食品安全情報blog過去記事

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飽和脂肪についてのエディトリアルに対する専門家の反応

SMC UK
expert reaction to editorial on saturated fats
March 5, 2014
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-editorial-on-saturated-fats/
雑誌Open HeartのJames DiNicolantonio博士によるエディトリアルで飽和脂肪の少ない食事は心疾患を減らしたり長寿には役にたたないと主張
Surrey大学栄養代謝Bruce Griffin教授
DiNicolantonioによるレビューは、心血管系の健康に与える飽和脂肪と精製糖の相対的影響についての議論をさらにたきつける。栄養科学は複雑で不完全で、特定の食事成分がリスクが大きいとも小さいとも合理的に主張できる。飽和脂肪と総コレステロールの関連は間違っているという主張はナンセンスで50年の根拠に基づいた医学に矛盾する。間違っているのは著者の解釈である。心血管系疾患の原因はヒトにより異なり、食事の影響も異なる。砂糖と脂肪のどっちがわるいか、あるいは食事ガイドラインが間違っているかどうかはあまり重要ではない。
King’s College London医学部糖尿病栄養科学部門長Tom Sanders教授
心血管系疾患を予防するための食事ガイドラインは集団での血清LDLコレステロールと血圧を下げることが心血管系疾患リスクを下げるという前提に基づく。この記事は飽和脂肪とCVDの関係をけなし科学的根拠を間違って提示して砂糖を批判している。LDL濃度の増加がCVDの主要リスク要因であるかどうかについての妥当な懸念の範囲を逸脱している。糖尿病はCVDリスクを上げるが砂糖を食べると糖尿病になるわけではない。砂糖の摂りすぎは肥満に寄与するがそれはカロリーの摂りすぎによる。脂肪を忘れて砂糖について注意させるのは役にたたない。過去25年間で英国やその他西洋諸国で飽和脂肪の摂取量は大きく減って、今は11%以下というガイドラインに近づいている。一方糖由来エネルギーはあまり変わっていない。肥満や糖尿病は増えているにもかかわらずCVDは55%も減った。
Aberdeenの Robert Gordon大学栄養Brian Ratcliffe教授
このエディトリアルは「脂肪仮説」についての議論にさらに追加するものである。過去30年間、食事脂肪および飽和脂肪摂取量削減に関する食事助言を支持する強力な根拠は得られなかった。CVDと食事成分の関連は簡単に分離できない。「脂肪仮説」を支持した初期の仕事は比較的粗い。しかしDiNicolantonioも同じ罠にはまって、精製炭水化物の摂取が肥満の増加原因だと単純化しすぎている。最も最近のコクランレビューでは食事中の脂肪の質を改善することで心血管系イベントを14%減らせるとしている。
(欧米で「低脂肪」と言っているレベルは日本では「高脂肪」と呼ばれるレベルであることに注意)