食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

アスパルテームに関するFAQ

(http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20131217#p5の追加分)

FAQ on aspartame
http://www.efsa.europa.eu/en/faqs/faqaspartame.htm?utm_source=newsletter&utm_medium=email&utm_content=feature&utm_campaign=20131211

1.アスパルテームとは何か?
アスパルテームは砂糖のおよそ200倍甘い低カロリー人工甘味料である。

2.どの食品にアスパルテームが使われているのか?
アスパルテームは飲料、デザート、お菓子、チューインガム、ヨーグルト、低カロリー体重管理製品、卓上用甘味料のような多様な食品と飲料に甘味を加えるための食品添加物としての使用をEUに認可されている。消費者は製品に表示された成分表を見てアスパルテーム含有食品を確認できる。全ての食品添加物同様、アスパルテームは認可後「Eナンバー」を割り当てられている。食品に入っているかどうかは、名前(たとえば「アスパルテーム」)だけでなく、そのE951という番号でもわかる。

3.アスパルテームを含む製品を食べるのは安全か?
アスパルテームは徹底的な安全性評価のもと、世界の多くの国々で30年もの間食品や卓上用甘味料として使用が認可されている。欧州で実施された最初のアスパルテームの安全性評価は1984年に食品に関する科学委員会(SCF)が発表した。1988年、1997年、2002年にSCFはさらに追加の評価を行った。1984年にSCFはアスパルテームの一日摂取許容量(ADI)を体重あたり40 mg/kgとした。ADIは生涯にわたって明らかな健康リスクがなく毎日摂取できる、体重あたりの食品添加物の推定量である。
EFSAの食品添加物及び食品に添加される栄養源に関する科学パネル(ANS Panel)はアスパルテームの安全性について完全再評価を実施し、アスパルテームは現在の暴露量では安全性の懸念はもたらさないと結論している。パネルはSCFが設定したアスパルテームのADIは一般の人々(乳児、子供、妊婦を含む)にとって安全であり、アスパルテームの消費者暴露量はADI以下であるとみなした。これはPKU患者には適用できない―Question 4参照。

4. PKUとは何か?
フェニルケトン尿症(PKU)は血中のフェニルアラニン濃度が高くチロシン濃度が低くなる遺伝性疾患である。高濃度の血中フェニルアラニンは脳に対する毒性を持ち、治療しないまま放置すると脳の発達に影響を及ぼし、知能発育不全、気分障害、行動上の問題を引き起こす恐れがある。PKUの治療は、アスパルテームを含む食品や飲料と同様、タンパク質の豊富な食品(肉、魚、卵、乳製品、木の実、種子)、小麦粉(パン、パスタ)を含むでんぷん質の多い食品を制限することで血中フェニルアラニンを許容できる濃度に保つことを目的とする。

5.安全なアスパルテームの消費量はどのくらい?
EFSAのようなリスク評価者が所定の物質にADIを設定すると、その科学的助言をもとにリスク管理者がその物質の特定の使用法を認可する(たとえば使える食品や最大使用量)。アスパルテームを含む多くの製品ではADIを上回るには、かなり多く生涯にわたって習慣的に消費する必要がある。たとえば、アスパルテームのADI(体重あたり40 mg/kg)に達するためには体重60kgの成人が残りの人生で最大許容使用量を含む330mlのダイエットドリンクを毎日12缶飲まなければならない。だが、現実にはアスパルテームはもっと低い濃度で使用され、ソフトドリンク内の量は最大許容濃度の3〜6分の1である。これによりADIに達するのに必要な缶の数は36以上に増える。

6. EFSAはアスパルテームの安全性を評価したことがあるか?
2002年に設立されてから、EFSAは定期的なレビューのもとアスパルテームの安全性を保ち続けてきた;EFSAの科学パネルは2006年、2009年、2011年、2013年にこの甘味料に関する新しい科学的研究についての助言を発表した。これらすべての折にEFSAは新しい科学的データがアスパルテームの安全性評価レビューやそのADIを改訂する理由にはならないと結論した。

