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論文等

  • がん予防のためのビタミンD:根拠と健康に関する信念

コクランライブラリー
Vitamin D for preventing cancer: evidence and health beliefs
By: Bernd Richter
On: June 24, 2014, 11:00
http://www.thecochranelibrary.com/details/editorial/6286111/Vitamin-D-for-preventing-cancer-evidence-and-health-beliefs.html
患者と医師の間で良いコミュニケーションを行うことは必須であるが簡単ではない。医師には患者の価値観や嗜好、健康についての信念を理解し尊重する(そして医療計画に組み込む)必要がある。健康への信念はどこからともなくやってくるが文化や心理や社会的要因や既得権団体により影響される。
食品は特に人生に深く関係し、食品に関連した健康への信念は揺るぎない。ビタミンが良い例である。何十年にもわたる各種ビタミンの発見とその欠乏症の発見が多くのヒトにビタミンをとるのは良いことだという考えを植え付けた。科学者集団は1日あたりのビタミン摂取量を定義したが通常は定期的食事で摂れる量である。食品の組成は疑いようもなく健康に影響し、人体は必須要素を必要量、極めて効率的に取り込んで排泄する。一方我々の、ジャンクフードに囲まれてカウチポテトや喫煙や飲酒だらけの生活は危険で、ビタミンのようなサプリメントを摂るのがよいという信仰が忍び込んで(あるいはインストールされて)いる。
1994年にビタミンサプリメントについての広まった考えに深刻な疑いを投げかける画期的研究が発表された。疫学研究ではビタミンEとベータカロテンは肺がんリスク削減と関連することが示唆されていたが、驚くべきことに大規模フィンランド研究でベータカロテンを投与された男性の方が肺がんで死亡する可能性が高かったのだ。最近の関連する疑問は、あらゆる病気の万能薬であるかのように宣伝されている抗酸化物質の健康影響についても投じられている。
時は経ち記憶は薄れ、もう一つのビタミン誇大広告がやってきた−今度はビタミンDである。この脂溶性ビタミンはカルシウムとリンの吸収を助け免疫系に重要な役割を果たす。ビタミンD3(コレカルシフェロール)は通常日光に当たると皮膚で合成され肝臓でカルシジオールになりさらに腎臓で生物学的に活性な形であるカルシトリオールになる。食事あるいはサプリメントからはビタミンD3またはD2(エルゴカルシフェロール)として摂取される。食事だけで十分量摂れるかどうかについては議論がある。正確な必要量は定義が難しく、年齢や体重、住む場所にもよる。ビタミンD状態は血清25ヒドロキシビタミンDの測定で決めることができるが至適濃度については議論がある。
Bjelakovicらによる最近の2つのコクランレビューでビタミンDサプリメントについて取り上げている。最初のレビューは2014年1月で、高所得国76627人の38のRCT で、ビタミンD3が成人(主に高齢、ほとんど女性)の全原因による死亡を減らすことが示された。1人の追加死亡を減らすためには約150人に5年以上投与する必要があり、カルシウムと一緒に摂ると腎臓結石リスクが増加する。
新しいレビューではビタミンDサプリメントが成人のがんを予防するかどうかを検討した。対象となったRCTは再び高所得国の高齢女性が多く、14の研究(49891人5-7年のフォローアップ期間)でがんの頻度に影響はなかった。ビタミンD欠乏とされる20 ng/mL以下のヒトでももっと高濃度のヒトでも差はなかった。しかしながら、エビデンスの根拠は低いものの、がんによる死亡率はサプリメント投与で低かった(RR 0.88; 95% CI 0.78 to 0.98; P = 0.02)。これらのデータをさらに解析するために、著者らはランダムエラーを避けるためのメタ解析の統計手法である逐次解析を行った。臨床的に意味のある影響である相対リスクの10%削減を示すために必要な単一試験に必要な参加者の数は110,556で、この数には足りない。
ここから我々はどこに行くのだろう、そして健康への信念をどう扱ったらいいのだろう?ビタミンDサプリメントの推進者は、データの質や不確実性を無視して、ポジティブな結果だと飛びつきたくなるだろう。一方で最近のビタミンDの多様なアウトカムを扱った107の系統的レビューと161のメタ解析を含む統括的レビューでは、どのようなアウトカムについても明確な影響があるというしっかりした根拠はないことを確認した。まとめると、ビタミンDの物語は科学的データを批判的に適切に解析することの難しさを示すもう一つの例であり、最適な共同意志決定のためには患者と医師の間でオープンに、十分にコミュニケーションが行われる必要がある。この過程では、病気の原因や性質について医師と患者でしばしばある隔たりを減らすには、患者の健康への信念についての鋭敏な感知が重要である。
Vitamin D supplementation for prevention of cancer in adults
Goran Bjelakovic, et al.
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/14651858.CD007469.pub2/abstract

  • 母乳を与えている母親の乳量を増やすために水分を多く摂ること

Extra fluids for breastfeeding mothers for increasing milk production
Chizoma M Ndikom, et al.,
Published Online: 11 JUN 2014
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/14651858.CD008758.pub2/abstract
質の高い試験がないので結論できない
(当然のように言われていることでも根拠がないのって結構ある)

  • 研究者らは我々の腸についての新たな知見を発見

Researchers uncover new knowledge about our intestines
6-Jul-2014
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2014-07/tuod-run070314.php
DTU (デンマーク工科大学)Systems Biologyの研究者らが、DNA配列解析により、ヒトの腸内細菌叢にいるこれまで知られていなかった500の細菌とその細菌のウイルス(バクテリオファージ)800の見取り図を作った。これまで知られていた腸内細菌は200-300。
Nature Biotechnologyに発表

  • 健康な母親の赤ちゃんは世界中で驚くほど大きさが同じ

Babies born to healthy mums worldwide are strikingly similar in size
6-Jul-2014
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2014-07/uoo-bbt070314.php
Oxford 大学の研究者らによる、ブラジル、中国、インド、ケニアオマーン、英国、米国の都市約6万人の妊婦の調査であるINTERGROWTH-21st調査によると、健康で栄養と教育が行き届いた母親の赤ちゃんの大きさは、特に身長は、世界中でほとんど同じ。
新生児の身長は平均49.4 ± 1.9 cm。WHO乳児研究では49.5 ±1.9 cm。
The Lancet Diabetes & Endocrinologyに発表

Estrogenic Activity Database (EADB)
Page Last Updated: 07/02/2014
http://www.fda.gov/ScienceResearch/BioinformaticsTools/EstrogenicActivityDatabaseEADB/default.htm
8212化合物について1284の結合試験で調べた18114データを含むデータベース

  • ダイエタリーサプリメントに関連する胆汁鬱滞性肝疾患:現役軍人の5症例の報告

Cholestatic liver injury associated with dietary supplements: a report of five cases in active duty service members.
Peterson BR,et al.,.
Mil Med. 2013 Oct;178(10):e1168-71
軍の現役兵士はダイエタリーサプリメントをよく使っているが医師に伝えていないことが多い。ここに合計6種のサプリメントの使用に関連する薬物誘発性肝障害5症例を報告する。全員に血清ビリルビンと肝関連酵素の上昇がみられ、生検で門脈周辺の繊維化の程度は異なるが胆汁鬱滞性のパターンが確認された。使用したサプリメントのうち4つは過去に肝障害との関連が報告されていたものであるが残り二つ、C4 Extreme とAnimal Stakについては文献上見あたらない。医師はサプリメントのリスクについて認識し患者と話すべきである