食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

論文等

  • がん征服

Conquering cancer
The Lancet, Volume 382, Issue 9910, 21 December 2013–3 January 2014, Pages 2039
エディトリアル
先週発表された最新がん統計は心配なものである。IARCのGLOBOCAN 2012によると世界のがん負荷は2008年の1270万症例760万の死亡から2012年は1410万症例820万死亡に増加した。さらに2025年までに人口増加と高齢化により1930万症例に増加するだろうと予想している。全がん死の半分以上が資源の乏しい国でおこっている。
治療は進歩しているが、1971年にニクソン大統領が宣言したがんとの戦いに、勝ってはいない。どうすればいいか?今週Lancetがオンライン発表するがんとの戦い臨床シリーズの最初の論文でPaolo VineisとChristopher Wildは一次予防が大事だとしている。1/3から半分のがんが予防可能であるが健康増進宣伝は不十分で、都市計画や課税、禁止などの構造変化が必要である。しかしそのような介入は世界中でまばらであり政策決定者には対応するための理由が必要である。
一次予防は重要であるがそれだけでは十分ではない。予防か治療かという議論は、特に低所得国では避けるべきである。GLOBOCAN 2012では乳がん頻度は先進国で高いものの死亡率は診断の遅れと治療の不十分さで低所得国で比較的高い。
シリーズ2つめの論文ではDouglas Hanahanはがんの治療後に完全に病気が無くなるあるいは完治ということは希なのでがんとの戦争の比喩を考えなおし治療戦場計画の比喩を採用することを提案している。3つめの論文ではMichel Colemanががんの頻度や死亡率同様がん生存率データも必須だと指摘している。例えばThe Lancet Oncology に12月5日に発表されたEUROCARE研究では1999年と2007年のヨーロッパ29ヶ国の5年生存率が域内で大きく異なることを明らかにしている。特に東欧での予後の良いがんの生存率が他の国に比べて格差が大きい。
Global cancer patterns: causes and prevention
In Press, Corrected Proof, Available online 16 December 2013
Paolo Vineis, Christopher P Wild

Rethinking the war on cancer
In Press, Corrected Proof, Available online 16 December 2013
Douglas Hanahan
敵の能力を削ぎ、敵の攻撃に対処し各戦場の位置を統合して対策する(銀の弾丸一発で仕留めるというイメージから高度な戦略を駆使して戦いを生き延びるというイメージに変更しようと。この場合停戦や休戦もあり。)

Cancer survival: global surveillance will stimulate health policy and improve equity
In Press, Corrected Proof, Available online 16 December 2013
Michel P Coleman

(日本はタバコを途上国に売る重大な犯罪をやめるべきだし、治療できるがんを治療するなという本がベストセラーになっている現状は情けないとしか)

  • 母親の妊娠前後のピーナッツまたは木の実の摂取と子どものピーナッツまたは木の実アレルギーリスクについての前向き研究

Prospective Study of Peripregnancy Consumption of Peanuts or Tree Nuts by Mothers and the Risk of Peanut or Tree Nut Allergy in Their Offspring
A. Lindsay Frazier, et al.,
JAMA Pediatr. Published online December 23, 2013. doi:10.1001/jamapediatrics.2013.4139
http://archpedi.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=1793699
オープンアクセス
ナース健康研究IIの一部として行われた、1990年1月1日から1994年12月31日までに生まれた10907人からなるGrowing Up Today研究2。2006年に医師に食物アレルギーと診断されたのは8205人中308人。そのうち140人がピーナツまたは木の実アレルギー。
母親自身にピーナッツや木の実のアレルギーがない場合、妊娠前後にピーナッツや木の実をよく食べていたことと子どものピーナツまたは木の実アレルギーリスクの低さに関連がある。この結果は初期アレルゲン暴露が免疫寛容を増し食物アレルギーリスクを減らすという仮説を支持する。
(妊娠すると妙な「助言」に振り回されることが多いので大変だけどしっかり見極めないと・・極端な食事制限を薦めるようなものはそれだけでアウト判定でいい)

  • CANHEART健康指標:カナダ人の心臓の健康を監視する指標

The CANHEART health index: a tool for monitoring the cardiovascular health of the Canadian population
Laura C. Maclagan et al.,
CMAJ December 23, 2013 First published December 23, 2013
http://www.cmaj.ca/content/early/2013/12/23/cmaj.131358
2003-2011カナダ住民健康調査のデータを用いて20才以上のカナダ人の6つの心血管系健康指標(喫煙、運動、野菜果物摂取、肥満/過体重、糖尿病、高血圧)を数値化して理想的状態のヒトの割合の増減を調べた。喫煙は減ったが肥満は増えた。2009-2010で理想的だったのは9.4%。男女差が2倍。