7.アスパルテームが安全なら、なぜEFSAは完全再評価を実施したのか?
認可された食品添加物の再評価に関するEU規則257/2010により、2009年1月20日より前にEUで認可された全ての食品添加物とその使用について、EFSAは2020年までに再評価しなければならない。この仕事が莫大なので、欧州委員会はこの系統的な再評価計画の優先計画を立てた。アスパルテームのような多くの甘味料は、EUでの使用が認可された他の多くの添加物よりも最近になって安全性が評価されたので、レビュー期間の終わりの方に再計画された;たとえば着色料、多くの防腐剤、乳化剤など認可された食品添加物の多くは甘味料より数年前に評価されたので、より緊急だとみなされた。だが、どの食品添加物も、どんな時にも優先順位は変更できる。2011年5月に、EFSAは欧州議会のメンバーから懸念が提示されたため、2013年‐2020年までアスパルテームの安全性の完全再評価を前倒しするよう欧州委員会から求められた。
・トピック:食品添加物EU枠組み

8. EFSAはアスパルテームの新しい安全性レビューを完成させたのか?
EFSAは2013年12月にアスパルテームの安全性に関する科学的意見を発表した。2013年1月にEFSAは2013年2月15日までに全ての利害関係者と興味のある団体にコメントをもらうためのオンラインパブリックコメント募集を行った。この重要な過程と、利害関係者と共に活発に意見交換する活動の一環として、4月9日にEFSAはドラフト案とオンライン意見募集で受け取った意見について議論するために関心のある団体とのフォローアップ会議を開催した。
・プレスリリース:EFSAは公聴会でのアスパルテーム意見募集を終えた
食品添加物としてのアスパルテームの再評価に関する科学的意見案についてのパブリックコメント募集
アスパルテームの再評価はEFSAの食品添加物及び食品に添加される栄養源に関する科学パネル(ANS)によって実施された。
アスパルテームの完全再評価の欧州委員会からの要請
アスパルテームに関する作業部会―ANSパネル

9. EFSAがアスパルテームの科学的意見のためパブリックコメントを募集したのはなぜか?
パブリックコメント募集の重要性はEFSAの創立規則に提示されている。科学的な卓越性と並び、独立性・反応性・開放性・透明性はEFSAの基本的な価値であり、EUの食品安全システムにおける消費者の信頼を支える助けとなる。加えて、科学的意見案への意見募集は最終的な報告書の完全性・明瞭性・有効性を確保するための意見・データ元・批評を集めるのに重要である。
EU規制で規定されている手続きや期限に適合する場合には、アスパルテームに関する意見のように公衆の関心が高い重要な科学的報告書に関しても、EFSAはガイダンス案に関して科学コミュニティや他の関係者に定期的に助言を求めている。このことがEFSAが最大限幅広い見解と科学的情報を考慮していることを確実にする。パブリックコメント募集により寄せられた意見は報告書としてまとめられ、適切であれば最終的な科学的報告書に組み込まれる。

10. パブリックコメント募集の主な結果は何か?
パブリックコメント募集期間に、EFSAはドラフト案に関して全部で219の意見を受けた。それらの大多数はNGOや市民からで他に学者、国の食品安全機関、食品産業と報道関係者たちから提出された。意見は次の主なテーマにグループ分けされた。意見の科学的な点・メタノールアスパルテームの分解生産物)とホルムアルデヒドメタノール代謝物)の毒性;アスパルテームの消費者暴露;編集上の変化;政策に関するもの(たとえば、科学的リスク評価者としてのEFSAの役割を誤解した甘味料の禁止要求のような、アスパルテームの規制についての意見)。
パネルは受け取った全ての意見を検討した。EFSAの科学的助言が受け取った情報を完全にまとめ、この作業に興味のある人がパネルの結論の出し方を簡単に理解できるようにした。

11.過去にアスパルテームについて質問が出された理由は?
認可以前市場への導入以降に、アスパルテームの安全性については関心が高く時には論争を引き起こした。アスパルテームの安全性評価に利用された初期の実験動物研究について主に質問が出された。2013年にEFSAはアスパルテームの完全リスク評価を発表した。アスパルテームに関する広範囲にわたるレビューが、多くの国や国際的規制や勧告団体によって行われている。これら全てがアスパルテームがヒトの消費にとって安全だと確信するのに十分な科学的証拠があると結論している。

