食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

雑誌から

  • 生きることのストレス:現代の問題?

The stress of life: a modern complaint?
Mark Jackson (Exeter大学の医学史センター所属)
The Lancet, Volume 383, Issue 9914, 25–31 January 2014, Pages 300–301
技術の発達や社会の変化により人々はより大きなストレスにさらされるようになっている、という「信念」は昔からあるという解説。1860年代には多くの医師が蒸気発電と電報と女性がものを考えることになった「モダンライフ」のストレスで神経症が増えたと報告しT Clifford Allbuttは19世紀を「ストレスの世紀」と呼んだ。1970年代にAlvin Tofflerは戦後世代は短期間の著しい変化に適応できないため病気や犯罪が蔓延すると予想した。1980年代にHans Selyeが指摘したように、「ストレスの時代」を主張する時には過去の時代の病気や苦しみのことは無視している

  • 伝染性の犬の腫瘍がどうやって世界に広がったか

Natureニュース
How a contagious dog tumour went global
23 January 2014
http://www.nature.com/news/how-a-contagious-dog-tumour-went-global-1.14580
性感染する犬のがんは約200万の突然変異をもちまだ強くなりつつある
伝染性の犬のがんのゲノム配列から、このがんは約11000年前の古代のイヌに生じてコロンブスの時代に世界に広がったことが示唆された
Canine transmissible venereal tumour (CTVT)ゲノムは他の典型的がん(複数の遺伝子系統のがん細胞の混合物)と違ってほぼ全て同一の遺伝子をもつ。また普通のヒトのがん細胞の遺伝子変異は数千でタスマニアデビルの顔の腫瘍では2万程度の変異であるのに比べて190万という驚くべき数の変異をもつ。CTVT変異の約42%は紫外線暴露によると考えられ、それは感染するときあるいは性器から突き出たときに起こったと考えられる。

Scienceの特集
The Epigenetics Heretic
Science 24 January 2014:
Vol. 343 no. 6169 pp. 361-363
世代を超えたエピジェネティクスの伝達についてのMichael Skinnerを巡る話題。
Skinnerは化学物質がエピジェネティクスにより遺伝子の発現を変化させそれが多世代に遺伝するという主張でここ10年ほど一方から批判一方から賞賛を浴びている。
(メトキシクロールやビンクロゾリンの話。科学的には再現性がないこと、政治的には彼の実験室でデータの偽造による論文取り下げや組織改編などがあってもめている。特定の系統のネズミを使って注射でなければ再現できないと主張したり、von Saalのケースによく似ている。たまたま農薬がやり玉にあがっているので混乱するが、特定の生物現象があるかないかという話と、それが規制の根拠になるかどうかについては次元が違うので。)

NZ SMC
Vitamin D supplements ineffective
January 27th, 2014.
http://www.sciencemediacentre.co.nz/2014/01/27/vitamin-d-supplements-ineffective/
ニュージーランドヘラルドがビタミンDサプリメントの有効性について調べて概ね無効と結論したレビューについて報道した。
その研究はLancet Diabetes & Endocrinologyに先月発表されたもので、ビタミンD濃度の低さは健康状態が悪いことの原因ではなくむしろ結果であると結論している。
論文と新聞記事紹介