食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

その他

SMC
Neonicotinoids linked to decline in population of some birds – experts respond
July 10th, 2014.
http://www.sciencemediacentre.co.nz/2014/07/10/neonicotinoids-linked-to-decline-in-population-of-some-birds-experts-respond/
Natureに発表されたオランダの研究で農地に住む鳥の集団が、ネオニコチノイド汚染が最も高いところで最も激しく減少していることを見いだした。英国SMCが以下のコメントを集めた。
CABI上級科学者Dave Moore博士
この論文は効果的な代用品の必要性を再び示した。生物農薬の開発費用を増やすのがよい
Bayer CropScienceの上級環境毒性学者Raimund Grau博士
著者らの仮説や結論は基本的に2013年にvan Dijkらが発表したものと同じである。引用されているイミダクロプリドの地表水中濃度についてのデータは既に最近のVijverと van der Brinkの論文で反論されている。さらにイミダクロプリドの測定やマクロ無脊椎動物のモニタリングは同じ場所でも時期でもない。先の報告はオランダの認可機関Ctgbでも評価され因果関係を示すのには使えないと結論されている。水の濃度が高いことが食糧不足につながるという主張には根拠がない。リストに掲載されている鳥のほとんどが水棲昆虫を主要食糧とはしていない。たとえばヒバリは主に地上に住む甲虫や蜘蛛等を食べ、ツグミはミミズやカタツムリを食べる。
他の要因の検討もなされていない。著者のうち2人は2010年に「気候変動のせいで食糧が減ったことが渡り鳥の減少の主要因かもしれない」と結論している。論文に強いバイアスがあるのは明白だ。ただしイミダクロプリドに影響がある可能性はある。
Oxford大学Charles Godfray FRS教授
この研究は重要な疑問を提示した。しかし著者らも言っているように関連を見たもので方法論等については議論があるだろう。よりしっかりしたデータが必要である。

SMC UK
expert reaction to annual Home Office statistics on animal research
July 10, 2014
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-annual-home-office-statistics-on-animal-research/
内務省が2013年の動物実験統計を発表した。
医学研究評議会副会長Jim Smith教授
医療の進歩には動物実験に依存する部分がある。我々はさらに動物の使用について最適化を進めていく
バイオ工業協会長Steve Bates
医薬品の開発には動物実験が義務になっている。新しいデータによると全体の使用数はあまり変わっていない。英国は動物の福祉については世界でも最も高い水準にあるが代替法ができるまで適切な環境維持に努める
王立獣医大学動物科学部長トランスレーショナル医学Dominic Wells教授
2013統計では普通の動物の使用数が減りその分遺伝子組換え動物、特にマウスの使用が増えた。いまや遺伝子組換えマウスはヒトの病気の研究に必須となっている。
Wellcome Trust Sanger Institute所長Mike Stratton教授
動物での実験はヒトの病気の原因を理解するのに必須の項目であり続ける。代替法の開発にもたくさん投資している。
英国医薬品工業会長Stephen Whitehead
医学研究に動物実験は重要な役割を果たす。我々は3Rを履行している。
Understanding Animal ResearchのWendy Jarrett
2013年は2012年より15000匹少ない動物が使われたことを歓迎する
Wellcome Trust会長のJeremy Farrar博士
新しい技術で使う動物の数は減らしていけるだろう
NC3Rs会長Vicky Robinson博士
発表された数字では削減対策のおかげでどれだけ減らせたかについての情報はない。我々は代替法開発のために働いている
(無意味な実験はするな、というのが肝腎なのだけれど無意味な実験を喜ぶ人たちがいたりするのでね・・・セラリーニ関連とか)

  • 緩い査読がSAGEジャーナルの60の取り下げを招いた

ScienceInsider
Lax reviewing practice prompts 60 retractions at SAGE journal
By John Bohannon 10 July 2014
http://news.sciencemag.org/people-events/2014/07/lax-reviewing-practice-prompts-60-retractions-sage-journal
学術出版業界は近年スキャンダルまみれである。ほとんどがアウトサイダーによる指摘であるが最新のものは内部調査でわかった。SAGEによる14ヶ月の調査で、ニセのピアレビューが明るみに出た。その結果過去4年にJournal of Vibration and Control (JVC)に発表された60の論文が取り下げられた。SAGEはこの詐欺を指導したのは多分たった1人の物理学者、台湾国立Pingtung 教育大学のPeter Chenであると結論している。しかしこのような詐欺が可能になった背景にあるのは雑誌の編集ポリシーのいい加減さであるとScienceInsiderは学んだ。
最初のきっかけは昨年5月、あう著者が疑わしい電子メールを受け取ったことである。送信者は大学の研究者を名乗っていたがGメールのアカウントを使っており大学の公式アカウントを使って直接連絡してみたところ少なくとも1人は詐称であることがわかった−その研究者はGメールのアカウントをもっていなかった。その後SAGEが水面下で調査を続けた。SAGEのオンライン投稿システムScholarOneに疑わしいメールのアカウントが何度も使われていること、JVCの論文が少数の著者らの相互レビューで成り立っていることなどをみつけた。そして60の論文に関連するPeter Chen の共著者の130のメールアドレスにSAGEが存在確認のメールを送ったところ全く返事がなかった。Chenは2月に大学を辞め、ScienceInsiderからのメールにはChenも大学も返事がない。