12. EFSAが調べたのはどのような情報か?欧州でのアスパルテームの認可のための原出願研究は再調査されたのか?
ANSパネルの包括的レビューは2回のデータ募集によって可能になった。再評価の一環として、EFSAは徹底的な文献レビューと同様に、科学的データの募集を開始した。EFSAは発表済と未発表の科学的研究600以上とデータ募集で得たデータセットを入手した。開示性と透明性への責任を再確認するため、EFSAはこれらの科学的研究の完全リストを発表し、1980年代初期に欧州でアスパルテームの認可要請のために提出されたアスパルテームに関する112の原本を含むこれまで未発表の科学的データをEFSAのウェブ上で公に入手しやすくもした。これらの研究は批判的に評価され、意見で取り扱った議論を支えてきた。
科学的審議が続く中で、5-ベンジル-3,6-ジオキソ -2-ピペラジン酢酸(DKP)と、ある条件で保管された食品と飲料中のアスパルテームから生じる可能性のある分解物に関する入手可能なデータがとても少ないことにパネルは気づいた。そこで、EFSAはDKPとその他のアスパルテームの分解物に関する追加データの募集を開始した。EFSAはこの募集で結果的に140以上の研究とデータセットを受け取った。
ANSパネルはリスク評価中に2000近くの研究とデータセットを検討した:そのうち約800は2回のデータ募集の結果として受け取った。パネルの意見はデータ募集中に受けた365の発表済の研究と147の追加研究に言及した。
ダウンロード可能な発表済及び未発表の研究とデータファイルのリスト:
アスパルテームの科学的データ募集の結果(2011年6月)
・DKPとアスパルテームの他の潜在的な分解物に関するデータ募集の結果(2012年7月)

13. EFSAは産業界から資金を出された研究だけを検討するのか?その研究は信頼できるのか?
EFSAはリスク評価においてすべての入手可能な科学的データと科学的文献を検討し、国際的に認可された科学的水準で作られた全ての証拠を検討した。新しいデータが不足している時は研究デザインやデータの報告が適切でしっかりしたものである限りは現在の水準で行われていない試験尾データもケースバイケースで利用することがある。これは情報源が企業、公共部門、大学、他の科学的団体、いずれの場合も当てはまる。
食品添加物や他の規制対象物質や製品(たとえば農薬に使用される有効成分やGMO)から利益を得る組織や企業がその物質が安全だと証明するための証拠を提供しなければならないというのがEU規制の基本原則である。特定の物質に関する新しい研究がその安全性を論証するよう求められると、製造業者がリスク評価のために必要なデータを作る費用を負担しなければならない。情報源にかかわらず、EFSAは消費者保護確保のための水準を満たすことが確実になるように、研究のデザインや全ての提示されたデータを批判的に厳密に評価する。EFSAは食品添加物、香料、遺伝子組換え食品、食品と接触する物質などの規制対象物質と製品のリスク評価のための詳細項目についてのガイドラインを提供している。

14.アスパルテームに与えられた科学的助言の独立性については時に疑問を持たれる。科学的助言の独立性をEFSAはどのように保証するのか?
EFSAの科学委員会と科学パネルに採択された意見はいつも共同で審議し共同で決定した結果である。議長を含む専門家の誰も、パネルの決定に不当に影響を与えることはできない。パネルが、ある議題について意見を一致できなかった場合には、専門家は少数意見を述べることができ、それは科学的意見に記録される。EFSAは、欧州における科学的専門家のトップはその分野での積極的な活動によってのみ専門知識を得ることができると認識する一方、潜在的な利害の対立に対して絶えず気を配っている。科学的専門家とEFSAの活動に関与するすべての人の独立性は、世界で実施されている中でも最も厳しい利益相反開示方針によって保証されている。
・トピック:独立性

15.可能な限り透明性のある意思決定をするためにEFSAの科学者たちは何をしているのか?
アスパルテームに関するEFSAの意見は、彼らの科学的報告書にリスク評価の取組み方をよりよく説明し概要を示すのに、科学者たちがどのように働いているかを示す良い例である。ANSパネルはアスパルテームの安全性のリスク評価に「作用機序」や「ヒトへの妥当性」として知られるアプローチを使用する。これは実験で得られた結果と科学的基準から証拠の重み付けを使用して、生体で化学物質が引き起こす一連の反応の「カギとなるイベント」や「生物学的ステップ」を同定するものである(たとえば毒性、ホルモン系への影響、細胞増殖増加/減少)。ヒトや動物の研究でのカギとなるイベントの観察を比較してヒトの健康への妥当性を決定する。アスパルテームに関するEFSAの意見は、リスク評価アプローチを明確に説明していて、リスク管理者、利害関係者、他の興味のある団体の理解促進とより良いリスク管理決定に役立つだろう。

16. EU内でのアスパルテームの使用を規制するのは誰か?EFSAの役割とは何か?
EFSAの役割は、食品と飼料の安全性に関連してリスク管理者に独立した科学的助言を与え、人々全体にその助言についてコミュニケーションすることである。これに関連してEFSAの科学的委員会と科学的パネルが安全性評価を実行し、新しい証拠をレビューする。
EFSAは食品中の物質の使用を認可も禁止もしない。科学的助言と他のことを考慮して、必要であれば対策を定義し同意するのは、欧州委員会欧州議会EU加盟国のリスク管理者の責任である。

