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  • 社会:母親を責めるな

Natureコメント
Society: Don't blame the mothers
Sarah S. Richardson, Cynthia R. Daniels, Matthew W. Gillman, Janet Golden, Rebecca Kukla, Christopher Kuzawa& Janet Rich-Edwards
13 August 2014
http://www.nature.com/news/society-don-t-blame-the-mothers-1.15693
人生の初期が世代を超えてどう影響するかについてのエピジェネティック研究の浅慮な議論が女性を傷つける、とSarah S. Richardsonらが警告する
民間療法から現代文化に至るまで、妊娠女性の経験が子どもに影響するという話には永久不変な魅力がある。最新の流行は塩基配列によらないDNAの遺伝される変化であるエピジェネティクス研究由来である。そのようなDNAの修飾は子どもが将来肥満や糖尿病やストレスへの対応のまずさに関連するとされる。メディアの見出しはしばしばこれらの知見を単純に母親の影響として伝える:「母親の妊娠中の食事が赤ちゃんのDNAに影響する」(BBC)、「おばあちゃんの経験があなたの遺伝子に印を残す」(Discover)、「9/11に妊娠中だった人はそのトラウマを子どもに伝える」(The Guardian)といったように。父親や家族、社会環境には注目されない。
子宮環境の与える長期影響については現在急拡大中の健康と疾患の発生起源(DOHaD)として知られる分野の一部である。例えばある研究では2型糖尿病の母親から生まれた子どもは45%が20代半ばで糖尿病になるが妊娠後に糖尿病を発症した母親の子どもでは9%であることを報告している。
DOHaDは理想的には保護者や子どもを支援するための政策につながるが、誇張や過度の単純化継親スケープゴートにして妊娠中の女性の監視や規制強化につながりかねない。DOHaDと科学文化を研究している立場から、我々は懸念している。科学者や報道関係者は無責任な議論を波及効果を考えて欲しい。
警告すべき前例
子どもの病気について社会が母親を非難してきた長い歴史がある。胎児期の健康への有害影響に関する予備的研究が過剰規制につながった。1970年代に、妊娠中に重度飲酒した女性の子どもに胎児性アルコール症候群(FAS)が認識され、1981年に米国公衆衛生局長官が妊娠女性の飲酒に安全なレベルはないと助言した。妊娠中の飲酒は汚名を着せられ犯罪とすらみなされた。多くの適量飲酒者が飲酒を止めたがFASの発症率は下がらなかった。妊娠中に大量飲酒することが子どもを傷つけるとしても、適量飲酒のリスクについては政策決定者によって過剰宣伝された。
1980年代から1990年代にはクラック(コカイン)の使用増加がメディアヒステリーを引き起こし、胎児の時にコカインに暴露された赤ちゃんは「クラックベビー」とよばれ妊娠中に薬物を使用した母親は社会福祉を失い、赤ちゃんを奪われ、留置所に送られすらした。400人以上の妊娠女性が、主にアフリカ系アメリカ人が、胎児を危険にさらしたとして起訴された。乳児は生物学的に絶望的な底辺層であると烙印を押された。現在胎児期のクラックの暴露は酒やタバコと同程度とみなされているが薬物についての起訴は継続している。
もっと前の世代は別の方法で女性を非難してきた。1970年代後半まで、子どもの自閉症の原因が「冷蔵庫マザー」(情動的暖かさを欠く育て方を非難する用語)のせいだとされた。19世紀になるまで、子どもの先天障害や精神的欠陥、犯罪傾向は母親の食事や神経や彼女を妊娠中に働かせた企業のせいだと医学の教科書に書いてあった。
現在はそれほど極端ではないがDOHaD研究に対する社会の反応は過去のものとイヤな方向で似ている。感受性の高い胎児への母親個人の影響が強調され、社会的要因は無視される。そして研究は今や薬物使用を超えて日常生活のあらゆる面に及んでいる。
文脈が重要
WebMDの2013年の記事は責任ある報道の例である。この報告では妊娠中に母親がインフルエンザに罹ると子どもが成人したときの双極性障害リスクが4倍になることがわかったとしているが、全体のリスクは小さいこと、双極性障害は治療可能であることを強調している。そしてこの研究は多くのリスク要因の内たったひとつをしらべただけで因果関係がわかったわけではないことも述べている。そして見出しは数字を使って怖がらせてはいない。
一方2012年の論文の報道はそうではなかった。妊娠中に高脂肪食を食べたラットの2世代めのがんが、対照群の50%に比べて80%に増えたことについて、見出しは「何故我々はおばあちゃんの食習慣を心配しなければならないのか」であり、別のニュースでは「あなたの食べるものは2人以上に影響するのだからポテトチップを食べる前によく考えて」と警告した。この記事ではラットががんになりやすいように交配されたものであることや高脂肪食の三代目の雌では対照より腫瘍が少ないなどの実験内での矛盾を伝えていない。
不適切な根拠や文脈が間違っているものは善意の教材にも見られる。妊娠女性をサポートするためのウェブサイトでもImperial College Londonの研究者と共同で、19才の少年が窃盗罪で留置所から出てくる動画で「彼の問題は胎児の頃に遡る」とナレーションがつけられている。「妊娠中に注意することは犯罪予防の新しい方法かも?」と。そのような示唆は、良くても現在の研究の過剰解釈である。
母親の影響を超えて
今日DOHaD研究は父親や祖父も子孫の健康に影響するというものが増えている。食事は精子にも影響し、またヒトでは母親の精神や身体状態への父親の影響も認識されるようになった。より広範な視野でDOHaDは男女のQOL向上のための理論的根拠を提供する。
DOHaDの成果をどのように解釈するかについては全ての人が議論に参加して欲しい。妊娠中の健康的な行動が重要なのはもちろんだがあまりにも予備的な知見を日常生活の助言にするのは慎んで欲しい。
注意点は4つ。動物実験をヒトにあてはめない。両親双方の影響を同等に。複雑さを伝える。社会の役割を認識する。

