98H15F20130918
ハーバード大学法学部とNRDCが水曜日に発表した研究によると、包装済み食品に表示されている日付(販売期限や賞味期限)は消費者を混乱させ、実際には悪くなっていないのに食品を捨てることにつながっていることを見いだした。この表示システムは食品の新鮮さを示すものだが、消費者はそれを安全性についてのものだと誤解しお金と食品を無駄にしている。著者らは販売期限表示は消費者に見えないようにすべきだと主張している。一方食品マーケティング研究所のスポークスマンは消費者の日付への理解を促進することには合意しつつも日付を隠すことには合意しないとしている。

  • 税金で作っている雑誌が統計の根拠が無くなったためBPAががんを誘発するという主張を後退させる

Forbes
Taxpayer-Funded Journal Walks Back BPA Cancer Claim After Statistical Meltdown
Trevor Butterworth, 9/26/2013
http://www.forbes.com/sites/trevorbutterworth/2013/09/26/taxpayer-funded-journal-walks-back-bpa-cancer-claim-after-statistical-meltdown/
EHPが、「ヒトにあてはまる」濃度のBPAがラットに乳がんを誘発するという論文を掲載し、その統計データは明らかにBPAには何の影響もないことを示しているとForbesが指摘した(http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20130802#p9の件)。するとタイトルや本文が変わった。
タイトルは「ビスフェノールAはラット発がん物質として作用する」だったのが「可能性がある」に、本文の「誘発する」が「誘発することが示唆される」に、「悪性乳腺種用につながる」が「関連する」などになった。それでも実際のデータからは言い過ぎである。関連は全くない。

  • Tescoがイチゴとトロピカルフレーバーのブドウを発表

Tesco unveils strawberry and tropical flavoured grapes
September 19th, 2013
http://www.fdin.org.uk/2013/09/tesco-unveils-strawberry-and-tropical-flavoured-grapes/
2011年から少量販売されていたが、アメリカでの反応がよいので栽培を増やす。ハイブリダイゼーションによるので「ナチュラル」に作られたと考えている。
ナチュラルの意味がわからない)

The guardian
Hornet attacks kill dozens in China
Thursday 26 September 2013
http://www.theguardian.com/world/2013/sep/26/hornet-attacks-kill-18-china
陝西地方でスズメバチが大発生し数百人が刺され28人が死亡したと報道されている。犠牲者は数百メートルつきまとわれて200回も刺されたという
2002年から2005年の間に715人が傷害を負い36人が死亡しているが今年は特に酷いという。Ankang市の消防署はこの夏300以上の巣を駆除したが気温が下がるまで問題は続くだろうと専門家は言っている。
(死因はアナフィラキシーではなくてハチ毒による腎障害とかのよう)

  • 米国の母親の母乳を与える期間へのベッド共有の影響

Influence of Bedsharing Activity on Breastfeeding Duration Among US Mothers
Yi Huang, PhD et al.,
JAMA Pediatr. Published online September 23, 2013. doi:10.1001/jamapediatrics.2013.2632
http://archpedi.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=1740763
一部の専門家団体は母乳を推進するために一緒のベッドに寝ることを薦め、一方他の団体は乳幼児突然死や窒息による死亡を減らすために一緒に寝てはいけないとしている。方針を決めるのには定量的なより良い理解が必要である。
結論として母乳を与える期間には一緒のベッドに寝ることも含め多くの要因が関連している(教育レベルの高さ、白人、過去に母乳だった、母乳を与えようと計画していた、出産後1年働いていない)。突然死のリスクを考えると、母乳の推進氏は多面的戦略が開発され調べられるべきである。
(母乳のメリットを大きく見積もりすぎなんじゃないだろうか)