EFSAの2013年の意見についての質問

17.意見の主な結論は何か?
詳細で整然とした分析に従い、EFSAの科学的専門家はアスパルテームとその分解産物(フェニルアラニンアスパラギン酸メタノール)が現在の暴露量でのヒトの消費では安全であると結論した。現在のADIは一般の人々(幼児、子供、妊婦を含む)にとって安全であるとみなされ、アスパルテームの消費者暴露はこのADI以下である。これはPKU患者には当てはまらない―Question 4参照。

18. EFSAがADIに何の変化も提案しないとすると、この科学的意見は何が違うのか?
この科学的研究の新しい要素は、1960年代から現在に至るデータと研究をカバーしたアスパルテームとその分解産物に関する全ての入手可能な科学的研究の厳密なレビューを含むことである。アスパルテームの認可に先立ち最初に評価された情報に加えて、より多くの最近の科学的文献とデータを批判的に分析し、解釈した。さらにEFSAの新しいリスク評価は食品中に使用される化学物質のリスク評価についての最新の科学的考え方と方法論的アプローチが取り入れられた。また、以前のアスパルテームの安全性評価が動物での長期毒性研究からADIを引き出しているのに対し、この新しいリスク評価はヒトでの研究からの情報も使用している。

19.この科学的意見は特にアスパルテームの安全性に関するあらゆる側面を扱っているのか?
この意見は、アスパルテームとその分解産物に関する、毒性、発がん性、遺伝毒性、生殖及び発達影響に関する安全性の懸念の可能性について調査した。包括的なレビューに基づき、EFSAはアスパルテームとその分解産物が現在の暴露濃度では消費者にとって安全性の懸念とはならないと結論した。現在の一日摂取許容量(ADI)は一般の人々にとって安全であるとみなされ、アスパルテームの消費者暴露はこのADI以下である。
パネルはADIが一般の人々(幼児、子供、妊婦を含む)を保護する一方、フェニルアラニンの少ない食事を厳格に守ることを要求されるPKU患者には当てはまらないことも確かめた(PKUは血中フェニルアラニン濃度が上昇して発達中の脳に対して毒性を示す遺伝性疾患である)。

20.特別な安全性の懸念に関するパネルの結論は何か?
ヒトでの安全性の懸念の可能性に関するパネルの結論は次のとおりである:
・研究は、妊婦の早産、白血病、脳腫瘍、脳・リンパおよび造血系(血液)がんを含むあらゆるがんリスク増加とアスパルテーム摂取の関連を示唆しない。
・証拠の重みはアスパルテームの摂取が行動や認知機能に影響がないことを示唆している。
アスパルテームの摂取が発作の原因となるという証拠はない。
アスパルテームの摂取が頭痛の原因となる説得力のある証拠はない。
・証拠の重みはアスパルテームがアレルギー反応に関係しないということを示している。
アスパルテームから派生したメタノールは全ての摂取源由来のメタノールへの総暴露のうちのごくわずかである。
・全体的な食事暴露へのアスパルテームの分解物(フェニルアラニンメタノールアスパラギン酸)の寄与は低い。
更に、入手できるデータはアスパルテームの遺伝毒性の懸念を示さない(つまり細胞中の遺伝物質であるDNAに影響しない)。

21.これらの結論はEFSAの最近のアスパルテームに関する科学的研究を考慮に入れているのか?
はい。2010年の二つの研究の発表がアスパルテームの再評価の時期に影響を与えた。その研究はアスパルテームを含む人工甘味料の摂取に関連する可能性のある健康リスクを調べた:すなわち人工甘味料入りソフトドリンクの摂取と早産頻度の関連についての疫学研究(Halldorssonら、2010年);欧州ラマツィーニ財団(ERF) によるアスパルテームを与えられたマウスの発がん性実験(Soffrittiら、2010年)。
EFSAの2013年のリスク評価のために、ANSパネルはこれらの研究を完全に再検討した。