  • Science 15 August 2014の特集はParenting(育児)

ニュース
・育てないという実験
ルーマニアの独裁者Nicolae Ceauşescuが1960年代に人口を増やすために、育てられるかどうかに関係なく子どもが5人以下の女性に課税した。望まれずに生まれた何千人もの子どもたちは政府が孤児院を作った。1980年代のピーク時には孤児院の子どもは17万人になりほとんどがひどい環境で育てられた。世話をするのは3交代で1人のスタッフが10-15人を担当し赤ちゃんは一日中壁と天井を見て過ごし1人の子どもが1週間に17人の別の世話人接触した。ハーバード大学医学部の小児科神経科学教授Charles Nelsonはこれをゼロ育児実験と呼んだ。Ceauşescuが死刑になった1989年以降、世界中の人たちが何千人もの孤児を養子にした。研究者らが彼ら国際養子を研究し20年になる。Nelsonらはブカレスト早期介入プロジェクトとして知られる研究を開始した。
現在Nelsonは初期にまともに育てられなかった子どもたちは脳の発育に、虐待的世話人と一緒に住むより大きな有害影響を与えると確信している。しかしルーマニアでの仕事では多くの子どもたちが暖かい環境に置かれれば正常に近くなることも確認している。どの国も他人事ではない。アメリカでも同様のネグレクトを経験している子どもはいる。
子どもの虐待(不当な扱い)の中でも、ネグレクトは最大の問題
母親の精神疾患、早産、IVF、母乳、エピジェネティクス、等
母乳について
自然の最初の機能性食品
Nature's first functional food
細菌やオリゴ糖などをミルクに加えようというような話
(生物が理想的な条件で子を生み育てられた時代なんてなかっただろうに)

  • 肥満対策の「有害な脂肪」宣伝

'Toxic fat' ads to tackle obesity
Aug. 18, 2014,
http://www.bendigoadvertiser.com.au/story/2494491/toxic-fat-ads-to-tackle-obesity/?cs=80
ビクトリアで放送されるテレビCM
(結構グロテスク)

  • 死因トップ4の死亡率は20年で1/3下がった

Cancer Research UK
Death rates in top four cancer killers fall by a third over 20 years
18 August 2014
http://www.cancerresearchuk.org/about-us/cancer-news/press-release/death-rates-in-top-four-cancer-killers-fall-by-a-third-over-20-years
乳がん、大腸がん、前立腺がんは検出率の向上や治療法改善などで、肺がんは喫煙率の低下で。