食品安全情報blog過去記事

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論文等

  • 食物繊維が脳に働いて食欲を抑制する

Natureニュース
Dietary fibre acts on brain to suppress appetite
Brian Owens
29 April 2014
http://www.nature.com/news/dietary-fibre-acts-on-brain-to-suppress-appetite-1.15127
マウスの研究が食物繊維による体重コントロール作用には腸管ホルモンではなく脳が働いていることを示唆
食物繊維の多い食事が肥満対策に役にたつと言われるがそのメカニズムは明確ではない。これまで食物繊維の多い食事は、腸管での食欲抑制ホルモン放出を亢進すると考えられてきた。Nature Communicationsに発表されたImperial College Londonの生化学者Jimmy Bellらの研究ではC13標識食物繊維を用いて腸管での食物繊維の発酵産物が直接視床下部に作用している可能性を示唆した。

  • 男性研究者は齧歯類にストレスを与える

Male researchers stress out rodents
Alla Katsnelson
28 April 2014
http://www.nature.com/news/male-researchers-stress-out-rodents-1.15106
ラットとマウスは女性に扱われたときより男性に扱われたときの方がストレスレベルが高く、研究結果を歪めている可能性がある
Nature Methodsに発表された論文。男性が実験すると強いストレスを与え痛みの反応が鈍くなる。論文に実験したヒトの性別を記載せよと。

ScienceNOW
男性の臭いが生命医学研究を危うくするかもしれない
Male Scent May Compromise Biomedical Research
28 April 2014
http://www.pesticides.gov.uk/guidance/industries/pesticides/advisory-groups/PRiF/Latest+results+and+reports/latest-rolling-results

Race, Risk and Behaviors: A Type 2 Diabetes Update
April 29, 2014
http://www.elsevier.com/about/press-releases/research-and-journals/race,-risk-and-behaviors-a-type-2-diabetes-update
Clinical Therapeuticsの4月号は2型糖尿病患者の自己管理に関連する行動上の問題について特集する。糖尿病は人々に行動の変化を要求するが、しばしばそれは症状がないのに文化的に常識とされることと違うことをしなければならないことを意味する。
(主にアメリカでのアフリカ系アメリカ人の話)

  • 心臓幹細胞治療に疑問

Doubts over heart stem-cell therapy
Alison Abbott
29 April 2014
http://www.nature.com/news/doubts-over-heart-stem-cell-therapy-1.15122
今週BMJに発表された成人幹細胞を用いた心疾患治療の臨床試験解析によりこの治療法は多くが不適切に過剰宣伝であると疑問が提示された。
数千人の患者をリクルートした大規模臨床試験が計画されているため発表された。問題は既にこの治療法が商業化されているということである。BMJの論文では昨年4月までに発表された49の無作為化試験についての133の報告を検討し、デザインや報告に問題のあるものでは有効だとされ問題のない試験ではメリットがなかった。
Discrepancies in autologous bone marrow stem cell trials and enhancement of ejection fraction (DAMASCENE): weighted regression and meta-analysis
BMJ 2014;348:g2688
http://www.bmj.com/content/348/bmj.g2688

Ethanol fuels ozone pollution
Mark Peplow
28 April 2014
http://www.nature.com/news/ethanol-fuels-ozone-pollution-1.15111
サンパウロでの車の石油からエタノールへのシフトがユニークな大気化学実験になっている
Nature Geoscienceに発表された論文によると、石油よりエタノールで走る車が地表のオゾン汚染を増やす。

  • 母親の食事が子どもの遺伝子の「サイレンシング」に影響

Mother's diet affects the 'silencing' of her child's genes
29-Apr-2014
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2014-04/lsoh-mda042514.php
Nature Communicationsに発表された、この手の研究では初めての根拠を提示するもの。
ガンビアでの田舎では食生活が乾期と雨期では大きく異なる。2000人以上の女性から雨期のまっただ中に妊娠した84人と乾期の真っ最中に妊娠した83人を選び、血中栄養素濃度とその子どもの2-8ヶ月時点での血液や毛包を調べた。その結果雨期に妊娠した子どもは一貫して遺伝子のメチル化率が高く、それは母親の食事と関連していた。特に母親のシステインとホモシステインBMIの影響が大きかった。しかしその機能への影響は不明。

  • ドイツ人のアルコールとタバコ依存は多すぎる、と報告書は言う

Too many Germans are addicted to alcohol or tobacco, says report
Ned Stafford
BMJ 2014;348:g2992
http://www.bmj.com/content/348/bmj.g2992
ドイツ薬物依存問題センターの報告書によるとドイツ人のうち180万人がアルコール依存でさらに1000万人が問題のある飲酒者である。アルコール関連死は毎年74000人で経済的損失は270億ユーロ、一方酒税はたった33ユーロ。
成人の喫煙者は約29%、喫煙関連死は毎年10万から12万人。タバコ依存症は140万人から190万人。

  • リスクコミュニケーション技術:乳がんスクリーニングパンフレットは女性を誤解させる

The Art of Risk Communication
Breast cancer screening pamphlets mislead women
Gerd Gigerenze
BMJ 2014;348:g2636
http://www.bmj.com/content/348/bmj.g2636
全ての女性と女性団体は誠実な情報のためにピンクリボンとキャンペーンを破り捨てるべきだ
女性にマンモグラフィーを勧めるパンフレットはいつも誤解を招くものだ。ピンクリボンキャンペーンのおかげでほとんど全ての女性がマンモグラフィースクリーニングにメリットがあると間違った印象をもっている。たとえばフランス、ドイツ、オランダの98%の女性が10倍、100倍あるいはそれ以上メリットを過剰に見積もっている。ピンクリボンパンフレットがあまりないロシアの女性が最も現実的な推定をしている。誤解を招く情報は中止すべきだ。
事実は、マンモグラフィーによる乳がんによる死亡の削減は1000人中1人で、総がん死亡の削減はゼロである。そして不必要な心配や生検が1000人中100人、不必要な手術が1000人中5人である。
パンフレットによるスクリーニングのメリットを強調するための誤解を招く戦略は以下のようである
1. 数字を出さない。「マンモグラフィーは命を救う」のようなパターン
2. 相対リスクのみ知らせる。1000人中5人と1000人中4人は絶対リスクでは0.1%の削減であるが相対リスクだと20%や30%と表現される
3. 5年生存率 5年生存率と死亡率削減は違う
4. 絶対リスクを伝えるが非現実的な数を使う

CLINICAL REVIEW
Management of women at high risk of breast cancer
BMJ 2014;348:g2756
http://www.bmj.com/content/348/bmj.g2756