22.妊婦はアスパルテームを含む製品を消費するべきではないという科学的証拠はあるのか?
ANSパネルはアスパルテームを含む製品の摂取後の血中分解生成物フェニルアラニン濃度の安全性を評価することにより、妊婦のためのアスパルテームのリスクを評価した。フェニルアラニンは、特にフェニルケトン尿症(PKU)の女性の胎児の発達にとって、摂取量が多いと毒性があることが知られている。パネルは現在の暴露量では妊婦の安全性の懸念はないと結論した。
更に、EFSAの以前の作業に関連し、パネルのHalldorssonら(2010)の論文の新しい評価は、この研究は人工甘味料入りソフトドリンクの摂取と早産との間の因果関係を支持する証拠とはならず、著者が指摘しているように関連を確認あるいは拒絶するには追加研究が必要である。
Englund-Öggeら(2012)によるノルウェーで行われた追加研究では、早産と人工的に甘味をつけたソフトドリンクにかろうじて認識できる関連があった。実際、これは砂糖を入れたソフトドリンクの関連ほど強くない。

23.長期発がん性効果を検討した2番目の研究についてはどうか?
ANSパネルは発育中の胎児における毒性と発がん性に関する実験動物での長期研究の知見を検討した。
Soffrittiら(2010)の論文をレビューし、EFSAの科学者はこの論文の情報に基づき、研究の妥当性と統計学的手法は評価できず、その結果は判断できないと結論した。
研究のデザインについては、世界的な科学コンセンサスに即して、EFSAは動物の寿命を超えて行われる実験は誤った結論を導くことがあると助言した。
たとえば年取った動物は病気になりやすく、マウスでの発がん性試験が推奨される104週間を超えた時、年齢による病理学上の変化(自然にできる腫瘍など)は化合物の影響と区別がつかない恐れがある。
更にEFSAは、スイスマウス(この研究で使われた)は自然にできる肝臓と肺の腫瘍の発生率が高いことで知られており、この研究で報告された腫瘍の発生率の増加はこれらのマウスの腫瘍で報告されている過去の対照群の範囲内であると言及した。

24.アスパルテームが一旦摂取されると体内で何が起きるのか?
摂取後、アスパルテームは腸で3つの成分に分解される:アスパラギン酸フェニルアラニンメタノールアスパルテーム自身は血流に入ったり体内に蓄積されたりしない。
アスパラギン酸フェニルアラニンメタノールは果物や野菜を含む他の食品に天然にも存在し、アスパルテームを含む食品は、他の食事源同様に人体で処理される。比較すると、アスパルテームを含む食品と飲料から摂取したこれらの成分量は少ない。たとえば、無脂肪乳一人前は、アスパルテームだけで甘くした同量のダイエット飲料と比べて6倍以上のフェニルアラニン、13倍以上のアスパラギン酸を提供する。

25.アスパラギン酸に関する安全性の懸念はあるか?
アスパラギン酸はタンパク質に含まれるアミノ酸である。人体はアスパラギン酸を、かなり高濃度で神経系に有害影響を与える神経伝達物質グルタミン酸塩に変える。だが、EFSAの専門家はアスパルテームと関連する神経毒性の証拠を一つも見つけていないので、アスパルテーム由来のアスパラギン酸は消費者に安全上の懸念とはならないと結論した。

26.アスパルテーム由来のメタノールに安全上の懸念はあるか?
メタノールは果物や野菜のような食品に存在し、またそれから放出されていて、人体で天然にも生産されている。自家蒸留した強い酒の消費などのような高濃度で暴露すると毒性がある。アスパルテーム由来のメタノールは全てのメタノールの総暴露量のごく一部である。
入手可能な科学的証拠に基づき、EFSAの専門家はアスパルテーム由来のメタノールの食事からの暴露は安全性の懸念を引き起こさないと結論した。メタノール代謝物質であるホルムアルデヒドにも同じことが言える。

27.フェニルアラニンの安全性についてはどうか?
フェニルアラニンは多くの食品に含まれるタンパク質を構成するアミノ酸である。体内で、ある種のホルモンや神経伝達物質を作るのに使われる、タンパク質合成に使われる別のアミノ酸であるチロシンにも変わる。
フェニルケトン尿症(PKU)は血中フェニルアラニン濃度が高くなりチロシンが低くなる遺伝性のヒトの病気である。高濃度の血中フェニルアラニンは脳に毒性があり、治療されないままだと、脳の発達に影響を与え、精神遅滞気分障害、問題行動の原因となる。これは特にPKU患者の女性の胎児の発達に重要である。多くのPKU治療はアスパルテームを含む食品と飲料同様にタンパク質を多く含む食品(肉・魚・卵・パン・乳製品・木の実と種子)を制限することにより血中フェニルアラニンを許容濃度に保つことをめざしている。
パネルは、ADIは一般の人々を保護するが、低フェニルアラニンの食事を厳しく固守することを求められるPKU患者に適用できないことを確認した。食品中のアスパルテームの使用の規制において、EUリスク管理者はこの物質の暴露を避けられるように食品中のアスパルテームの存在をPKU患者に確実に知らせる必要を認識している。欧州連合では、アスパルテームを含む全ての製品はフェニルアラニンの摂取源となるため、「フェニルアラニン源を含む」という表示をしなければならない。

