食品安全情報blog過去記事

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論文等

  • 「急速な」対「徐々に」減量することと長期体重管理についての専門家の反応

SMC
expert reaction to rapid vs gradual weight loss and long-term weight management
October 16, 2014
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-rapid-vs-gradual-weight-loss-and-long-term-weight-management/
The Lancet Diabetes & Endocrinologyに発表された論文で、人々が減量後の体重を維持する可能性は、減量がゆっくりでも急速でもほとんど違わないことが示唆された。
University College London Hospitals内分泌と肥満医Nick Finer教授
この研究は鮮やかなデザインで減量は早いほうが良いのかゆっくりのほうがよいのかという疑問に答えようとした。早く体重を落としても早くリバウンドすることはなく、目標を達成するヒトの数が多く脱落率が低いことからむしろ良いかもしれないことを示した。もし他の研究グループで再現できれば、液状の食事代用品をNHSの治療の選択しに使えるかもしれない。
またこの研究は、減量は難しいが体重維持はさらに難しいことも強調した。減量したヒトの飢餓ホルモンの血中濃度の高さからは、減量時ではなく減量維持に医薬品を併用して食欲を抑える可能性を示唆する。
公衆衛生栄養士Gaynor Bussell
急速な減量は見返りが早いためにモチベーションを高める可能性があり、代用食は何を食べたらいいのかについての迷いが無く簡単に従うことができる。そのような急激な減量時にはケトンの生産で食欲が抑制されるが血液のpHが酸性になるので高濃度だと腎障害の原因になる。多くの研究では徐々に減量した方がいいことが示されている。この研究は筋量の維持に有意差を見るには十分な数ではない可能性がある。極端な低カロリー食は栄養が不足するのでサプリメントで補う必要がある。サプリメントは食事の代わりにはならず、人々により良い食生活を再教育することの代わりにはならない。
我々はいくつかの減量法を知っているが、重要なのはそれを維持できるかどうかである。急激な減量が役にたつ場面はあるだろうがどうやって体重を維持するかを考えることが重要である。
King’s College London栄養食事療法名誉教授Tom Sanders教授
この研究は低カロリー食事代用品と普通の減量法で、減量後の体重増加を調べたものである。食事代用品は12週間で目標体重になり対照群は36週間かかった。しかし144週後にはどちらの群も約71%が減らした分の体重を元に戻した。
この研究の大きな問題は脱落率の違いで、無料の代用食が22%、通常のダイエットが51%である。代用食ダイエットはさらにケトーシスをおこしやすい。この研究でわからないのは筋量への影響である。著者らは代用食のほうが栄養士による助言より費用対効果が高い可能性があると主張しているが(オーストラリアドルで$540 vs $1620)、英国での減量プログラムはもっと安く通常週5ポンド以下で180ポンドであろう。問題は減量ではなくその維持である。
Glasgow大学代謝医学Naveed Sattar教授
この研究はよくできたものに見えるが対照群の「徐々に減量」の内容が不明である。8ヶ月で15%の減量は一部のヒトにとっては早いとみなされる。私にとっては「徐々に減量」は3ヶ月で3%である。ほとんどの人にとってはこの研究よりゆっくり減量した方がいいだろう。
この早い・やや早い減量法比較研究の結果は驚くべきことではない。太った人のほとんどは何年もかけて太ったのだということを思い出すべきであろう。恒常性を維持しつつリセットするには同じように何年もかかる。さらに早い減量やゆっくりした減量がどの人に適しているのかを知る必要があるだろう。
Oxford大学食生活と集団の健康Susan Jebb教授
この研究は重要で質が高く、早く減量すると早くリバウンドするという常識は間違っていることを示した。肥満は慢性の、再発する病態で、どちらの群も再び体重が増えている。しかしそれでも元の体重よりは少なく、健康上のメリットはあるだろう。

減量速度の長期体重管理への影響:無作為対照試験
The effect of rate of weight loss on long-term weight management: a randomised controlled trial
Katrina Purcell et al.,
The Lancet Diabetes & Endocrinology, Early Online Publication, 16 October 2014

  • PREDIMED無作為試験における地中海食とメタボリック症候群

Mediterranean diets and metabolic syndrome status in the PREDIMED randomized trial
Nancy Babio et al.,
CMAJ October 14, 2014 First published October 14, 2014, doi: 10.1503/cmaj.140764
http://www.cmaj.ca/content/early/2014/10/14/cmaj.140764
PREDIMED試験(http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20140122#p6)の二次解析。
4.8年のフォローアップ期間に、ベースラインではメタボリック症候群ではなかった1919人中960人(50.0%)がメタボリック症候群になった。発症率については群間に差はなかった。
一方ベースラインでメタボリック症候群だった3392人のうち958人(28.2%)はメタボリック症候群ではなくなった。この復帰は対照群より地中海食群どちらかのほうが多かった。
(これはオリーブ油またはナッツの油脂を多く摂ることが特徴でカロリー制限はしていない)

  • 赤ワインでニキビ治療?

Senseaboutscience
Is red wine treatment for acne spot on?
Posted by Max Templer on 15 October 2014
http://www.senseaboutscience.org/blog.php/109/is-red-wine-treatment-for-acne-spot-on
先週レスベラトロールが再び見出しになった−IndependentとBusiness Standard とDrinks Business がニキビ治療の研究を報道した。この研究の知見は将来の治療法に向けて重要な可能性はあるが「ニキビ治療のためにワインを飲もう」という見出しは違う。
Independentの「赤ワインに含まれる抗酸化物質がニキビを減らす、と研究が言う」というニュースを見て、私は根拠を尋ねる決心をした。
私はこの研究の共著者の1人であるYang Yuに尋ねた。この研究はレスベラトロールを直接皮膚に塗ったもので、赤ワインもチョコレートも調べてはいない。
「我々の研究はレスベラトロールをプロピオン酸菌属のニキビに直接接触させた場合の影響を調べた。レスベラトロールがニキビの患者の皮膚を改善するかどうかについては我々の知見を評価するさらなるヒトでの試験が必要である。ワインのレスベラトロールは皮膚に到達するまえに体内で代謝される。従って局所に塗布した場合とワインを飲んだ場合で同じ効果があるかどうかはわからない」
つまりワインを飲むとニキビが治るという根拠はない。
この知見を得て私はこのことを3つの出版社に伝えた。状況は少し複雑で読者に批判的に読む責任があるようだ。
Independentと Drinks Businessはレスベラトロールがワインに含まれると書いただけでワインを飲むとニキビが治るとは言っていないので何一つ不正確なことは報道していないという。この記事を読んでワインを飲むとニキビに良いと解釈するのは読者の責任で新聞社の責任ではないと言う。Independentは読者がそう解釈するのは無理もないとして記事を修正するとしたがDrinks Businessはそうは思わないとして改訂はしない。Business Standardは私の質問には答えず記事はそのままである。