28.アスパルテームの現在のADIのレビューでEFSAはヒトの研究をどのように使用したのか?
アスパルテームの以前のリスク評価ではADIは動物のデータから直接導出された。現在のADIのレビューで、ANSパネルは発育中の胎児へのフェニルアラニンの有害健康影響の可能性と発がん性を含む慢性毒性に関する実験動物での長期研究の結果を考慮している。パネルは動物データをもとに一連のエンドポイント(たとえば腫瘍の存在)の「無毒性量」(NOAELs)を同定した。だが、生殖と発達毒性の評価に関して、EFSAの専門家はヒトのデータを利用することがよりふさわしいと決めた。
パネルはアスパルテームの摂取後の、ヒトの血中フェニルアラニン濃度をPKUの母親から生まれた子供の発達影響に関連する血中フェニルアラニン濃度と比較した。現在の臨床ガイドラインでは血中フェニルアラニン濃度は6 mg/dl以下を維持することを推奨している。それに比べてPKUの患者では、弱い影響は10-13mg/dlの濃度で、一方明らかに有害な影響は血中フェニルアラニンの20mg/dlを超えた濃度と関連している。
アスパルテーム暴露の安全な濃度を計算するにあたって(血中フェニルアラニン濃度に基づく)、ANSパネルはアスパルテームの摂取が毎日の食事(自然に生じるフェニルアラニン源を含む)と同時におこるという最悪シナリオを想定した。パネルはアスパルテームを1時間ごとに現在のADIと同じ量摂ったとしても最大血中濃度は現在の臨床ガイドラインをかなり下回る240 µMと概算した。この血中フェニルアラニン濃度に達するためには体重60kgの成人がダイエットソフトドリンク(330ml)を1時間毎に12缶(使用許可最高濃度のアスパルテームを含む)飲まなくてはならないことを示している。

29.アスパルテームのジケトピペラジン(DKP)は安全性の懸念があるのか?
湿気、pH、気温、保管時間はすべてアスパルテームの安定性に影響を与え、5-ベンジル -3,6-ジオキソ-2-ピペラジン 酢酸(ジケトピペラジンまたはDKPとしても知られる)を含む不純物に分解する原因となる。アスパルテームからDKPへ転換するとアスパルテームを使用する目的である甘味が消失する。
EUは食品中のこの物質の有害影響から消費者を守るためにDKPの一日摂取許容量を7.5 mg/kg bw/dayとした。アスパルテームの暴露量に基づき、甘味料を用いたすべての食品と飲料からのDKP暴露は全ての人口グループにとって平均しておよそ0.1 から1.9 mg/kg bw/dayだった。
これらの知見を前提として、EFSAの専門家は消費者の安全性にとって食品と飲料のアスパルテーム由来のDKP暴露リスクはないと結論した。

30. この意見にはなんらかの不確実性はあるのか?
EFSAの意見は、リスク評価で考慮された研究の多くは最近の基準に従って行われていないことを認識している(たとえば、優良試験所規範(GLP)や経済協力開発機構(OECD)のガイドライン)上記Question 10参照。だが、EFSAの専門家は研究デザインやデータの報告が許容でき十分な質がある場合にはケースバイケースで検討できるとみなした。また、アスパルテームの古い研究の多くが、動物の福祉のため、より少ない数で、より改良された動物実験の必要性のために現在反復できないことに言及する必要があるとした。
さらに、意見では、食品中のアスパルテームの摂取量と濃度の両方の、異なるデータ源の使用に関連した困難による不確実性について議論している。多くの場合、報告の方法論や基準の国による違い、適切な暴露評価の技術的難しさによる。たとえば、慢性(長期)情報が必要な時に、データは急性の(一度限りの)暴露がもとになっているかもしれない。食品と飲料の区分や一人分のサイズも異なるかもしれない。全体として、これらの不確実性の多くは消費者暴露の過大評価につながるが、時には過小評価につながる可能性がある(主に食品中のアスパルテームの消費データと実際の使用濃度による)。(Table 18概要の意見参照)